2024年9月27日(金)

BBC News

2024年9月26日

中東レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対するイスラエルの攻撃が激化するなか、アメリカ、イギリス、欧州連合(EU)、日本など12カ国・地域は25日、21日間の停戦を直ちに開始するよう求める声明を出した。

アメリカ、オーストラリア、カナダ、EU、フランス、ドイツ、イタリア、日本、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イギリス、カタールが、共同声明に署名し、「外交による解決妥結へ向けた外交努力が行える余裕」を確保するため、直ちに21日間にわたり停戦するよう求めた。また、パレスチナ自治区ガザ地区での停戦も要求した。

各国とEUは、現在の戦闘は「耐え難い」もので、「地域全般への紛争激化という受け入れがたいリスク」であり、イスラエルとレバノン双方の国民の利益にならないと主張した。

これに先立ちイスラエル国防軍(IDF)トップのヘルジ・ハレヴィ参謀総長は同日、ヒズボラを標的としたレバノン領内への広範な空爆について、「敵地へ進入」するための道を開く可能性があると部隊に語った。

これは、イスラエル高官の発言としては、レバノンへの地上侵攻が差し迫っている可能性をこれまでで最も端的にうかがせるものといえる。

アメリカをはじめ各国首脳は現在、国連総会のためニューヨークに集まっている。

これに伴い会談したジョー・バイデン米大統領とエマニュエル・マクロン仏大統領は別途、共同声明を出し、「民間人が家に戻ることのできる安全と治安を保証する」合意が必要だと述べた。

両大統領は、レバノンでの現在の敵対行為は「さらに広範な紛争と民間人への危害」につながる恐れがあると指摘。「そのため私たちはこの数日間、外交に成功の機会を与え、国境を越えた紛争がこれ以上激化する事態を防ぐため、一時的停戦を合同で呼びかけようと共に取り組んでいた」と述べた。

バイデン大統領は25日夕にホワイトハウスで記者団と短く言葉を交わし、「アラブ諸国のほか欧州からも相当の支持を得ている(中略)戦争が拡大しないことが大事だ」と述べた。

アメリカ政府幹部はBBCに対して、イスラエルもレバノンも今のところ提案に回答していないものの、アメリカ政府は両政府と接触しており、数時間のうちに公式な回答が見込まれるという。

この米政府幹部は、21日間という停戦期間は「継続的なもの」で、その間に当事者が「複雑な合意」に到達できるようこのまとまった時間を交渉に使うことになると話した。

米政府幹部は、アメリカが交渉しているのはレバノン政府であって、ヒズボラではないと話した。それによって、「非国家主体」とやりとりするのはレバノン政府の責任になるという。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は25日、即時停戦を求め、「地獄のようなひどい事態が起きつつある」と国連安全保障理事会で述べた。

レバノンのナジブ・ミカティ首相は同じ安保理の緊急会合で、「敵国イスラエルの残酷な振る舞いによって、(自分たちの国の)主権と人権が甚だしく侵害されている」と述べた。

イスラエルのダニー・ダノン国連大使は、エスカレーションを回避するための外交努力には感謝しているが、「我々の目的を達成するために、国際法に従って自分たちに可能なあらゆる手段」を用いるつもりだと述べた。

ダノン大使は、イスラエルは「全面戦争を求めていない」し、平和を望んでいることを「明確」にしてきたと主張。さらに、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が26日にもニューヨークに到着し、複数の首脳と二国間会談を行い、27日午前には国連総会で一般討論演説を行う予定だと話した。

戦闘激化

イスラエルは23日、2006年の戦争以降にヒズボラがレバノンで築いたインフラを破壊するための、空爆作戦を開始した。レバノン各地でこれまでに600人以上が殺害されたと報告されている。

国連によると、レバノンではイスラエルによるエスカレーションが起きる以前に避難した11万人に加えて、新たに9万人が家を追われた。同国では4万人近くがシェルターに身を寄せている。

パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦争を端緒とした、現在のイスラエルとヒズボラの戦闘は1年近くに及んでいる。この戦闘により、イスラエル北部では約7万人が家を追われている。イスラエル政府とIDFは、これらの住民の安全な帰還を確保したいとしている。

ヒズボラは、ガザでイスラエルと戦うイスラム組織ハマスを支援する行動をしているとし、ガザで停戦が実現するまでは交戦をやめないとしている。ヒズボラとハマスは共にイランから支援を受けており、イスラエルやイギリスなどからはテロ組織に指定されている。

国境を挟んだ交戦は25日も続いた。ヒズボラは、イスラエル・テルアヴィヴにある諜報機関モサドの本部を狙ってミサイルを発射したと発表した。ヒズボラがこの人口密集地を標的にしたのは初めて。

このミサイルはイスラエルの防空システムに迎撃され、被害や死傷者の報告はなかった。

ヒズボラはイスラエル北部にも数十発のロケット弾を撃ち込み、2人が負傷した。

レバノンのフィラス・アビアド保健相は記者団に対し、イスラエルの空爆で少なくとも51人が殺害され、223人が負傷したと述べた。死傷者数の民間人と戦闘員の内訳は、明らかにしなかった。

イスラエルによるエスカレーションに先立ち、レバノンでは先週、ヒズボラに対する前例のない攻撃が起きた。

ヒズボラのメンバーが使用する通信機器トランシーバーがレバノン各地で2日連続で爆発し、39人が死亡、数千人が負傷した。この攻撃にイスラエルが関与していると広く受け止められている。

20日には、IDFがヒズボラの拠点となっているベイルート南郊ダーヒエ地区を空爆。ヒズボラの精鋭部隊「ラドワン部隊」の指揮系統は実質的に一掃された。ヒズボラは殺害された55人の中に同部隊のイブラヒム・アキル司令官が含まれることを認めた。

(英語記事 US and allies call for 21-day ceasefire across Lebanon-Israel border

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c17lrrq8e2po


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