
マルコ・ルビオ米国務長官は2日、中米パナマの首都パナマ市で同国のホセ・ラウル・ムリノ大統領と会談し、同国が管理権を持つパナマ運河について、中国の「影響と支配」を「即時に変更」するよう求めた。
ルビオ国務長官は、パナマが行動しなければ、両国間の条約に基づく権利を保護するために必要な措置を講じると警告した。
ドナルド・トランプ米大統領はかねて、運河の管理権を取り戻すと誓っている。
ムリノ大統領は記者団に対し、アメリカ軍が運河を奪取するという深刻な脅威はないとみていると語った。その上で、中国の影響に関するトランプ氏の懸念に対処するため、技術レベルの話し合いを提案したと述べた。
しかし、トランプ大統領が運河を取り戻すと誓ったことは、パナマで大きな反発を引き起こした。パナマ市では1月31日、抗議者たちがトランプ氏とルビオ氏の人形を燃やした。
また、別のデモに対して警察が催涙ガスを発射し、人々を散らした。衝突は小規模だったが、トランプ氏の方針への抵抗は多くの人が感じている。
ムリノ大統領は30日、運河の所有権の問題についてルビオ氏と議論することはないと述べた。
「私は運河について交渉することも、交渉プロセスを開始することもできない。それは確定しており、運河はパナマのものだ」と、ムリノ氏は述べていた。
トランプ大統領はこの運河について、中国兵が運営していると根拠を示さずに主張をしている。また、アメリカの船舶が他国よりも不当に高い料金を請求されているとも主張しているが、そのような行為は条約に違反する。
「非常に侮辱された」とパナマ市民
全長約82キロメートルのパナマ運河は、中央アメリカの一部を横断して大西洋と太平洋を結ぶ交通の要衝。アメリカはこの運河を建設後、1977年まで運河地帯の管理権を維持していた。その後、共同での管理期間を経て、1999年にパナマが全面的に管理するようになった。
近年は、中国企業が運河近くの港やターミナルに多額の投資を行っている。香港に拠点を置く企業が、運河の入り口近くにある5カ所の港のうち2カ所を運営している。
しかしトランプ大統領が、運河を奪取するために軍事行動を排除しないと述べるなど強硬な姿勢を示していることで、パナマでは強い愛国心が呼び起こされている。
パナマ市在住のマリさんは、「ばかげている」と語った。マリさんは名字の公表を希望しなかった。
「トランプ大統領は条約を尊重しなければならないし、条約には、我々が中国運営の港を持てないとは書かれていない」とマリさんはBBCに語り、アメリカの港や都市にも中国が投資していると指摘した。
観光客や、パナマ帽や土産品を売る屋台に囲まれながらマリさんは、多くのパナマ市民が過去のアメリカによる運河支配を強く記憶しており、再びその状況に戻りたくないと説明した。
「当時はアメリカのルールに従わなければ、運河地帯に入ることはできなかった。その境界を越えた瞬間、そこはアメリカだった」
「私たちは自分の国の中で権利を持っていなかった。再びそういった状況を受け入れることはない。(中略)トランプ氏の言葉には、非常に侮辱されたと感じている」
一部のパナマ市民は、軍事力行使を排除しないというトランプ大統領の姿勢に疑念と恐怖を感じている。これはアメリカが1989年、パナマの事実上の支配者だったマヌエル・ノリエガ将軍を追放するために同国に侵攻した記憶を呼び起こす。この紛争は数週間続き、パナマ軍は早々に圧倒された。
元パナマ国会議員のエドウィン・カブレラ氏は、「ノリエガが、アメリカが侵攻すれば野党の指導者全員を殺すと言ったとき、私は野党の政治指導者だった」と、運河の太平洋側の閘門(こうもん、ロック)でBBCに語った。
「爆弾の音を聞き、人々が死んでいくのを見た。トランプ大統領とルビオ氏は、私たちを侵略するという言葉だけを残した」
「21世紀に再びそれを経験したくない。帝国主義を再び経験したくない。パナマはアメリカと中国という二つの大国の戦争の中で、空を見上げているだけだ」
ルビオ氏はアメリカ初のヒスパニック系国務長官だが、中米の一部の指導者や中国に対する強硬な立場で知られている。パナマは多くの問題でアメリカと緊密に協力しているが、ルビオ国務長官の訪問は、アメリカが自国の裏庭と見なす地域で中国の投資を受け入れる国々を容認しない姿勢を示すものだ。
ルビオ氏はパナマで、中国が港での利益を利用し、紛争や貿易戦争の際にアメリカの商船や軍艦を阻止する可能性があると主張した。
ルビオ氏は先週に出演した「メガン・ケリー・ショー」で、「中国は、パナマ運河の交通を妨害したいと思えばそれができる。それは事実だ。(中略)それがトランプ大統領が提起している問題であり、私たちはその問題に取り組むつもりだ。そのような状況は続けられない」と述べた。
パナマ市民の間では、運河の所有権に対する圧倒的な支持がある。一方で、自国の指導者に懐疑的で、水路からの利益が十分に国民に行き渡っていないと指摘する声もある。
パナマ市の旧市街地区のホテルで働くアンドレ・ハウエル氏は「つまり、アメリカとドナルド・トランプが運河を取り戻したいということだ。それが私たちがいうところの原因と結果だ」と語った。
「パナマ政府は運河を正しく管理していない。パナマ人には利益がない」
(英語記事 Rubio demands Panama 'reduce China influence' over canal