
パレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意に基づき、ハマスは1日、人質ににしていた民間人の男性3人を新たに解放した。これを受けてイスラエルはこの日、収監しているパレスチナ人183人を釈放する予定。ハマス系の通信社によると、この日すでに25人を乗せた赤十字国際員会のバスがヨルダン川西岸ラマラ近郊に到着した。
停戦合意が1月19日に発行して以来、ハマスが人質を解放するのはこれで4回目。
ハマスは1日午前、ガザ南部ハンユニスでヤルデン・ビバスさん(34)とオフェル・カルデロンさん(53)を壇上に上げた。集まった群衆や戦闘員に二人が手を振ったのち、ハマスは二人を赤十字国際委員会に引き渡した。赤十字が二人をイスラエル軍に引き渡すと、軍は二人をイスラエル南部の基地へ移動させた。これまでの人質解放と同様の手続きが取られた。
続いてガザ地区北部のガザ市内で、キース・シーゲルさん(65)が同様の手続きでハマスから赤十字へ、赤十字からイスラエル軍へと身柄を移され、イスラエル南部へと帰還した。
イスラエル国防軍(IDF)は、ハンユニスで解放されたカルデロンさんとビバスさんについて、「IDFとイスラエル公安庁(ISA)に付き添われて、境界を越えてイスラエル領内に入った」と発表し、イスラエル南部の受け入れ施設に向かっていると述べた。続いて、シーゲルさんについても同様に発表した。
1月30日の人質解放が混乱を極め、イスラエル側が強く反発したのと対照的に、この日の解放は整然と行われた。
これを受けてイスラエルは、ヨルダン川西岸地区ラマラから約4キロの位置にあるオフェル刑務所から、パレスチナ人収監者の釈放を開始。予定される183人のうち100人以上はガザ地区出身で、約70人が長期刑や終身刑に服していた。誰が釈放されるのかについて詳細は明らかになっていない。
ラマラの西郊に着いた赤十字のバスを大勢が取り囲み、降りてくる人たちを群衆が次々と肩に担ぎあげて歓迎している。
パレスチナ人傷病者がエジプトへ
この日は人質解放と収監者釈放のほか、ガザ地区最南部ラファの検問所を通過して、手当てを必要とするパレスチナ人の傷病者がエジプトへと運ばれた。ハマスが運営する保健省によると、パレスチナ人患者50人がガザからエジプトに入った。
パレスチナの民間人がラファ検問所を通過するのは、2024年5月以来。
パレスチナ人の傷病者を乗せたバスは、検問所で列を作っていた。欧州連合(EU)の文民代表団が、手当てを必要とする人たちの移送を支援するため現地に派遣されている。
ビバスさんの妻子、安否不明
解放されたヤルデン・ビバスさんの妻シリさん(33)と息子アリエルちゃん(5)、同クフィルちゃん(2)はまだ解放されていない。一家4人は2023年10月7日のハマス襲撃でニル・オズ・キブッツの自宅から拉致された。クフィルちゃんは最年少の人質。ハマスは2023年11月に、シリさんと息子2人はイスラエルの空爆で死亡したと主張したものの、イスラエル軍は3人の死亡を確認していない。まだ解放されない3人についてイスラエル軍は、その安否を「非常に心配している」と述べている。
解放されたオフェル・カルデロンさんはイスラエルとフランスの国籍を持ち、子供2人と主にニル・オズから拉致された。子供2人は2023年11月の一時的な停戦の間に解放された。
キース・シーゲルさんは、イスラエルとアメリカの二重国籍で、クファル・アザの自宅から妻エイドリアン(別名アヴィヴァ)さんとともに人質にされた。エイドリアンさんは2023年11月に解放された。
イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領はソーシャルメディア「X」に声明を投稿し、解放された3人の帰還を国全体が「心配し待ちわびた」と書き、「それぞれ一人ずつ、社会復帰と生活再建のための時間を得るべきだ」と述べた。
さらに、安否が懸念されるビバスさんの妻や息子たちの「運命を深く心配している」とも書き、「我々の姉妹たちと兄弟たちが全員戻るまで、我々は気を抜かないし沈黙しない」と表明した。
(英語記事 Freed Palestinian prisoners arrive in West Bank after Hamas releases three Israeli hostages)