2024年12月7日(土)

新幹線を支える匠たち

2024年8月31日

 深夜の東京駅八重洲口。宵の口に煌々と灯っていた高層ビル群の窓の明かりも日付が変わる頃にはほとんどが消え、行き交う人や車も少ない。だが、東京駅だけは眠らない。

保院司さん(写真左)と保坂祐太さん(写真右)。手前に写る装置で軌道の状態を総合的に検測する。2人越しに見える新幹線は、彼らが仕上げた〝道〟の上を走っているのだ(写真・中村 治 以下同)

 夜間にしかできない仕事がある。東海道新幹線にとって、営業運転を終えた午前0時から始発列車が走り出す午前6時までは保線作業に欠かせない時間帯だ。線路や設備を念入りに整備して、翌日の営業運転につなげる。

 午前1時半、東京駅近くの工事用通用口から線路内に入った。線路上を東京駅に向かって歩くと、脚立に上り高い位置で架線の保守工事を行っている作業員たちが見えた。駅のホームは昼間のように明るく照らされ、やはり何人もの作業員がせわしなく働いていた。深夜の東京駅では線路以外にも架線工事や駅ホームの工事などさまざまな作業が行われている。

 線路上には、巻き尺を使ってレールの長さを測っている一団がいた。50メートルほどあるレールの長さを測り終えると、今度は向きを変えて同じレールの長さを測る。さらに別の人が同じ作業を行う。この作業は人や向きを変えて何度も繰り返された。その後は特殊な機械を使ってレールの高低、軌間、ゆがみなどの状態を確認する。測定したデータはリアルタイムで無線接続されたタブレットPCに保存される。

東京駅の線路脇にある「0キロポスト」。路線の起点を示す。つまり、鹿児島中央駅まで続く新幹線の起点であり、世界初の高速鉄道の出発点となった場所でもある

 この作業を担うのは、東京・新橋に本社を置き、軌道・土木工事業を営む双葉鉄道工業。東海道新幹線の軌道工事や橋梁・トンネルの土木工事など鉄道の設備強化や保守を担う会社だ。ちなみに新幹線の担当エリアは東京駅から新富士管内まで。新富士以西は別の会社が担当する。

 午前3時に作業を終えた後、本社の会議室に戻り、作業に携わった同社軌道部担当部長の保院司さん(47歳)と東京センター課長代理の保坂祐太さん(35歳)に話を聞いた。


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