メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は28日、ドナルド・トランプ米次期大統領と電話で会談した際の内容について、2人の認識が食い違っているとして、自らの立場を説明した。
27日の電話会談後、トランプ氏はシェインバウム氏が「メキシコ経由でアメリカに入る移民を止めると合意した。実質的に南部国境を閉鎖することになる」と述べた。
これを受けてシェインバウム大統領は、自分はメキシコの立場をあらためて伝えただけだと反応。メキシコの方針は「国境閉鎖ではなく、政府と人々の間に橋を架けることだ」と記者団に説明した。
両氏の電話会談に先立ち、トランプ氏は25日、来年1月20日の就任初日にメキシコとカナダに対して一律25%の関税を、中国に対して10%の関税をそれぞれ課すと発表。メキシコとカナダに対する関税は、アメリカへの不法移民流入と麻薬密輸が止まった場合に限り、撤廃すると述べていた。
これについてシェインバウム大統領は当初、アメリカが貿易戦争を始めるのならメキシコは報復措置をとると強い調子で反発。「アメリカが関税を課すなら、メキシコも関税を引き上げる」と述べていた。
トランプ氏が提案した関税は、トランプ氏自身が2018年に大統領として締結した、「米国・メキシコ・カナダ協定」に違反する可能性もある。
シェインバウム大統領は28日、記者団に対して、トランプ氏との電話会談では関税について具体的に話し合ったわけではなく、移民と、合成オピオイド(麻薬性鎮痛剤)の一種「フェンタニル」の密輸を話題にしたのだと明らかにした。移民とフェンタニル密輸はどちらも、トランプ氏が関税の理由として挙げた項目。
トランプ氏は、中南米各地から数千人がまとまってアメリカを目指す、いわゆる「移民キャラバン」を問題視している。これについてシェインバウム氏は、そういう「移民キャラバン」がメキシコ北部のアメリカとの国境に「到達することはない」とトランプ氏に保証したのだと説明した。ただし、「アメリカとの国境閉鎖を計画したことは、一度もない」と強調した。
シェインバウム氏は、トランプ氏との会話は「非常に友好的」なもので、今後も「話し合いを続ける」ことで合意したと主張した。
トランプ氏の輸入関税発表に対する当初の強い反応と比べて、この日のシェインバウム氏は穏やかな調子で、アメリカとメキシコの間で「関税戦争が起きる可能性はない」と強調した。
メキシコ経由でアメリカに向かう移民の流れは以前から、両国関係に影を落としてきた。トランプ氏が勝利した今年の米大統領選では、主要争点のひとつだった。
アメリカの外交圧力を受けてメキシコはこれまで、過去最大規模の移民取り締まりを実施してきた。メキシコ人ではない移民については、アメリカ国境から遠く離れた南部までバスや飛行機で移送している。
しかし、トランプ氏は大統領選でアメリカとメキシコの国境を封鎖することを公約した。メキシコが移民流入を食い止めなければ関税25%を課すという発表は、アメリカの南側国境に移民が到達するのを防ぐため、対策をいっそう強化するようメキシコに強いるための威圧だったとみられている。
メキシコ政府は反対に、アメリカからメキシコに流入する武器密輸を阻止するための対策をアメリカ政府に要求している。
シェインバウム氏は28日に記者団に対し、銃の問題については「適切な時期」にトランプ氏に提起すると述べた。
関税方針発表から間もなく、トランプ氏はカナダのジャスティン・トルドー首相とも電話で会談した。
トルドー氏は続けて27日夜、関税のリスクについて話し合うために、カナダの州および地域の指導者たちと緊急会議を開いた。
緊急会議の議事録要旨によると、首相はカナダ各地の首脳に対して、アメリカとカナダの深い経済的および安全保障上の結びつきについて、アメリカ人や影響力のある人々に重要な情報やメッセージを伝えるために「すべての連絡先、チャンネル、能力を活用する」よう促した。
(英語記事 Mexico leader responds to Trump claim she agreed to stop migration)