ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は28日、新型の弾道ミサイル「オレシュニク」でウクライナの首都キーウの意思決定中枢を攻撃すると威嚇した。
ロシアはこの日夜にかけて、ウクライナのエネルギー網に対する「広範囲な」攻撃を実施。開始から数時間後に、プーチン氏が今回の発言をした。
プーチン氏は攻撃について、ウクライナがアメリカから供給された弾道ミサイルシステム「ATACMS」を使ってロシア国内を「継続的に攻撃」していることへの対応だと説明した。
これに対しウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、すべての「ロシアによる脅迫」に「厳しい対応」を取ると警告した。
ウクライナは先週、ATACMSと、イギリスから供給された長距離ミサイル「ストームシャドウ」を使ってロシア国内を攻撃した。こうした攻撃は、2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以降で初めてだった。ミサイルの使用はアメリカ、イギリス、フランスが承認していた。
大規模な停電
ウクライナ軍によると、この夜のロシアの攻撃は9時間半におよんだ。多数のドローン(無人機)とミサイルがウクライナ各地に飛来し、南部オデーサ、北東部ハルキウ、北西部ルツクなどで爆発があった。こうした攻撃は今月2回目。
西部3州を含む少なくとも12地域が攻撃された。死者は報告されていないが、100万人以上が停電に見舞われた。ヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー相は、送電網へのダメージを最小限にするためとして、緊急停電の導入を発表した。
キーウも攻撃対象となったが、ウクライナ当局によると、首都に向けられたミサイルはすべて迎撃したという。
ゼレンスキー氏は、民間人やエネルギーインフラに対してクラスター弾が使われたと主張。「ロシアが民間人に対して使う兵器の中でも特に危険なもの」だとして、救助隊や修復担当者らの作業を「著しく複雑にしている」と付け加えた。
プーチン氏については、「この戦争を終わらせる気がない」とし、「他者がこの戦争を終わらせるのを阻止」しようとしていると主張。「いま対応を激化させているのは、最終的に米大統領にロシアの条件を受け入れさせるための圧力の一つだ」と述べた。
一方、プーチン氏は、この夜の攻撃にはミサイル90発とドローン100機を使ったと説明。「オレシュニク」も含まれていたとして、この新型弾道ミサイルは迎撃不可能だと述べた。
オレシュニクに関しては、ロシアは少数しか保有していない可能性が高く、追加製造には時間がかかると米当局はみている。
ロシア国営RIA通信によると、プーチン氏はこの日、ウクライナの核兵器保有を許さないと述べ、もし保有すれば「ロシアは破壊のためあらゆる手段」を取ると強調した。
この発言は、21日付の米紙ニューヨーク・タイムズ報道を受けたものとみられる。同紙は、ジョー・バイデン米大統領が来年1月に退任する前に、ソヴィエト連邦崩壊後にウクライナが放棄した核兵器をウクライナに再び提供する可能性を、複数の西側当局者が匿名で語ったと報じた。
ウクライナは1994年のブダペスト覚書で、旧ソ連から受け継いだ核兵器を放棄した。これがウクライナから必要な安全保障を奪うことになったと、ゼレンスキー氏は繰り返し不満を表明している。
本格的な冬に向かうウクライナ
ウクライナでは気温が下がり、すでに雪が降り始めている。
ウクライナ当局は、冬の到来に合わせて送電網の機能を失わせることを、ロシアが再び狙うのを恐れている。
ウクライナ最大の民間エネルギー会社DTEKは今月、火力発電所が「甚大な被害」を受け、停電が発生したと発表した。
28日の攻撃については、エネルギーシステムへの「大規模な攻撃」としては今年3月以降で11回目だと、DTEKは説明した。
ロシアがウクライナに本格侵攻した2022年2月以降、ウクライナの発電所は190回以上攻撃されている。そうした状況で厳しい冬を耐えてきたウクライナの人々は、また新たな冬に備えている。
(英語記事 Putin threatens Kyiv decision-makers after striking energy grid)