ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は25日夜、核兵器保有国の支援を受ける核を持たない国から攻撃された場合、それは「共同の攻撃」と受け止めると表明した。ウクライナでの戦争における核兵器使用の可能性をあらためて示し、警告した可能性がある。
プーチン氏は核抑止力に関する国家安全保障会議を開いた後、ロシア政府は核兵器使用に関するルール変更を検討しているのだと表明した。
新しい核兵器ドクトリン(基本原則)は、「ロシアが核兵器の使用に移行するための条件を明示する」とプーチン氏は警告。核兵器を使うシナリオには、首都モスクワへの通常兵器攻撃が含まれるとした。核兵器ドクトリンは、ロシア政府がどういう状況・条件で核兵器を使用するかという方針を示した政策文書。
プーチン氏は、ロシアの主権に対する「緊急の脅威」とみなされる、ミサイルや航空機やドローン(無人機)を使った大規模なロシア領内への攻撃を察知した場合、ロシアは核兵器を使う「可能性」を検討するとも述べた。
そのうえでプーチン氏は、「核兵器保有国の参加や支援を受けている、非核保有国による、ロシアへの侵攻を、ロシア連邦に対する合同の攻撃とみなす」という内容が、検討されていると表明。ロシアの核兵器は、「この国家と市民の安全を保障する最も重要な手段だ」とも述べた。
核兵器を持たないウクライナは、アメリカをはじめとする核保有国から支援を受けている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はかねて、西側から供与された長距離ミサイルとロシア国内の軍事拠点に使用する許可を、西側諸国に強く求めている。アメリカ訪問中のゼレンスキー氏は、ジョー・バイデン米大統領との会談でもそれを重ねて求めるものとみられている。
ウクライナは今年夏から、ロシア南西部クルスク州への越境攻撃を展開するほか、ロシア領内の武器弾薬庫などをドローンで攻撃している。さらに、ロシアによるミサイル攻撃の出発点となっているロシア領内の軍事基地を攻撃したいとしている。
プーチン氏の発言を受けて、ウクライナ政府のアンドリー・イエルマーク大統領首席補佐官は、ロシアは「もはや核の脅しで世界を威圧するしかできない」のだと非難した。
プーチン氏はこれまでも繰り返し、核兵器の使用を示唆してきた。これについてウクライナは、西側諸国のウクライナ支援をけん制するための威嚇(いかく)だと非難してきた。
また、ロシアの友好国である中国の習近平国家主席は、核兵器の使用についてプーチン氏をけん制してきたと伝えられている。
注目される戦術核
第2次世界大戦以降、核兵器の保有国が実戦で核兵器を大々的に使用すれば、それは当事者双方の破壊に確実につながるという「相互確証破壊(MAD)」という概念のもとで、核保有国は相互抑止戦略を維持してきた。
ただし、小型の核弾頭を搭載した戦術核兵器は、広域の破壊と放射性降下物による汚染に至ることなく、標的を破壊するために設計されている。
今年6月にプーチン大統領はこの戦術核をめぐり、ウクライナを支援する欧州諸国に警告。「たとえアメリカが(戦術核を)運んできたとしても、欧州大陸にあるよりたくさんの(戦術核が)ロシアにはある」と述べていた。
さらに、「欧州は進んだ(早期警戒システム)を持っていない」ため、「この意味で欧州はある意味で無防備なのだ」ともプーチン氏は述べていた。
プーチン大統領はこの時点で、核ドクトリンの改定をほのめかしていた。