2025年2月7日(金)

BBC News

2025年2月3日

アメリカのドナルド・トランプ政権は、「政府効率化省(DOGE)」を率いるイーロン・マスク氏の部下らに、毎年何兆ドルもの政府資金の流れを管理する連邦決済システムへのアクセス権を与えた。米メディアが2日までに報じた。

報道によると、DOGEのメンバーは、何百万人もの国民の非常に個人的な情報にアクセスが許可された。DOGEは政府の省ではなく、政権内のチーム。

アクセス権をめぐっては、DOGEのメンバーと対立した米国際開発庁(USAID)の職員2人が休職に追い込まれたと報じられている。

ホワイトハウスと財務省は、コメントの求めにすぐには応じなかった。

DOGEは、トランプ氏による立ち上げの発表から数日のうちに、連邦政府の支出削減という使命を掲げ、いくつもの政府機関に乗り込んでいる。

この取り組みの実行チームは、マスク氏が結成を支援。自らの会社やシリコンバレーの仲間を呼び寄せた。

こうした取り組みは、財務省やUSAIDなどの機関で混乱を引き起こしているもようだ。マスク氏はこれらの機関を繰り返し、ソーシャルメディアで攻撃の対象にしている。

たとえば、マスク氏は自らが所有するソーシャルメディアのXで、USAIDを「邪悪」と呼び、財務省職員について「毎日、毎時間、法律を破っている」と主張している。

DOGEのメンバーがアクセスした財務省の部門は、社会保障制度のようなプログラム向けの約6兆ドルの支払いを取り扱っている。また、政府職員の給与の支払いや、議会が割り当てた政府資金の分配も担っている。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、この支払いシステムへのアクセスは、スコット・ベッセント財務長官が1月31日に許可した。この日、財務省のベテラン高官デイヴィッド・レブリク氏が休職とされ、突然退職した。同氏は「連邦政府全体に代わって資金を送る同省の決済システムに、マスク氏の部下を関わらせる」ことに強く抵抗していたとされる。

支払いシステムに携わるのは通常、財務省の一握りの職員だけとなっている。

民主党議員から懸念の声

ロン・ワイデン上院議員(民主党、オレゴン州)は、ベッセント氏宛てに書簡を出し、「率直に言って、これらの支払いシステムの失敗は許されない。政治的動機に基づくいかなる干渉も、私たちの国と経済に深刻なダメージをもたらす危険性をはらんでいる」と警告。

「支払いシステムの不適切な管理がアメリカの信用と信頼を脅かす恐れを懸念している」と指摘した。

世界中に何十億ドルもの支援金を分配するUSAIDでも、マスク氏の一派が混乱を引き起こしている。USAIDのウェブサイトは今月1日から機能しておらず、Xのアカウントも停止しているとみられる。

米紙ワシントン・ポストは2日、トランプ政権がUSAIDのセキュリティー担当の職員2人を休職にしたと報じた。この2人は、厳重管理施設への立ち入りを求めたDOGEのメンバーに抵抗したとされる。

こうした施設は、高度の秘密情報を保管・共有しており、立ち入りが厳しく制限されているものが多い。

DOGEのケイティ・ミラー報道官は、「適切な権限チェックなしに秘密情報にアクセスしてはいない」とXに書いた。

こうしたなか、さまざまな連邦政府機関の職員らが、トランプ氏が就任以来署名した大統領令に対応している。

職員らに対しては、人事管理局が、多様性への取り組みを「偽装」しようとしている同僚について報告するよう求める手紙を出している。また、一定期間の給与を支給する退職制度を提示しているが、多くの職員はこれに疑いの目を向けている。

各省庁は大統領令に従い、ウェブサイトからの「多様性、公平性、包摂性(DEI)」やトランスジェンダー、性的少数者(LGBT)に関する記述の削除を急いでいる。

疾病対策センター(CDC)のウェブサイトからは、そうした情報が大量に消えた。CDCは、検証された信頼できる科学的・医学的情報を、研究者や医療従事者、一般の国民向けに提供する役割を担っている。

LGBTの成人および未成年向けの健康に関する情報や、エムポックス(サル痘)のワクチンに関するリンクは現在、壊れたページにつながっている。

DEIプログラムは、さまざまな背景がある人々の職場参加の促進を目的としている。これを支持する人々は、人種的少数派など特定グループに対する歴史的および現在進行の差別や不均衡を正すものだと主張している。一方、批判する人々は、プログラム自体が差別的になり得るとしている。

(英語記事 Musk team given access to sensitive federal payment system - reports

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cn8yzl5qqjzo


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