2025年2月11日(火)

BBC News

2025年1月24日

アメリカで生まれた人ほぼ全員に自動的に市民権を与える「出生地主義」の廃止を命じたドナルド・トランプ大統領の大統領令に対し、ワシントン州シアトルの連邦地裁は23日、一時的な差し止めを命じた。

ジョン・クーナー判事は25分間の審理を経て、トランプ氏の大統領令を「あからさまに違憲」と判断。差し止め命令を出した。

「出生地主義」は、憲法修正第14条で確立されていると長年、解釈されている。

トランプ氏は、不法入国者や一時的な国内滞在者を両親として生まれた子どもについて、適用をやめる考えを以前から公言大統領復帰初日の20日、今回の大統領令に署名した

これに対し、ワシントン、アリゾナ、イリノイ、オレゴンの4州が差し止めを求めて訴訟を提起。連邦裁判所に対し、訴えを検討する間、大統領令を一時差し止めるよう求めていた。

この日の審理では、クーナー判事がトランプ政権側の弁護士に向かい、今回の大統領令が起草されているときに「弁護士たちはどこにいたのか」と詰問。大統領令を合憲だとする政権側弁護士の主張を厳しく批判し、「あぜんとさせられる」と言った。

今回の決定により、この大統領令は14日間差し止められ、法的判断を待つことになる。

司法省が裁判所に提出した文書によると、大統領令は来月19日以降に生まれた子どもに適用されることになっていた。

差し止めを求めた4州は、大統領に憲法を修正する権限はないと主張。大統領令が執行されれば、「米市民権を奪われた人々は不法滞在となり、強制退去や拘束の対象とされ、その多くは無国籍になる」とし、州民らが「回復不可能な損害を直ちに被る」と訴えた。

ワシントン州の弁護士レイン・ポロゾラ氏は法廷で、トランプ氏の大統領令はアメリカを「最も暗い章の一つ」に引き戻すものだと述べた。

一方、司法省は各州の訴えについて、一時的な差し止め命令という「特例措置」の理由となるものではないと主張していた。

憲法修正第14条は、1868年に採択され、「アメリカで生まれ、あるいは帰化し、その司法権に属する者はアメリカの市民である」と定めている。南北戦争後に解放されたアメリカ生まれの元奴隷の市民権の問題を解決するものだった。

司法省は、この条文にある「その司法権に属する者」には、不法滞在の市民権をもたない者の子どもは含まれないと主張。今回の大統領令は、「崩壊した移民制度と南部国境で進行中の危機」に対処するというトランプ氏の目標の「不可欠な一部」だとした。

訴えを起こした州によると、2022年にアメリカで不法滞在の母親から生まれた子どもは約25万5000人だった。

専門家らは、出生地主義の変更には憲法の修正が必要で、それには上下両院の3分の2以上の賛成と各州の承認が必要なことから、この問題は最終的に裁判所によって行方が決まるとみている。

政府側の弁護団は、今回の裁判所の判断を不服として上訴する意向。連邦最高裁で審理されるとの見通しを示している。

大統領令の差し止めを命じたクーナー判事は、ロナルド・レーガン大統領(共和党)によって連邦判事に任命され、1981年からワシントン州西部地区の連邦地裁で職務にあたっている。

今回の大統領令をめぐっては、民主党が優勢の他の18州とコロンビア特別区、サンフランシスコ市も別の訴訟を起こしている。また、米自由人権協会(ACLU)も裁判所に異議を申し立てている。

(英語記事 Judge blocks Trump's plan to end US birthright citizenship

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0lz40w3gx5o


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