2025年2月14日(金)

BBC News

2025年1月20日

動画配信アプリのTikTokは20日、アメリカでサービスを再開した。ドナルド・トランプ次期大統領が、就任時に同アプリの禁止法について、大統領令で猶予を与えると述べたことを受けたもの。

中国企業バイトダンスが所有するTikTokは18日夜、国家安全保障上の理由で禁止する法律が施行された後、アメリカの1億7000万人のユーザーに対して機能しなくなった。

その後、トランプ氏が19日、この法律の施行を遅らせ、TikTokの処遇について合意するための猶予を与えると約束した。

この直後にアプリは再び機能し始め、ユーザーにはトランプ氏に感謝するポップアップメッセージが表示された。声明の中でTikTokは、「必要な明確さと保証を提供してくれた」次期大統領に感謝し、「アメリカでTikTokを維持するための長期的な解決策に向けてトランプ氏と協力する」と述べた。

同社の最高経営責任者(CEO)周受資氏は、20日に行われるトランプ氏の大統領就任宣誓式に出席する予定。

TikTokはアメリカで、数千万人のユーザーを抱える人気アプリとなっている。また、同国の政治家が若い有権者にリーチするための貴重なツールだということも、実証されている。

昨年4月に共和党と民主党双方からの支持を得て可決された法律では、親会社バイトダンスがアメリカ事業を売却しない限り、TikTokアメリカ版をアプリストアやウェブホスティングサービスから削除されることになっていた。

これについてTikTokは、同法が米ユーザーの言論の自由を保護する権利を侵害していると、米連邦最高裁判所で主張していた。

しかし、連邦最高裁が今月17日に全員一致で法律を支持したため、19日に禁止が施行された。

トランプ次期大統領は19日、自身が所有するソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「TikTokが停止したままにしないよう、企業にお願いしている! 20日に大統領令を発行し、法律による禁止措置が発効する前の期間を延長することで、国家安全保障を守るための取引を成立させる」と投稿した。

既に施行されている法律の実施を遅らせるため、トランプ氏にどのような法的権限があるのかは不透明だ。しかし大統領令が発行されれば、トランプ政権はTikTok禁止を実施しないとみられている。

トランプ氏は今回、TikTokについて立場を一変させた形になった。次期大統領はこれまでTikTok禁止を支持していたものの、最近では同アプリへの「温かい気持ち」を表明し、昨年の大統領選期間には、自身の動画がで数十億回視聴されたと自慢している。

一方、ジョー・バイデン政権はすでに、任期の最後にこの法律を施行しないこと表明しており、代わりに次期トランプ政権に対応を委ねる意向を示している。

大統領令は施行後の法律を変更できるのか

一方この問題はすでに、重要な国家安全保障問題をめぐり、次期大統領と共和党員との間で亀裂を生んでいる。次期国務長官に指名されたマルコ・ルビオ氏は、禁止を声高に支持していた。

ルビオ氏は昨年4月、「TikTokは中国共産党の力と影響力を、私たちの目の前でこの国に拡大させた」と主張した。しかし、トランプ次期大統領の方針を支持するかを問われた際には、次期大統領に従う姿勢を見せた。

ルビオ氏は先週、「もし国務長官に承認されれば、大統領のために働く」と米メディア「パンチボウル」に語っている。

一方、上院情報委員会の委員長を務めるトム・コットン議員(アーカンソー州選出)は、TikTokのサービス維持を支援する企業は法律を破ることになると述べ、トランプ氏と異なる姿勢を見せた。

トランプ氏の発言後、コットン氏はソーシャルメディアに、「TikTokをホスト、配信、サービス提供、またはその他の方法で支援する企業は、司法省だけでなく、証券法や株主による訴訟、州の司法長官の下で、数千億ドルの破滅的な責任を負う可能性がある」と書き込んだ。

法律に反する大統領令は、法廷で争われる可能性がある。

アメリカではまた、複数の州がTikTokを訴えている。このため、たとえ全国的には利用可能でも、地方自治体によって禁止される可能性もある。

米リッチモンド大学のカール・トバイアス教授(法学)は、既存ユーザー向けにはサービスが再開されたものの、ホスティングプラットフォームや、グーグルやアップルが展開するアプリストアといったサードパーティーが、アメリカ国内でTikTokをサポートできるかどうかは依然として不透明だと指摘する。アメリカでは禁止を見越し、これらのストアからTikTokが削除されていた。

トランプ次期大統領は、「トゥルース・ソーシャル」への投稿で企業を法的責任から保護すると約束することで、TikTokが再びアップルやグーグルで利用可能になる道を開いた。

しかし最高裁での審理中、政府側のエリザベス・プレロガー訟務長官は、大統領令が遡及的に法律を変更することはできないと断言した。

審理の中でソニア・ソトマイヨール最高裁判事が「新しい大統領が何をしようとも、企業にとってこの現実は変わらない」と述べたところ、プレロガー氏は「その通りです」と答えた。

トバイアス教授によると、この法律には、企業が国家安全保障問題の緩和を実質的に進展できると大統領が示せれば、禁止を最大90日間延期できる条項が含まれていると説明。しかし、これらの条件が満たされているかどうかは不明だとも教授は述べた。

「トランプ次期大統領ができる最善のことは、議会と協力し、法律に違反する可能性や未解決の問題を残さないことだ」と教授は言い、「実際に大統領令を見るまで、多くのことは分からない」と話した。

(英語記事 TikTok restores service in US after Trump pledge

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c74e34pvkqwo


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