アメリカのドナルド・トランプ前大統領は26日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と27日午前にニューヨークで会談すると発表した。一方、ゼレンスキー大統領は26日、ジョー・バイデン大統領やカマラ・ハリス副大統領と面会し、ロシアとの戦争について協議した。
11月にある米大統領選の共和党候補となっているトランプ前大統領は、記者会見で、ゼレンスキー大統領と27日午前9時45分（日本時間午後10時45分）ごろにニューヨーク市内のトランプ・タワーで面会すると述べた。
国連総会に合わせて訪米したゼレンスキー大統領は22日、米大統領選の激戦州ペンシルヴェニアを視察。これについて共和党幹部から怒りの声が高まり、トランプ候補との会談がキャンセルされたと報じられていた。
ゼレンスキー大統領は、26日にはホワイトハウスでジョー・バイデン大統領と、民主党の大統領候補のカマラ・ハリス副大統領と面会。ウクライナ侵攻を続けるロシアに外交的な戦争終結への合意を迫る「勝利計画」について協議した。
トランプ候補が経緯を説明
トランプ候補は、「ゼレンスキー大統領が私と会えないか聞いてきたので、明日の朝に会うつもりだ」と、ニューヨークで記者団に述べた。
「ウクライナで起きていることは残念だ。本当に多くの死者が出て、本当に多くの破壊が起きている。恐ろしいことだ」
そして、自分ならロシアのウラジーミル・プーチン大統領とゼレンスキー大統領の間で「かなり早期に」「取引をまとめる」ことができると信じていると述べた。
取引の詳細について質問がおよぶと、トランプ候補は「どういうものかは教えたくない」と答えた。
戦争を終わらせるためにウクライナはロシアに領土を渡すべきかと問われると、トランプ候補は直接の回答を避けた。
そして、「いくらかの平和を手に入れよう」、「我々には平和が必要だ。死と破壊を止める必要がある」と述べた。
バイデン氏やハリス候補と会談
トランプ候補の記者会見に先立ち、ゼレンスキー大統領はバイデン大統領とハリス副大統領と会談した。
会談に先立ち、バイデン大統領はウクライナへの総額79億ドル（約1兆1300億円）の軍事支援策を発表した。
会談後にゼレンスキー氏と記者会見に臨んだハリス候補は、「ウクライナに領土の大部分の放棄を迫る」者が「我が国にいる」と述べた。
「こうした提案は、プーチンが提案しているものと同じ」「降伏の提案」だとハリス候補は述べた。
米共和党、「選挙介入」と反発
ゼレンスキー氏とトランプ候補の会談は、米大統領選を前にゼレンスキー氏と米共和党との間に緊張が走っている中で行われる。
一部の共和党員は、ゼレンスキー氏がバイデン氏の生まれ故郷であるペンシルヴェニア州スクラントンの砲弾工場を視察したことに憤った。視察にはジョシュ・シャピロ州知事ら民主党幹部が同行した。
共和党の有力者たちは、大統領選で重要な激戦州への訪問は党派的な選挙活動だとみている。
マイク・ジョンソン下院議員（共和党）は公開書簡で、ゼレンスキー氏のこうした訪問は「民主党を助けるためのもの」で「選挙介入」にあたると主張した。
トランプ候補とゼレンスキー氏の複雑な関係
トランプ候補とゼレンスキー氏の関係は複雑だ。
トランプ候補をめぐっては大統領だった2019年、ゼレンスキー氏に個人的利益のため政敵への捜査を働きかけ、軍事援助の凍結を取引材料にしたとされる問題が浮上。当時、野党･民主党が多数だった米下院は、ウクライナへの働きかけを「権力乱用」と認定したほか、これについての議会調査を大統領が妨害したのは「議会妨害」だとして、トランプ候補を弾劾訴追した。
ホワイトハウスが公表した通話記録によると、トランプ候補はゼレンスキー氏に対して、2020年米大統領選で民主党候補となるかもしれなかったバイデン氏とその息子について、汚職関連で捜査するよう促した。
一方、ウクライナとロシアの戦争をめぐっては、トランプ候補はアメリカの対ウクライナ支援の継続に批判的な姿勢を強めている。
ゼレンスキー氏が25日に国連総会で、ロシアがウクライナ国内の原子力発電所の攻撃をこれまで以上に計画しており、「核の大惨事」が起きる危険があると警告すると、トランプ候補は「地球上で最高のセールスマン」だとゼレンスキー氏を評し、自分が11月に大統領に再選されなければ、アメリカは「あの戦争からいつまでも抜け出せない」と話した。
ゼレンスキー氏は最近、トランプ候補は「この戦争を止める方法をまるでわかっていない」と米誌ニューヨーカーに語っている。
26日に記者からゼレンスキー氏のこうした発言について問われると、トランプ候補は「私は彼と意見が合わないと思う。私のことを彼はわかっていない」と答えた。
