
米宇宙企業スペースXは16日午後、テキサス州ボカチカで、大型宇宙船「スターシップ」の7回目の無人飛行実験を行った。打ち上げ後に宇宙船との通信が途絶えた。空中分解したとみられる。他方、ロケットブースターを発射地点に戻して回収することには成功した。
米富豪イーロン・マスク氏が所有するスペースX社の関係者によると、打ち上げ後にスターシップに問題が発生し、上段の宇宙船部分が失われたという。
しかし、ロケットブースター「スーパーヘビー」は予定通り発射台に戻り、管制センターから大歓声が上がった。
これに先立ち米フロリダ州では同日早朝、米アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏率いる宇宙企業ブルーオリジンが、「ニューグレン」ロケットの初打ち上げに成功した。
ロケットを地球の周回軌道に投入しようと、何年も費やしてきたベゾス氏とブルーオリジンにとって、大きな前進といえる成功となった。
マスク氏とベゾス氏はそれぞれ、宇宙船市場の独占を狙っている。
スペースXの宇宙船に何が
スペースXは、「スターシップは上昇時の燃焼で、予定外の急速な分解に見舞われた。チームは根本原因をより良く理解するため、本日の飛行実験のデータの見直しを継続する」とソーシャルメディアに投稿した。
「このような実験では、学びから成功が得られるものだ。本日の飛行は、スターシップの信頼性の向上に役立つはずだ」とも同社は書いた。
ソーシャルメディアで共有された未検証動画では、スターシップが炎を上げ、ばらばらになっているようにみえる。
また、ハイチの首都ポルトープランス上空で、複数のオレンジ色の火の玉が、煙の筋のようなものを残しながら飛んでいく様子を捉えた動画も浮上した。
「成功は不確実だが、エンターテインメントは保証する!」と、マスク氏はソーシャルメディアに投稿。火の筋のようなものが残った空の動画を公開した。
また、スターシップの「改良版」の「打ち上げをすでに控えている」とも書いた。
「予備的な兆候としては、宇宙船のエンジンの防火壁の上にある空洞部分で酸素と燃料が漏れ、ベントの容量を超える圧力がかかった」とマスク氏は後に説明。「現時点では、次の打ち上げを来月以降に延期する必要性を示すものは何もない」と付け加えた。
スペースXのライブストリームによると、打ち上げ映像は720万回視聴された。
破片飛散で運航に影響
スターシップは16日午後5時38分、テキサス州ボカチカで打ち上げられた。
スターシップの上段は、予定通り飛行開始から約4分後に、下段のブースター「スーパーヘビー」から分離した。
しかしその後、スペースXの広報責任者ダン・ヒュイット氏は、宇宙船との交信が途絶えたとライブストリームで報告した。
一方でスーパーヘビー・ブースターは、予定通り離陸から約7分後に発射台に戻り、地上管制チームから拍手が沸き起こった。
アメリカ連邦航空局(FAA)は、スペースXのミッション中に「異常が発生した」ことを認識しているとした。
「FAAは、宇宙船の破片が落下していたエリア周辺で、航空機の飛行速度を一時的に減速させ、迂回(うかい)させるなどした。その後、通常のオペレーションが再開された」と、FAAは声明で述べた。
スペースXは15日にも、ロケット「ファルコン9」の無人飛行実験を行ったばかり。
フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられたファルコン9には、民間企業が製造した月着陸船2機と超小型の月面探査車をが搭載されている。