レバノン政府は17日、同国を拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーが使用する、ポケットベルのような小型通信機数千台が各地で爆発し、子供2人を含む12人が死亡したと発表した。
BBCヴェリファイ(検証チーム)は、「BACコンサルティング」という会社を調べている。この会社は爆発した小型通信機の製造と関係があるが、機器本体には別の製造会社名が付いていた。
17日の爆発から間もなく、破損した小型通信機2台が写った複数の未検証画像がソーシャルメディアに浮上した。画僧では、機器に「GOLD」の文字と、「AP」か「AR」で始まる型番が付いているのが分かる。これは、台湾企業ゴールド・アポロが機器の製造に関わっている可能性を示す。
しかし、同社は強い調子の声明で、自分たちは一切関わりはないと断言した。「このモデルはBAC(コンサルティング)が製造・販売しているものだ」と。
ハンガリーを拠点とするBACコンサルティングは、ライセンス契約を通じてゴールド・アポロのブランドの使用許可を取得していたと、ゴールド・アポロ側は説明している。
BBCヴェリファイがBACコンサルティングの会社記録を調べたところ、設立は2022年で、株主は1人だと判明した。また、ハンガリー・ブダペスト市14区の建物で登記されていた。
BACコンサルティングのほかに13社と個人1人が、同じ建物で登記されている。
BBCは金融情報データベースを調べたが、BACコンサルティングが、他の企業や人物にかかわりがあることを示す内容はなかった。
同じデータベースには、BACコンサルティングに関する取引情報はない。例えば、ほかの会社との間の出荷・受入記録は、このデータベースにはなかった。
しかし、現在はアクセスできなくなっているBACコンサルティングのウェブサイトには、同社はアジア事業を拡大しており、「電気通信製品の販売における各国間の国際技術協力の発展」を目標としていると記載されていた。
複数記録によると、BACコンサルティングの2022年の純売上高は2億5699万6000フォリント(約1億370万円)、2023年は2億1030万7000フォリント(約8500万円)だった。
ビジネス向けソーシャルネットワークサービス「リンクトイン」で公開されている会社概要には、BACコンサルティングが連携したと主張する8つの組織が掲載されている。これには欧州委員会や英国際開発省(DFID)が含まれる。
BBCヴェリファイは掲載されているすべての組織にコメントを求めた。DFIDと英外務・英連邦省(FCO)を統合した英外務・英連邦・開発省は、調査中だとした。ただ、最初のやり取りの中では、同省はBACコンサルティングと一切関わりがないとしていた。
BACコンサルティングのウェブサイトには、最高経営責任者で創業者として「クリスティアナ・バルソニー=アルシディアコノ」という1人の名前があるのみで、ほかの従業員については何の記載もなかった。
BBCヴェリファイの調査では、バルソニー=アルシディアコノ氏が2002年にイタリアのカターニア大学で物理学の学位を取得していたことが分かった。同氏のリンクトインのプロフィールによると、英ロンドンの2つの大学でも博士号を取得している。
私たちは何度か連絡を試みたが、同氏とは連絡が取れなかった。
米NBCはバルソニー=アルシディアコノ氏と話をし、同氏の会社がゴールド・アポロと取引があったことを認めたと報じた。しかし、小型通信機や爆発について尋ねられると、「私はあの通信機はつくっていない。私はただの仲介役なので。あなた方は完全に誤解していると思う」と同氏は答えたという。
BBCはBACコンサルティングに何度も電話したが応答はなかった。
ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相の報道官は、爆発した小型通信機がハンガリー国内にあったことは「一度もない」と述べた。
「問題になっている会社は貿易仲介業者であり、ハンガリー国内には製造拠点も操業拠点もないことを、当局が確認している」と、コヴァチ・ゾルタン報道官はソーシャルメディアに投稿した。
(取材:トム・エジントン、ジョシュア・チータム、ウィリアム・ダルグリーン、ダニエレ・パルンボ)