2024年8月31日(土)

BBC News

2024年8月31日

ブラジルの最高裁判所は30日、米ソーシャルメディア「X」(旧ツイッター)のブラジル国内でのサービス停止を命じた。国内サービス停止を命じた。監督庁に対して24時間以内の対応を求めた。現地では31日になると、Xに接続できないというユーザーの報告が相次いだ。裁判所側はXに対して、ブラジルでの新たな法定代理人を任命するよう通告していたが、29日午後8時にその任命期限が切れていた。

アレクサンドル・デ・モラエス判事はXがすべての裁判所命令に従い、既に科されている罰金を支払うまで、サービスを「即時かつ完全に停止」するよう命じた。

モラエス判事は4月、偽情報を拡散したとして、Xの数十のアカウントを停止するよう命じた。以来、ブラジルでのXのサービスをめぐる係争が続いている。

Xを所有する米富豪イーロン・マスク氏は30日、「言論の自由は民主主義の基盤だ。選挙で選ばれていないブラジルの偽の判事が政治目的のためにそれを破壊している」とXに投稿した。

Xの規制をめぐっては、マスク氏と欧州連合(EU)との対立も続いている。

さらに今月初めには、イギリス各地で相次いだ暴動をめぐり、マスク氏がニュース記事に見せかけた画像で陰謀論を広めようとする投稿を拡散した。同氏はその後、自分の投稿を削除した。

問題の投稿は、英紙デイリー・テレグラフのオンライン記事に見せかけた捏造(ねつぞう)の画像が元で、「イギリス各地で暴動に参加している者たちを、イギリス政府が南米フォークランド諸島に追放するため、緊急強制収容所を現地で建設している」という虚偽の内容だった。

また、警察に発煙筒を投げつける群衆の動画に「内戦は避けがたい」と書き添えるなどし、キア・スターマー英首相の報道官がそのような発言は「まったく正当性を欠いている」と批判。

スターマー首相は、「各地の地域社会の安全確保にだけ、自分は注力している」として、そのための「警察の取り組みを全員で支持することが、とても大事だと思う」と強調した。

31日から接続できず

ロイター通信によると、Xのサービスを停止するよう命じられたブラジルの電気通信当局のトップは、「コンプライアンス(法令順守)に則って進めている」と述べた。

停止命令から24時間以内に、Xが利用できなくなる見込みとされ、31日になると朝までの間に接続できないという利用者の報告が続いた。

モラエス判事は米アップルやグーグルなど複数企業に対し、5日以内にアプリケーションストアからXを削除し、アップルの携帯端末基本ソフト「iOS」やグーグルのの携帯端末基本ソフト「アンドロイド」での使用をブロックするよう、期限を設定した。

仮想プライベートネットワーク(VPN)などの手段を使ってXにアクセスした個人や企業に対しては、5万レアル(約130万円)の罰金が科される場合があると、モラエス判事は付け加えた。

このサービス停止命令は、Xがブラジル国内での新たな法定代理人を任命し、ブラジル法違反に対する罰金を支払うまで効力をもつという。

Xは先に、裁判所の要求には応じるつもりはないと、公式アカウントに投稿していた。

「間もなく、アレクサンドル・デ・モラエス判事はブラジルでXを閉鎖するよう命じるようだ。同判事が自分の政敵を検閲するために出した違法な命令に我々が従わないという、ただそれだけの理由で」

「ここで議論すべき根本的な問題は、デ・モラエス判事がブラジルの法律を破るよう我々に要求しているということだ。我々は断じてそんなことはしない」

モラエス判事は調査が行われる間は、偽情報を流したとされる複数のXアカウント(その多くは極右のジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者)をブロックしなければならないと命じていた。

こうしたアカウントが再び使用された場合、その責任はXの法定代理人が負うことになると、同判事は述べた。

こうした中、マスク氏の宇宙事業会社「スペースX」の衛星インターネットサービス「スターリンク」の銀行口座は、ブラジル最高裁の先の命令を受けて凍結された。

スターリンクは「この命令は、憲法に違反してXに科された罰金の責任をスターリンクが負うべきだという、根拠のない決定に基づいたもの」だとXに投稿した。

マスク氏も、「スペースXとXは全くの別会社で、株主も違う」と投稿した。

スターリンクはスペースXの子会社。

2022年、ブラジルのボルソナロ政権(当時)はスターリンクにブラジル国内での事業を許可した。

南米大陸で最大の面積を有するブラジルと、アマゾンの熱帯雨林(そのほとんどはブラジル領内にある)の遠隔地は、孤立地域へのインターネットサービス提供を専門とするスターリンクにとって非常に大きな可能性を秘めている。

モラエス判事は、ブラジル国内でのソーシャルメディア・プラットフォームを制限する決定を下したことで注目を集めた。

また、昨年1月8日にボルソナロ前大統領の支持者たちが、大統領府や議会、最高裁判所などを襲撃し、内部を破壊した事件で、ボルソナロ氏とその支持者たちをクーデター未遂の疑いで捜査している。

ソーシャルメディアがブラジル当局からの圧力を受けたのはXが初めてではない。

昨年にはメッセージアプリ「テレグラム」が特定のプロフィールをブロックするよう求める裁判所側の要求に協力しなかったとして、一時的に利用が禁止された。

米メタのメッセージサービス「ワッツアップ」も2015年と2016年に、警察からのユーザーデータの提示要求に応じなかったとして一時的に利用が停止された。

(英語記事 Musk's X banned in Brazil after disinformation row

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cd9dv8jjy91o


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