2025年2月11日(火)

BBC News

2025年1月19日

パレスチナ・ガザ地区での戦闘をめぐり、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意が現地時間19日午前11時15分(日本時間午後6時15分)に発効した。ハマスによる人質解放とイスラエルによる収監者釈放を交換条件に、停戦は3段階で進められる予定。

イスラエル首相府は19日午前、ハマスが解放する人質の名簿を受け取ったと発表した。これに伴いを首相府は、6週間の停戦開始を発表した。当初の予定から3時間遅れたことについて、イスラエルは人質名簿の提供がなければ開始できないとしていた。

これについてハマスは、名簿提供が遅れたのは「技術的な理由」によるものだと説明。通信アプリ「テレグラム」で、最初に解放する女性3人の名前を発表した。

合意では、人質の解放と収監者の釈放は数回に分けて行われる。第1陣の交換は当初、19日午後4時(日本時間午後11時)に予定されていた。

停戦合意を仲介したカタール政府は合意発効後、3人の女性人質解放は同日中に実施される可能性を示した。カタール政府は、解放されるのが「イスラエル市民3人で、1人はルーマニアの、1人はイギリスの国籍も持つ」、「こうして停戦は始まった」と発表した。

ガザ地区内で家を失い避難を余儀なくされていた大勢の住民は、停戦発効を受けて、帰還を始めている。現地で撮影された映像では、衣類など所持品を持った人たちが列をなして移動する様子がみられる。パレスチナの旗を持った人たちが乗った車の列もみられる。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の官邸は声明で、7日以内にさらに女性の人質4人が解放されるかもしれないと述べた。

合意発効が遅れたため、イスラエル軍は同日午前、ガザ空爆を継続。ハマス運営の保健省によると、それによって少なくとも19人が殺害された。

女性3人を最初に解放と

ハマスによると、ドロン・スタインブレッヒャーさん(31)、イスラエルとイギリスの二重国籍を持つエミリー・ダマリさん(28)、ロミ・ゴネンさん(24)がまず最初に解放される。

スタインブレッヒャーさんは動物看護師で、2023年10月7日のハマスによる攻撃当時、キブツ・クファル・アザの自宅にいた。ダマリさんもキブツ・クファル・アザから拉致された。ゴネンさんは、ハマスが襲った音楽フェスティバルの会場から脱出しようとしたところ拉致された。

援助物資のトラック待機

ガザの境界には、援助物資を搭載した輸送トラック数千台が待機している。援助物資提供の大幅拡大は、停戦合意の条件のひとつ。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、「援助物資を載せたトラック4000台がガザに入るため待機している。そのうち半分は、食料と小麦粉を載せている」とソーシャルメディア「X」に書いた。

UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は、「停戦を受けて人道援助が入るようになれば、ガザ地区で起きている援助車列への攻撃は減るかもしれない」と付け加えた。

イスラエルの極右政党は連立離脱

停戦合意発効を受けて、ネタニヤフ内閣に参加している極右政党「ユダヤの力」は連立離脱を発表した。同党を率いるイタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相、アミハイ・エリヤフ・エルサレム問題・遺産相、イツハク・ワッセルラウフ周辺開発相が辞表を提出した。これによって、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるリクード党が中心となった与党連合と、野党連合との議席の差はごくわずかになる。

ベン・グヴィル国家安全保障相はかねて停戦合意を強く批判しており、イスラエルはガザ地区でハマスに対する軍事作戦を継続すべきだと主張していた。ベン・グヴィル氏はネタニヤフ首相への手紙で、自分は政権打倒を目指すつもりはないものの、停戦合意は「テロリズムの完全勝利だ」と批判した。

3段階の合意

合意の第1段階は6週間にわたり、ハマスがガザで拘束しているイスラエル人の人質33人の解放と引き換えに、イスラエルは刑務所に収監しているパレスチナ人数百人を釈放する。

イスラエルはこの間、ガザの「すべての」人口密集地域から撤退し、ガザで避難を余儀なくされたパレスチナ人は帰還を開始できるようになる。援助物資を運ぶトラック数百台が毎日、ガザに入ることを許されるようになる。

第2段階に向けた交渉は、停戦の16日目に開始される。第2段階では、残るイスラエル人人質の解放、イスラエル軍の全面撤退、および「持続可能な平穏の回復」を実現する。

最終段階の第3段階では、数年を要する可能性があるガザの復興と、残された人質の遺体の返還を実現する。

交渉を仲介してきたカタール政府によると、第1段階で解放される人質には「民間人の女性、女性兵士、子供や高齢者、民間人の傷病者」が含まれることになる。

イスラエル政府は、停戦開始の初日にまず人質3人が解放され、その後6週間にかけて定期的に少人数ずつが解放されることになるとしている。

ハマスは2023年10月7日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛け、約1200人を殺害。251人を人質に取った。イスラエルは直後に、ハマス壊滅を掲げてガザでの軍事作戦を開始した。ハマスはイスラエルやアメリカなどからテロ組織に指定されている。

ハマス運営のガザ保健省は、イスラエルの報復攻撃で、ガザではこれまでに4万6870人以上が死亡したとしている。約230万人のガザ人口の大半が家を追われ、広範囲が破壊された。また、支援を必要とする人々への物資確保に苦慮しており、食料や燃料、医薬品、避難所の不足が深刻化している。

(英語記事 Gaza ceasefire begins after Hamas releases names of first Israeli hostages to be freed

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0e4gd3dej7o


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