2025年2月11日(火)

BBC News

2025年2月4日

イギリスのキア・スターマー首相は3日、アメリカのドナルド・トランプ大統領が欧州連合(EU)に関税の脅しをかけたことをめぐり、「(イギリスは)アメリカとEUのどちらかを選ぶわけではない」と述べた。

トランプ氏は先週末、カナダとメキシコへの25%の関税措置を発表EUに対しても同様の措置を取ると表明したが、イギリスとは合意を「まとめる」可能性があるとした。カナダとメキシコに対する関税はその後、発動が停止された

スターマー氏はこの日、ベルギー・ブリュッセルを訪れ、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長と会談し、EU首脳らとの会合に出席した。

現地での記者会見では、アメリカを味方にすることでEUとの関係強化に水を差すことにならないかと問われ、どちらとの関係もイギリスにとっては重要だと、スターマー氏は返答。

「私に言わせれば、それは今に始まったことではなく、これまでも常にそうだったし、これからも何年もそうなるだろう」と述べた。

また、アメリカとの関税交渉は「初期段階」だとし、「オープンで強力な貿易関係」を支持するとした。

NATO事務総長の発言

ルッテ事務総長には、アメリカとEUの緊張関係についての質問が出た。ルッテ氏は「同盟国の間にはいつも何かしら問題がある」としたうえで、だからといって「抑止力を強く保つという私たちの集団的な決意を阻害するものではない」と述べた。

ウクライナについて問われると、NATOは「支援を維持するだけでなく、さらに強化し続ける」必要があると、ルッテ氏は主張。ウクライナが「強い立場」でロシアと交渉できるようにすることが大事だとした。

ルッテ氏はまた、NATO加盟各国が国内総生産(GDP)の2%を防衛費に費やしても、「私たちの安全を守るのに十分ではない」と説明。資金の増強が喫緊の課題だとした。

NATOはすべての加盟国に対し、GDPの少なくとも2%を防衛費として支出するよう求めている。だが、加盟32カ国のうち23カ国しか、これを達成していないとされる。

スターマー氏は、イギリスの支出比率は2.3%だとし、政府として近く、2.5%にするための「道筋」を示すとした。

イギリスの難しい立場

スターマー首相はこの日、欧州理事会の夕食会で演説。イギリスとヨーロッパの軍事協力強化を呼びかけた。具体的には、欧州全域での軍の移動や物流の改善、研究開発の強化、産業面での連携の深化などを挙げた。

また、外国の脅威や妨害行為から自国を守るため、協力を強めるべきだと主張した。イギリスは先月、海底ケーブルの近くでスパイ船が発見されたことを受け、ロシアに警告を発している。

今回のブリュッセル訪問は、スターマー氏にとっては防衛問題が主なテーマだが、イギリスとEUの関係を「リセット」する取り組みの一部でもある。

英政府はEUとの関係強化を望んでいる。一方で、それがアメリカを怒らせ、イギリスが貿易戦争に巻き込まれる危険性がある。

EUも同じように、スターマー氏が欧州諸国ではなくアメリカの側に立つことに、反発するかもしれない。

英首相官邸はこれまで、スターマー氏がトランプ氏を信頼しており、両者は「早い段階で実に建設的な対話」をもったとしている。

官邸の報道官は、「私たちは大西洋の両岸に利益をもたらす、公平でバランスの取れた貿易関係を維持している」と説明。

「それは約3000億ポンド(約57兆8000億円)の価値があり、私たちは互いにとって最大の投資国となっている。それぞれの経済への投資額は1.2兆ポンド(約231兆円)に上っている」とした。

(英語記事 UK not choosing between US and EU, says Starmer

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1lv72l14l0o


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