
米首都ワシントン近郊で旅客機と陸軍ヘリが空中衝突した1月29日夜の事故について、捜査当局は31日、ヘリコプターのコックピット・ボイスレコーダー、いわゆるブラックボックスを回収した。ヘリのフライトレコーダーに先立ち、旅客機のレコーダーは国家運輸安全委員会(NTSB)が事故翌日に回収している。
事故は、ホワイトハウスや連邦議会議事堂に近い、ポトマック川の対岸にあるロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港で起きた。事故機は共に川に墜落。当局によると、旅客機の乗客・乗員64人と陸軍ヘリの兵士3人はいずれも死亡した。31日時点で、41人の遺体が川から収容され、28人の身元が確認されたという。
他の被害者の遺体は、旅客機の機体を川底から引き揚げるまでは見つけられないだろうと当局は話している。
連邦航空局(FAA)は同日、空港周辺でのヘリコプターの飛行を停止する措置をとった。事故現場上空の混雑について、当局が懸念を示していた。
NTSBのトッド・インマン委員は、記録装置から水分を取り除き次第、「まもなく」データを抽出できるようになると記者団に説明。「いくつかの手順を踏むだけだ」と述べた。
NTSBによると、衝突の原因はまだ不明。インマン委員は、機体の「本格的な引き揚げ」作業は、米海軍が2月1日に開始する予定だと話した。
ダイバーが川に戻る前に、機体の一部を引き揚げる必要があるという。
当局は、事故機が衝突にどう反応したのかよりよく理解するために、水中にある機体の残骸の位置を特定し、記録していく方針。
インマン氏によると、2日からクレーンを使用して機体の大部分を水中から取り除く作業を開始する。引き揚げ作業は来週いっぱい続くというお。
首都ワシントンのジョン・ドネリー消防本部長は、事故現場で500人以上が24時間体制で作業していると説明した。
記者団からは、一人の航空管制官が単独で、ヘリコプターと飛行機の両方を管理していたという情報があるという質問が出たが、インマン委員はこれについて具体的なコメントは避けた。ただし、事故発生前の72時間を中心に過去数週間にわたる管制官の行動を、詳しく点検する方針を明らかにした。
「その日の人員配置だけでなく、何人がどのような職務を担っていたのか、複数の職務を組み合わせていたのかなどを、もちろん調査する予定だ」と同委員は述べた。
航空管制当局も聞き取り調査を続けている。
記者団は、NTSBのインマン委員に、NTSBがホワイトハウスと連絡を取っているのか尋ねた。
ドナルド・トランプ大統領は31日、事故について証拠を示さないまま、墜落に関与したヘリコプターが「飛んでいた位置が高すぎた」とソーシャルメディアで主張した。
インターネットで公開された交信記録からは、管制官が陸軍ヘリに対して、衝突の数秒前にアメリカン航空機について警告しようとした様子がうかがえる。ヘリコプターの操縦士は旅客機を認識していると応答した様子だが、両機はその直後に衝突した。
トランプ氏はまた、FAAが多様性を重視する人材採用を実施していたことが、安全性の問題につながったかもしれないとほのめかす発言もした。
「我々の仕事は事実を見つけることだ」とインマン委員は述べた。「それより大事なのは、この悲劇が再び起こらないようにすることだ。誰が何を言っているかに関係なく」。
(英語記事 Helicopter black box recovered from Washington DC plane crash site)