韓国の警察は11日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による非常戒厳の宣布に関する捜査で、大統領府の家宅捜索に乗り出した。一方、法務省は同日、戒厳令をめぐって逮捕された前国防相が自殺を図ったと明らかにした。
尹氏は内乱の疑いがかけられており、さまざまな政府機関が調べを進めている。国会で弾劾の要求が出され、退陣を求める声も多く出るなか、尹氏は大統領職にとどまっている。
AFP通信によると、警察は大統領府の一部事務所には入れたが、主要棟には警備員に阻まれて入れていないという。
韓国メディアによると、大統領府にはこの日、非常戒厳が宣布された夜に開かれた閣議に関する記録を押収するため、捜査員18人が派遣された。捜索の際、尹氏は不在だった。
捜索令状には、容疑者として尹氏の名前も記されていた。.
専門家らは今回の捜索について、当局が大統領と側近に対して圧力を強めていることがうかがえるとしている。
ソウルにある韓国外国語大学校のメイソン・リッチー准教授は、「現時点でわかっていると思われることから判断すれば、尹氏は遅かれ早かれ弾劾されるだろう。その前か後に、彼はおそらく逮捕され、尋問され、最終的には内乱罪で起訴されるだろう」とBBCに話した。ただ、「状況はまだ流動的だ」とした。
大統領府が捜索されたのは、釜山の元副市長の汚職疑惑が持ち上がった2019年12月以来。このときには捜査員らは大統領府の敷地には入らず、前例に従って大統領府が資料を差し出した。
当時は文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が政権を率いていた。尹氏は2022年に大統領に就任した。
現在、尹氏がどのような権限をもっているのかは不明。尹氏の辞任を求めるデモは依然、街頭で続いている。
与党「国民の力」の韓東勲 (ハン・ドンフン) 代表は8日、「大統領は、辞任するまで、外交を含むいかなる国務にも関与しない」と発表。
尹氏が早期に「秩序ある辞任」をするまでは、与党と韓悳洙(ハン・ドクス)首相が国政を担うとしている。
これに対し、最大野党「共に民主党」の朴贊大(パク・チャンデ)院内代表は、与党の案を「違法、違憲の2度目の内乱で、2度目のクーデターだ」と批判している。
前国防相が自殺未遂
こうしたなか、法務省は11日、非常戒厳の責任を取るとして国防相を辞任した金龍顕(キム・ヨンヒョン)氏が10日夜に拘置所で自殺を図ったと明らかにした。.
同省の矯正部門トップの慎鏞海(シン・ヨンヘ)氏が議員らに説明したところでは、金氏が自殺を試みているところを職員が発見した。命に別状はないという。
金氏は8日に内乱の疑いで逮捕された。尹氏に非常戒厳を進言したとされる。
尹氏は3日夜に非常戒厳を宣布した。議会の要求で解除した後の4日、金氏は非常戒厳の全責任を取るとして辞意を表明。尹氏は5日、これを受け入れた。
(英語記事 S Korea police raid president's office over martial law attempt/S Korea ex-minister linked to martial law move attempts to take his life)