2025年2月14日(金)

BBC News

2025年1月18日

米宇宙企業スペースXの大型宇宙船「スターシップ」が、無人飛行実験中に空中分解したことを受け、米政府は17日、スペースXに空中分解の原因究明を命じた。スターシップの打ち上げは、調査が完了し、航空当局の許可が得られるまで停止される。

スターシップの7回目の無人飛行実験は16日午後、テキサス州ボカチカで行われた。打ち上げ後にスターシップに問題が発生し、上段の宇宙船部分がカリブ海上空で空中分解した。

FAAは、宇宙船の破片が落下したエリア周辺で、航空機の飛行速度を一時的に減速させたり、航空機の離陸を停止させるなどの「破片対応エリア」を設けたことを明らかにした。

また、影響を受けたエリアの周辺で待機していた複数の航空機から、燃料レベルの低下を理由に迂回(うかい)させてほしいとの要請があったとも付け加えた。

FAAは英領タークス・カイコス諸島の公共物への被害報告を確認するため、スペースXや複数当局と連携しているとしている。負傷者の報告はないという。

米富豪イーロン・マスク氏が所有するスペースX社は、FAAから「事故」調査を行うよう命じられている。FAAが調査結果を見直し、スターシップの打ち上げを再開させるかどうかを判断する。

「スターシップ」とは

スターシップは、これまでに製造された中で最大かつ最も強力なロケットで、火星入植というマスク氏の野望にとって重要なものだ。

スターシップの無人飛行実験は7回目だったが、改良されたスターシップの打ち上げは初めてだった。改良版は、これまでよりも2メートルほど機体が長い。「大幅な改良を加えた、新世代の宇宙船」だと、スペースXは実験前に述べていた。

スターシップは当初、テキサス州ボカチカでの打ち上げから約1時間後に、制御された状態で、インド洋に着水する予定だった。

米航空宇宙局(NASA)は、スターシップの改良版を、月に宇宙飛行士を再び送ることを目指す「アルテミス計画」で、有人月着陸船として使用したいと考えている。

マスク氏もゆくゆくは、スターシップで火星への往復移動を実現することを目指している。火星までの移動には、片道9カ月かかるとされる。

空中分解

スターシップは16日午後5時38分、テキサス州ボカチカで打ち上げられた。

スターシップの上段は、予定通り飛行開始から約4分後に、下段のブースター「スーパーヘビー」から分離した。

しかしその後、スペースXの広報責任者ダン・ヒューイット氏は、宇宙船との交信が途絶えたとライブストリームで報告した。

一方でスーパーヘビー・ブースターは、予定通り離陸から約7分後に発射台に戻り、地上管制チームから拍手が沸き起こった。

スペースXは、「スターシップは上昇時の燃焼で、予定外の急速な分解に見舞われた。チームは根本原因をより良く理解するため、本日の飛行実験のデータの見直しを継続する」とソーシャルメディアに投稿した。

「予備的な兆候としては、宇宙船のエンジンの防火壁の上にある空洞部分で酸素と燃料が漏れ、ベントの容量を超える圧力がかかった」とマスク氏は説明。「現時点では、次の打ち上げを来月以降に延期する必要性を示すものは何もない」と付け加えた。

スターシップの打ち上げに先立ち、フロリダ州では16日早朝、米アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏率いる宇宙企業ブルーオリジンが、「ニューグレン」ロケットの初打ち上げに成功した

ロケットを地球の周回軌道に投入しようと、何年も費やしてきたベゾス氏とブルーオリジンにとって、大きな前進といえる成功となった。

マスク氏とベゾス氏はそれぞれ、宇宙船市場の独占を狙っている。

(英語記事 US grounds SpaceX's Starship after test flight explosion

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c89772vv8leo


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