ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日、国連総会で演説し、ロシアがウクライナ国内の原子力発電所の攻撃をこれまで以上に計画していると述べ、「核の大惨事」が起きる危険があると警告した。
国連総会一般討論で演説したゼレンスキー氏は、ロシア政府が他国政府から得た人工衛星を使い、ウクライナの原子力インフラについて情報を得ようとしているという情報を入手したと明らかにした。
「放射能は国境を尊重しない。多くの国がひどい影響を受ける可能性がある」とゼレンスキー氏は、国連で警告した。
「エネルギー・システムに何か重大事態が起きれば、核の大惨事につながる可能性がある。そのような日は、決して訪れてはならない」とゼレンスキー氏は述べ、「ロシア政府はこのことを理解する必要がある。それは、侵略者に圧力をかけるのだという皆さんの固い決意にかかっている」と、国連加盟国に求めた。
「(標的になっているのは)原子力発電所だ。安全が守られなくてはならない」とも大統領は述べた。
ロシアは2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始して以来、ウクライナ各地のエネルギー施設を繰り返し攻撃している。
国際原子力機関(IAEA)は8月17日、ロシア占領下にあるウクライナ南部ザポリッジャの原子力発電所で安全性が悪化していると警告した。この日に、冷却水を散布するための貯水池の近くでドローンが爆発したことを受けてのもの。この貯水池は、原発の電源として唯一残る高圧送電線から約100メートルしか離れていない。
ロシア軍は侵攻開始から間もなく、ザポリッジャ原発を制圧。同原発への攻撃はその後も相次ぎ、ロシアとウクライナの双方が相手の責任を非難し合っている。
「エネルギーの武器化」を非難
ゼレンスキー大統領はこの日の国連演説で、ロシアがウクライナの火力発電所すべてと、水力発電所の大部分を破壊したと指摘。冬に向けてウクライナ人を「苦しめる」ことが目的だとして、「エネルギーを武器として使うことを止めさせなくてはならない」と強調した。
今年4月には首都キーウ近郊の主要な発電所が、ロシアの攻撃で完全に破壊された。今年だけで数百万人ものウクライナ住民が、停電に見舞われている。
訪米中のゼレンスキー氏はこの後、ジョー・バイデン米大統領や民主党大統領候補のカマラ・ハリス副大統領と会談する予定だと明らかにしている。
共和党のドナルド・トランプ大統領候補の選挙対策関係者によると、トランプ候補はゼレンスキー氏に会う予定はないという。ウクライナ政府関係者は今月中旬、ゼレンスキー氏がトランプ候補に会談する予定だと話していた。
ゼレンスキー大統領の国連演説を受けて、トランプ候補は「地球上で最高のセールスマン」だとゼレンスキー氏を評し、自分が11月にアメリカ大統領に再選されなければ、アメリカは「あの戦争からいつまでも抜け出せない」と話した。
ゼレンスキー氏は国連演説で、ウクライナにロシアと交渉するよう中国とブラジルが促していることを批判し、両国の真意を疑問視した。
ゼレンスキー氏は、全面的かつ公平な平和の実現を求める自分の提案を支持するよう、あらためて国連加盟国に呼びかけた。その中で、戦争終結の条件は、国際社会が認めるウクライナの国境の外へロシア軍が撤退することだという、自分の従来の立場をあらためて強調した。
ウクライナは「植民地にされていた残酷な過去」へ戻ることなど、決して受け入れないとも、大統領は述べた。
(英語記事 Russia planning to target nuclear plants, Zelensky says)