2024年10月11日(金)

BBC News

2024年9月27日

自由民主党の総裁選挙が27日午後にあり、石破茂氏(67)が総裁に選出された。10月1日召集の臨時国会で、岸田文雄首相の後継となる第102代首相に指名される見通し。

石破新総裁は同日夜、記者会見し、衆議院の解散・総選挙の時期について、新政権発足後は国会で野党との論戦を交わした上で、なるべく早い適切な時期に国民の審判を仰ぎたいと述べた。

自民党本部で開かれた総裁選は、過去最多9人の候補者で争われた。1回目の投票では、過半数に達した候補者はなかった。

そのため、石破元防衛相と高市早苗経済安全保障相(63)の上位2人による決選投票となった。石破氏は215票(国会議員票189票、都道府県連票26票)を獲得し、当選を決めた。高市氏は194票(国会議員票173票、都道府県連票21票)だった。

石破氏は5度目の総裁選挑戦で、総裁の座をつかんだ。日本の政界では珍しく、率直な物言いや大っぴらな岸田首相批判で知られ、党内の一部で反発を買う一方、国民から一定の共感を得てきた。

石破氏は、女系天皇という、多くの自民党員やこれまでの政権が反対し、議論が大きく分かれる問題では、容認を含めて議論すべきとの立場を取っている。

読書家としても知られる石破氏は、政党政治の仕組みは熟知しているほか、安全保障政策にも詳しい。自民党が揺れ動く現状においては、熟練と安定を提供しているものの、経済停滞と相次ぐ政治スキャンダルの中でなんとしても自己刷新して有権者の信頼を回復したい政権与党にとって、石破氏は決して新顔ではないと、BBCのシャイマ・ハリル東京特派員は指摘する。

今回の総裁選は、岸田氏の総裁任期満了に伴うもの。石破氏と高市氏のほか、加藤勝信元官房長官(68)、上川陽子外相(71)、小泉進次郎元環境相(43)、河野太郎デジタル相(61)、小林鷹之前経済安保相(49)、林芳正官房長官(63)、茂木敏充幹事長(68)が立候補した。

戦後日本でほとんどの間、政権与党であり続ける自民党にとっては、旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)や政治資金に絡むスキャンダルに揺れ、かつて大きな影響力をもった派閥が解体となるなど、激動の時期に開かれた総裁選となった。

石破氏の総裁任期は2027年9月まで3年間。今後、党の新たな役員を決め、新執行部を発足させる。

激動の与党、信頼回復の試み  シャイマ・ハリルBBC東京特派員

自民党の総裁選は、単にトップの座を争うだけでなく、経済の停滞、家計の苦境、一連の政治スキャンダルの中で、同党がここ数カ月の間に失った国民の信頼を取り戻す試みでもあった。

スキャンダルの主なものは、物議を醸してきた旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)の自民党への影響力が明らかになったことと、党派閥が何年かにわたって政治資金について過少申告をしていた疑惑だ。

政治資金スキャンダルでは、自民党の6派閥のうち5派閥が解散に追い込まれた。派閥は長い間、同党の屋台骨となってきたもので、総裁選での勝利には派閥の支持が不可欠とされてきた。

しかし、国民にとってより重要なのは、深刻化が増す経済問題だろう。

新型コロナウイルスの流行後、日本の一般的な家庭は、円安、経済の停滞、食料品価格の約半世紀ぶりの急速な高騰と格闘し、苦慮している。

経済協力開発機構(OECD)のデータによると、日本の賃金はこの30年間ほとんど変わっていない。この長引く不況は30年来の高インフレと相まって、家計を締め付け、政府による支援を求める声を大きくしている。

さらに、長年、有権者の支持を得てきた自民党の立場も損なわれている。

「国民は自民党に飽きている」。元旧民主党衆院議員で早稲田大学教授(政治学)の中林美恵子氏は、BBCにそう話した。「直面しているインフレや、いわゆる『失われた30年』に、国民は不満を抱いている。日本の通貨は安く、輸入品の多くはインフレで高価になり、多くの人がそれを目の当たりにしている」。

もう一つの大きな論点は、日本の高齢化と人口減少だ。この問題は、社会・医療サービスを圧迫し、日本の中長期的な労働力をめぐり深刻な課題を突き付けている。誰が自民党、ひいては政府を率いるにせよ、その人物は日本の労働市場や移民の受け入れについて再考しなければならないだろう。

これは、2025年10月までにある次の総選挙に向けて、どうしても必要な再調整だ。総選挙については、早期の実施を訴える候補もおり、例えば小泉氏は、総裁選が終わればすみやかに実施したいとしている。

政治の専門家らは、総裁選の最後の2週間を、総選挙へ向けたオーディションだと見た。そのため、候補者らは党員だけでなく、一般国民に向けても自分をアピールし、有権者の支持を得ようとした。

「国民は変わりつつある」と、立命館大学客員教授で、安倍・岸田両氏と近い関係だった宮家邦彦氏はBBCに話した。「この国の保守政治にとっては、新しい政治環境と政治戦場に適応する時だ」。

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提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cz7j04n3q2zo


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