米ニューヨーク市のエリック・アダムズ市長(64)が、収賄や電信詐欺、違法な外国からの選挙寄付の勧誘など五つの罪に問われたことが26日、明らかになった。前日には米メディアが、市長が起訴されたと報じていた。市長は27日に連邦裁判所に出廷の予定。
起訴状によるとアダムズ市長は、トルコの複数のビジネスマンや、市長の影響力を利用しようとした役人1人に、違法な選挙資金と10万ドル(約1450万円)超の豪華旅行の利益を求め、それを受け取ったとされる。
アダムズ市長は元警察官で、犯罪への厳しい対処を公約に掲げ、約3年前の市長選に勝利した。
市長はいかなる不正行為もしていないとし、高まる辞任要求をはねつけている。
26日の記者会見でアダムズ市長は、「ニューヨーク市民には、弁護団の主張を聞いてから判断してもらいたい」、「私はルールに従い、連邦法に従い、違法な選挙活動に当たるようなことは一切していない」と訴えた。
記者会見は、市長を同市の「恥」だとし、「正義」を求めると主張するニューヨーク市民の抗議行動でたびたび中断された。
有罪とされた場合、市長は最長45年の禁錮刑を受ける可能性がある。
市長を罷免する権限をもつニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は26日、起訴内容を検討していると述べた。
市長は、いわゆる「無能委員会」によっても職を追われる可能性がある。同委員会には、反市長派の市職員が少なくとも数人、入るとみられている。
汚職は10年にわたると検察
57ページに及ぶ起訴状は、アダムズ市長について、ブルックリン区長時代から10年にわたって汚職と収賄が疑われるとしている。汚職は市長就任後も続き、豪華な外国旅行などがあったとしている。
市長の担当職員と航空会社のマネージャーとのやり取りとされる文字記録では、市長のトルコ訪問の際の宿泊場所が検討され、マネージャーが「フォーシーズンズ」ホテルを提案している。市職員は「高すぎる」とし、マネージャーが「彼は気にしない。彼が払うわけではない」と返すと、市職員は「素晴らしい」と応じている。
検察は、この市職員が航空会社のマネージャーに、市長への優遇を隠すため、見せかけの代金を請求するよう依頼したとしている。
ニューヨーク州南部地区連邦検察のデイミアン・ウィリアムズ検事は26日の記者会見で、市長が外国の人々と関係を築き、2021年の選挙運動のために違法な資金を手に入れたと主張。
「市長は2023年にこれらの腐敗した関係を復活させた。再選運動を支援する目的で、同じ外国筋からさらに違法な選挙献金を求めた」とした。
検察はまた、市長の選挙事務所がニューヨーク市の資金を申請し、受け取ったとした。さらに、市長が自分の受けた利益を隠ぺいしようとしたとした。
アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員ら、ニューヨークの民主党有名議員の何人かは、アダムズ市長の辞任を求めた。
一方、連邦下院のハキーム・ジェフリーズ院内総務(民主党)らは、市長に推定無罪の原則を当てはめるべきだとし、それ以上のコメントを避けた。
ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官は、今回の起訴と移民をめぐる政治的な争いとの関連を否定し、司法省(DOJ)とホワイトハウスの連携もないとした。
アダムズ市長と周囲の人物に対しては、2022年元日の就任以来、連邦機関が監視の目を強めてきた。
米連邦捜査局(FBI)は昨年、市長がトルコ政府やその他の外国筋から違法な選挙献金を受け取っていた疑いで、市長の首席資金調達者だったブリアンナ・サグス氏ら選挙運動関係者の自宅を捜索した。
ここ数週間は、新たな捜査が熱を帯びるなか、警察本部長や保健部門トップ、市長の最高顧問ら側近の辞任が相次ぐなど、市政は大揺れとなっている。
市長の支持率は市政史上最低となっており、民主党内では、失脚したアンドリュー・クオモ元ニューヨーク州知事らがアダムズ市長の後釜を狙って準備を進めている。
仮にアダムズ市長が来年任期満了の前に辞任するか解任された場合、左派系の市政監督官ジュマーニ・ウィリアムズ氏が後任となる。
(英語記事 NYC mayor charged with taking bribes and illegal campaign funds)