アメリカのドナルド・トランプ前大統領を狙っていたとして、前大統領が所有するゴルフ場近くで拘束された容疑者が、前大統領を殺すつもりだなどとするメモを事件の数カ月前に書いていたことが、23日に裁判所に出された文書で明らかになった。
このメモは、検察が23日に裁判所に提出した文書に含まれていた。ライアン・ラウス容疑者(58)が、事件があった今月15日の数カ月前に、氏名の明らかにされていない人物に送ったとされ、「世界」に宛てた形式になっていた。
そこには、「これはドナルド・トランプを暗殺する試みだった」、「私は全力を尽くし、度胸のすべてを出し切った」と書かれている。
また、「仕事を完遂してくれる人」には現金で報酬を支払うと書いてある。ラウス容疑者は先週の初出廷の際には、資金も貯金もないと裁判官に述べていた。
検察が裁判所に提出した文書によると、このメモ書きや弾薬、建築資材、工具、携帯電話4台が入った箱が、氏名や容疑者との関係が明らかにされていない人物の自宅に、事件前に置かれていた。この人物は事件後、箱を開け、当局に連絡したという。
ラウス容疑者は、15日にフロリダ州で逮捕されて以降、拘束が続けられている。
これまで、重罪で有罪判決を受けた人物による銃器所持など、銃犯罪に絡む二つの連邦法違反の容疑で訴追されている。
検察は近く大陪審に対し、容疑者を主要政治候補者に対する暗殺未遂という深刻な罪にも問うよう求める方針。
検察の提出文書によると、ラウス容疑者はゴルフ場で、茂みに潜んでいるところをシークレットサービス職員に見つかった。この職員は容疑者のライフルに気づくと、ゴルフカートから飛び降り、自分の銃を抜いて発砲した。容疑者からの発砲はなかった。容疑者は銃弾11発を所持し、うち1発はライフルに装填(そうてん)されていたという。
捜査当局によると、容疑者の車からは、トランプ前大統領が公の場に姿を現す8~10月の日程を手書きしたリストが見つかったという。
電話記録からは、容疑者が8月18日~9月15日の約1カ月間、前大統領のマール・ア・ラーゴ・リゾートの近辺にいたことが示されている。
ラウス容疑者はノースカロライナ州出身。人生の大半を同州で過ごしたが、最近はハワイに住んでいた。これまで数々の法的問題を抱えており、1997~2010年には盗品に絡んで複数の事件で訴追された。
2022年にはウクライナに行き、同国軍のために外国兵をリクルートしようとしたが、うまく行かなかった。ウクライナ軍側には定期的に連絡し、アイデアを伝えたが、同軍の兵士は「ナンセンス」で「妄想的」だと感じていたという。
容疑者は自らもウクライナ軍に参加しようとしたが、年齢と戦闘経験の不足から断られたとしていた。
検察は、容疑者には逃亡の恐れがあり、地域社会にとって危険な存在でもあるとして、裁判まで拘束を続けるよう主張している。
容疑者は30日に罪状認否の公判が予定されている。
(英語記事 Suspect described Trump 'assassination attempt' in pre-written note)