
アメリカのドナルド・トランプ大統領が、仮想通貨について「よく知らない」と言いながら独自の仮想通貨を発行し、批判を浴びている。
仮想通貨「TRUMP(トランプ)」は、トランプ氏の20日の大統領就任を前に、同氏のソーシャルメディアに登場した。すぐに最も価値の高い仮想通貨の一つとなり、コイン1枚の価値が1日のうちに75ドル(約1万1700円)まで急上昇した。その後、39ドル(約6000円)に下がっている。
こうした仮想通貨は「ミームコイン」と呼ばれ、保有を楽しむことや投機以外には有用性はない。何千種類も存在し、誰でも作ることができる。
大統領の妻メラニア・トランプ氏も、大統領就任式の前夜、自らのミームコインを発行。1コインの価値は一時13ドルになったが、その後に2.7ドルに落ち、時価総額は7億ドル(約1090億円)となっている。
トランプ大統領の仮想通貨発行には、業界内で批判の声が出ている。
トランプ氏は自身の仮想通貨について、「私が始め、大成功したこと以外、よく知らない」と記者団に発言。その後、価値が落ちた。
仮想通貨を取引する「コインコーナー」のダニー・スコット最高経営責任者(CEO)は、「『よく知らない』というトランプの発言は、彼がこの業界をばかにしているという、私の意見を裏付けるものだ。人目を引こうとやっているだけだ」と話した。
ウェブサイト「CoinMarketCap」によると、「TRUMP」コインは時価総額が80億ドル(約1兆2400億円)ほどで、25番目に価値のある仮想通貨となっている。
トランプ氏とそのチームが8割を所有しており、理屈の上では、いまの価格で売却すれば数十億ドルの利益を得る。
デジタル資産リサーチ会社「K33」のアナリスト、デイヴィッド・ジマーマン氏は、「率直に言って、ミームコインとしてはひどい話だ」と言う。ただ、8割のコインを市場で一気に売ることはできないため、投資家は価格の暴落からは部分的に保護されていると、同社のアナリストらは話している。
仮想通貨会社「ラディックス」のダン・ヒューズ氏は、大統領夫妻によるミームコインの発行は、業界のプラス面を損なうと主張。「有名人、特に政治家による発行の動きは、影響力と流動性操作が基本的な価値創造の影をわきに追いやってしまうかもしれないという、仮想通貨市場の懸念すべき傾向を示している可能性がある」とする。
投資会社「コノトクシア」の市場アナリストは、「大統領就任時にこうしたコインを出すことは、潜在的な利益相反に関する懸念を呼び、大統領とファーストレディの威厳を損なう可能性がある」としている。
トランプ氏はこれまでも、仮想通貨を発行している。2022年には、スーパーヒーローのようなポーズをとった非代替性トークン(NFT)を出し、数百万ドルを稼いだ。
仮想通貨業界では、トランプ氏が選挙公約を果たし、業界を盛り上げるのを期待する人が多い。トランプ氏は昨年、アメリカを「地球の仮想通貨の首都」にすると、仮想通貨「ビットコイン」の支持者らに約束した。
(英語記事 'A mockery': Trump's new meme-coin sparks anger in crypto world)