
日本の有名男性アイドルグループ「SMAP」の元メンバーで、複数のテレビ番組の司会を務めていた中居正広氏(52)が23日、同日をもって芸能活動を引退すると発表した。日本のテレビ界有数の人気者だった芸能人が、性暴力疑惑を経て引退するという事態に、日本の芸能界やテレビ業界は大きく揺れている。
中居氏をめぐっては、2023年に女性との間で性加害トラブルを起こし、9000万円の解決金を支払っていたなどと、週刊文春などが昨年末に報じた。これを受けて今月22日までに、すべてのレギュラー番組の放送終了や降板が決まっていた。
週刊誌は、中居氏が女性との性的トラブルを起こした食事会の設定に、フジテレビの社員が関わっていたとも報じている。
17日にはフジテレビの港浩一社長が記者会見を開き、トラブルが起きた直後の2023年6月に事態を把握したと認めた。
フジテレビ社員がスキャンダルを隠蔽(いんぺい)しようとしたのではないかという指摘が広がる中、企業数十社がフジテレビでのコマーシャル放映を次々と見合わせた。
こうした中でフジテレビと親会社フジ・メディア・ホールディングスは23日、臨時取締役会を開き、日本弁護士連合会(日弁連)のガイドラインに基づく第三者委員会の設置を決定したと発表した。
中居氏は同日、個人事務所のホームページに声明を掲載。「本日をもって芸能活動を引退いたします」とし、個人事務所については「残りの様々な⼿続き、業務が終わり次第、廃業することと致します」と説明した。
さらに、「これで、あらゆる責任を果たしたとは 全く思っておりません。今後も、様々な問題、調査に対して真摯に向き合い、誠意をもって対応して参ります。全責任は私個⼈にあります。これだけたくさんの⽅々にご迷惑をおかけし、損失を被らせてしまったことに申し訳ない思いでなりません」と書いた。
トラブルがあった女性に対しては、「改めて、相⼿さまに対しても⼼より謝罪申し上げます」とした。
ファンに対しては、「こんなお別れで、本当に、本当に、ごめんなさい。さようなら・・・」とも書いている。
中居氏は9日にも声明を発表し、「トラブルがあったことは事実」と認めつつ、「手を上げる等の暴力は一切ございません」と強調。「双方の代理人を通じて示談が成立」し、解決済みだと説明していた。しかし、「示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」というコメントが波紋を呼ぶなど、世間の怒りは収まらなかった。
番組降板、コマーシャル差し止め
23日の発表に先立ちフジテレビは17日、港社長の記者会見を開いた。しかし、会見は原則として記者クラブ加盟社の記者のみ参加できる「定例記者会見」の前倒しとして設定され、実際に出席できたのは全国紙やスポーツ紙が加盟する「ラジオ・テレビ記者会」や、参加が認められたNHKと民放テレビ局などに限定された。また、会見の動画撮影が禁止された。
その中で港社長は、トラブルが起きた直後の2023年6月に事態を把握していたと明らかにした。ただ、女性の体調面やプライバシーの保護などを理由に、トラブルについては公表しなかったと説明。事態把握後も、中居氏が出演する番組を継続した。
今後については、弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げる方針を示したが、「日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会ではないと思う」と説明したことから、独立性が担保されるのか不透明だとの批判が上がった。
フジテレビの一連の対応を受け、日産自動車やトヨタ自動車、セブン&アイ・ホールディングスなど企業各社の間で、コマーシャルを差し止める動きが広がった。
また、22日までに、中居氏が出演していたテレビとラジオの、すべてのレギュラー番組の放送終了や降板が決まった。
中居氏はかつて、日本のエンターテインメント業界で絶大な影響力をもっていた芸能事務所「ジャニーズ事務所」に所属し、アイドルグループ「SMAP」のメンバーとして1991年にデビューした。SMAPはヒット曲を出し続け、フジテレビ系で20年間続いた「SMAP×SMAP」をはじめとするレギュラー番組は高視聴率を獲得するなど、国民的な人気グループに成長。グループが2016年末に解散した後の中居氏は、主にバラエティー番組の進行役として活動していた。
日本の芸能界は、長く語られることのなかった性加害の問題に直面せざるを得なくなっている。
BBCは2023年3月、ジャニーズ事務所創業者の故ジャニー喜多川氏による性加害問題を報道。日本国内で多くの反響を呼び、複数の事務所出身者がかつて自分が受けた虐待について公表した。国内の主要メディアも報道を開始し、同5月14日にはジャニーズ事務所が藤島ジュリー景子社長による謝罪の動画と書面を公開した。
同6月までに複数の所属タレントがテレビで問題について言及する事態にもなり、ジャニーズ事務所は「外部専門家による再発防止特別チーム」を立ち上げた。
さらに、ジャニーズ事務所は2023年10月、事務所の「解体」を発表。被害者への補償を担当する会社は社名を「SMILE-UP.」とするとした。さらに同12月には、タレントのマネージメントなどを行う新会社は、社名「STARTO ENTERTAINMENT」になると明らかにした。
SMILE-UP.は、補償手続きを取り仕切るため、元裁判官の弁護士3人で構成する「被害者救済委員会」を設置した。
(英語記事 Star TV host retires as sex scandal rocks Japan industry)