
ドナルド・トランプ米大統領の指示のもと連邦政府の複数機関を廃止するなど、さまざまな変化を実施している大富豪イーロン・マスク氏は22日、連邦政府職員に対して、「前の週にしたこと五つ」を箇条書きにしてメールするよう指示し、従わなければ解雇すると告げた。これに対して、一部の政府機関トップがマスク氏のメールに従わないよう職員に指示するなど、混乱が生じている。
連邦捜査局(FBI)、国務省、国防総省などの省庁は、マスク氏のメールに返答しないよう職員に指示した。他方、返答するよう指示した省庁トップもいれば、今後さらに指示があるまで返信を待つよう指示した省庁もある。
マスク氏は、24日までに返答がない場合は、従業員が辞職したものとみなされるとしている。
トランプ大統領は、マスク氏のこのメールについてまだコメントしていない。 マスク氏率いるホワイトハウス内チーム「政府効率化局(DOGE)」が政府支出を大胆に削減しようとするなか、混乱が高まっている。
22日夕方に数百万人の連邦職員に送られたメッセージに先駆けて、マスク氏が自身のソーシャルメディア「X」に、個々の政府職員が「先週何をしたのか理解するためのメールをまもなく受け取る」と投稿していた。
BBCが入手した電子メールのコピーでは、従業員らは機密情報を漏らない形で、過去1週間の成果を5点の箇条書きで説明するよう求められていた。
連邦政府の人事管理局(OPM)は、このメッセージが本物だと認めた。
マスク氏はソーシャルメディアで、「返答しない場合は辞任とみなされる」と主張したが、職員へのメールには、回答しなかった場合に雇用状況に影響が出るかどうか書かれていなかった。
新たにFBI長官に就任して間もないカシュ・パテル氏は22日遅くに、「あらゆる対応を中断」するよう指示するメールを職員に送った。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースが入手したメールによると、パテル氏は、「FBI職員は、OPMから情報提供を求める電子メールを受け取ったかもしれない」、「FBIは、すべての(人事)審査プロセスを長官室を通じて仕切っている。FBIは、FBIの手順に従って審査を実施する」と述べていた
国務省も同様のメールを職員に送り、指導部が省庁を代表して対応すると述べた。ティボール・ナジ管理担当次官代理は、「省内の指揮系統を外れて、自分の行動を外部に報告する義務は、職員には一切ない」と説明している。
国防総省も職員に対し、「必要な場合、国防総省はOPMから受け取った電子メールへの返答を調整する」と伝えた。
報道によると、国土安全保障省と連邦緊急事態管理庁(FEMA)も、職員に同様の指示を出した。
司法省の高官は22日夕、職員宛てのメールで「報道によると、問題のメッセージは連邦政府全体の職員に配布されたようだ」と述べた。このことから、OPMのメールが多くの政府機関にとって予想外だったことがうかがえる。
この高官からのメールには、「現時点では、あのメッセージがスパムまたは悪意あるものだと考える理由はない」と付け加えられている。
この司法省高官は22日夜に、OPMからのメッセージが「正当なもの」で、「従業員は要求された通り、指示に従うつもりでいるべきだ」という追加のメールを送っている。
また、「回答には、機密情報や機密扱いの情報を含めないこと。回答の内容について質問がある場合は、上司に連絡すること」 、「追加の指示や情報が届いた場合は、必要に応じて全従業員に通知する」といった 警告も添えられていた。
報道によると、運輸省、シークレットサービス(大統領警護隊)、国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁などは、職員に指示の順守を促したという。
一方、 国家安全保障局(NSA)、内国歳入庁(IRS)、海洋大気庁(NOAA)などは、今後の指示を待つよう職員に呼びかけた。
OPMは、この措置が免除される職員がいるかどうかというBBCの問い合わせに、すぐに回答しなかった。
連邦政府職員の最大労組、連邦政府職員連盟(AFGE)は、このメッセージを「残酷かつ無礼」だと批判し、提訴すると警告した。
この週末、業務用の電子メールにアクセスできなかった可能性のある約300万人の連邦政府職員に、このメッセージがどのような影響を与えるかは不明だ。 消費者金融保護局(CFPB)などでは、2月に休職扱いとなった職員もいる。
このメッセージは、トランプ大統領がソーシャルメディアでマスク氏の取り組みをたたえた上で、「もっと積極的になってほしい」と書いてから数時間後に届いた。
下院行政監視政府改革委員会のジェリー・コノリー民主党筆頭委員(ヴァージニア州)は、マスク氏の指令を厳しく批判する書簡を、OPMに送った。
コノリー下院議員は書簡の中で、「週末に送られた浅はかな電子メールに連邦政府職員が反応しなくても、辞職に当たらないと」、OPMは「直ちに明確にすべき」だと述べた。
「この脅しは違法かつ無謀だ。マスク氏は、国民の政府とその献身的な公務員に、残酷かつ恣意(しい)的な形で混乱をもたらし続けており、今回の件はその最新の一例だ」と、議員は批判した。
一方、 共和党議員の大半は、マスク氏とその幅広い取り組みを擁護してきた。
マイク・ローラー下院議員(ニューヨーク州)は23日、米ABCニュースに対し、マスク氏の取り組みは「連邦政府のあらゆる省庁や機関に対する包括的かつ精密な監査」だと語った。
しかし、ジョン・カーティス上院議員(共和党、ユタ州選出)は、DOGEの最終目標を支持すると述べながらも、マスク氏のやり方を批判した。
「イーロン・マスク氏に一言言えるなら、こう言いたい。どうかわずかにでも、思いやりをもって取り組んでもらいたい。相手は生身の人間だ。本当の人生で、住宅ローンだ」と、カーティス議員はCBSニュースに話した。
(英語記事 Key US agencies tell staff not to answer Musk email on what they did last week