ケリー・アン(シンガポール)、ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ(台北)
海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」は25日、中国大陸と台湾島の間の台湾海峡を初めて通過した。複数の日本メディアが、政府関係者への取材をもとに報じた。
さざなみはこの日、台湾海峡を北から南へと抜けた。政府筋によると、南シナ海での多国間訓練に参加する途中だったという。
また、この訓練に参加するオーストラリアとニュージーランドの海軍艦も、さざなみと共に海峡を通過した。
台湾海峡では2週間前にも、ドイツ海軍の艦艇が航行の自由を示すために通過した。中国はこの動きに反発していた。
日本の防衛省と台湾の国防部(国防省)は、この件についてコメントしていない。
一方、中国国営紙「環球時報」は匿名情報筋の話を引用し、中国軍は「(艦船の)全航路にわたって追跡と監視を行い、事態は制御下にあった」と伝えた。
幅約180キロの台湾海峡は、世界のコンテナ船の約半数が通過する重要な海運・貿易ルート。アメリカと台湾は、この海峡は国際水域の一部であり、すべての艦船に開かれているとしている。
しかし、台湾を自国の領土だと主張する中国は、海峡の主権と管轄権を主張している。
豪ラ・トローブ大学のベック・ストラッティング教授(国際関係学)はAFP通信の取材で、「中国による海での勢力拡大を懸念するアジアおよびそれ以外の諸国が、自分たちの海軍力をいっそう示そうとしており、(海自艦の通過も)その一環」だと述べた。
「特に日本は、東シナ海における中国の『グレーゾーン』戦術に対処してきた」と、教授は話した。
中国の「グレーゾーン戦術」は、敵の力を長期間かけて弱体化させることを目的としたものだと、アナリストらは説明している。
アメリカとその同盟国は、国際水路としての台湾海峡の地位を強化するため、より頻繁に台湾海峡を通過している。
中国軍は、9月13日にドイツがこの海峡を航行したことで安全保障上のリスクが高まったと非難したが、ドイツは国際基準に従って行動したと述べた。ドイツ海軍の艦艇が台湾海峡を通過したのは22年ぶりのことだった。
ドイツと日本のほかにも、カナダ、オーストラリア、イギリスも近年、この海峡に軍艦を航行させている。
日本政府は、ここ数カ月で日本付近や台湾周辺で中国の軍事活動が活発化していると報告している。
中国は18日、初めて空母を日本の接続水域に侵入させ、台湾にも近い沖縄県の与那国島と西表島の間を通過した。8月には中国軍の情報収集機1機が、やはり同県沖で初めて日本の領空を侵犯。日本政府は「全く受け入れられない」、「主権の重大な侵害」と非難した。
日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国からなる「クアッド」の首脳は先週、南シナ海で主張を強める中国に対抗するため、海洋安全保障に関する協力を拡大すると発表した。
(英語記事 Japan sails warship in Taiwan Strait for first time: reports)