アメリカは23日、インターネットに接続して運転支援などをするいわゆる「コネクテッドカー」について、中国やロシアのハードウエアやソフトウエアを使用した車両の輸入や販売を禁止する規制案を発表した。安全保障上の懸念があるためだとしている。
米当局は、議論の的になっている技術について、自動運転や、自動車をほかのネットワークと接続するために使用されているとし、敵対勢力が「アメリカの道路を走行する車を遠隔操作」するのを可能にするかもしれないと懸念しているとした。
現在のところ、アメリカの車両に使用されている中国製あるいはロシア製のソフトウエアは最小限にとどめられている。
今回の規制の動きについて、ジーナ・レイモンド商務長官は、アメリカを守るための「的を絞った、事前の」措置だと説明。
「今日の自動車には、カメラやマイク、GPS(全地球無線測位システム)追跡、インターネットに接続されたそのほかの技術が搭載されている」と声明で述べた。
「外国の敵対者がこのような情報にアクセスし、わが国の国家安全保障と米市民のプライバシーの両方に深刻なリスクをもたらす可能性があることは、想像に難くない」
中国は「拡大解釈による差別的行動」と批判
中国政府関係者は、アメリカが中国企業を不当に標的にするために「国家安全保障の概念」を拡大解釈していると述べた。
中国外務省の林剣報道官は声明で、「中国はアメリカが国家安全保障の概念を拡大解釈し、中国の企業や製品に対して差別的な行動を取っていることに反対する」とした。
「我々は米国側に対し、市場原理を尊重し、中国企業に対してオープンで公正かつ透明性のある、差別のないビジネス環境を提供するよう求める」
米政府の規制案は、自動車製造のサプライチェーンにおける中国のプレゼンスを制限することを目的とした、ホワイトハウスの最新案だ。現在、意見調査が行われている。
ホワイトハウスは電気自動車や電気自動車用バッテリー、そのほかのさまざまな品目に対する関税も引き上げている。これとは別に、サイバーセキュリティー上のリスクへの警戒から、中国製貨物クレーンの輸入を禁止している。
アメリカは2月、いわゆる「コネクテッドカー」がもたらすサイバーリスクについて調査を開始した。
規制案は、ソフトウエアの輸入禁止を2027年モデルから、ハードウエアの輸入禁止をその3年後から導入するというもの。導入までの時間的猶予を与えることで、業界がサプライチェーンを再構築できるようにしている。
大手自動車メーカーを代表する米国自動車イノベーション協会を率いるジョン・ボゼッラ氏は、「今日のコネクテッドカーのサプライチェーンにおいて、中国からアメリカに入る技術はハードウエアもソフトウエアもほとんどない」としながら、この規制が導入されれば一部の企業は新たなサプライヤーを見つけざるを得なくなるだろうと述べた。
「ほかの文脈でも言ったことがあるが、今回の件にも当てはまるので申し上げておく。スイッチを入れるかのように、世界で最も複雑なサプライチェーンを一夜にして変えることなどできない」
「規制案に含まれるリードタイム(開始から完了までの所要時間)は、一部の自動車メーカーには必要とされる移行を済ますのに十分だろうが、ほかのメーカーにとってはあまりに短すぎるかもしれない」
ボゼッラ氏は、最終的な規制がまとまるのに合わせ、協会としての見解を引き続き共有していくとしている。