
バーンド・デブスマン・ジュニア(米ホワイトハウス)、マックス・マッツァ
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は24日、アメリカのドナルド・トランプ大統領と米ホワイトハウスで会談し、ウクライナのいかなる和平合意も安全への保証が伴わなければならないと述べた。
首脳会談後の共同記者会見でマクロン氏は、「この和平はウクライナの降伏であってはならない。保証のない停戦であってはならない」と発言した。
一方、トランプ氏は、安全の保証については触れず、ウクライナの平和を確保するための費用と負担は、アメリカだけでなく欧州各国も背負わなくてはならないと述べた。
これを受けてマクロン氏は、「安全のための負担をより公平に分ける」必要性を欧州は理解していると説明。ロシアによるウクライナ侵攻開始から3年となるこの日の会談が、前向きの道筋を示したと付け加えた。
会談で両首脳は終始、温かい言葉を交わした。だが、大統領執務室での記者団とのやりとりや、40分間の記者会見の中では、ウクライナでの戦争の終結に関して、いくつかの明確な相違点が浮かび上がった。
その一つが、和平合意に安全の保証を盛り込むかどうかだった。また、次のステップがどんなものになるかをめぐっても、考えの違いが表面化した。
トランプ氏は、可能な限り早期の停戦を望むと主張。停戦が合意されれば、自らロシアを訪問し、ウラジミール・プーチン大統領に会うと付け加えた。
これに対しマクロン氏は、もっと慎重な進行を提案。停戦を経て、ウクライナを長期的に守るための明確な保証を含んだ広範な和平合意へと進むべきだとした。
マクロン氏は、「私たちは迅速な和平を望んでいるが、もろい合意は望んでいない」と訴えた。
両首脳の意見が一致した点もあった。いかなる和平合意も、欧州平和維持軍のウクライナ派遣を含むべきだという考えだった。
マクロン氏は米大統領執務室で、「(平和維持軍は)前線には配置されない。いかなる紛争でも当事者にはならない。和平が順守されるために派遣される」と述べた。
トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領がそれを受け入れるだろうとの見通しを表明。「その点について、彼に聞いた。彼は何の問題もない」と話した。
マクロン氏は、トランプ氏がここ数週間、プーチン氏と関わろうとしていることを称賛し、トランプ氏にはそうするだけの「十分な理由がある」とした。
トランプ氏は先週、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼んだが、プーチン氏に対しては同じ言葉を使っていない。プーチン氏と電話で協議した後には、同氏と会談する予定だと説明。「いつ話をするかはわからない」、「どこかの時点でプーチン大統領と会うだろう」と述べた。
欧州の対応
ゼレンスキーはこの日、「ウクライナ人の絶対的な英雄主義の3年」に関する報道発表文を出し、各国・国際機関の代表らが参加するイベントをキーウで開催。「今年中にこの戦争を終わらせることを願っている」と述べた。
イギリス、ドイツ、日本などの首脳はオンラインで発言した。アメリカ代表の姿はなかった。
ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領は、ロシアとアメリカの関係が最近、温まりつつあることに言及。「ロシアはホワイトハウスで、自分たちの主張を聞いてもらう耳を獲得したかもしれない。だが、正当性はみじんも獲得していない」と述べた。
欧州委員会ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は出席者らに、「私たちは(ウクライナへの)武器と弾薬の輸送を加速させなければならない」と呼びかけた。そして、この戦争は依然として「ヨーロッパの将来にとって最も重要かつ重大な危機」だと語った。
同じく24日には、米ニューヨークで国連総会が開かれ、欧州連合(EU)とイギリスが起草した、侵攻開始3年に合わせた決議案が採択された。「ウクライナの主権、独立、統一、領土保全に対する国連の関与」を改めて確認する内容。
アメリカはこの決議案に反対。ウクライナの領土保全に触れず、ロシアの侵攻を「紛争」と呼ぶ独自の決議案を提出した。
この日はまた、EUとイギリスがロシアに対する新たな制裁措置を決めた。EUの制裁は、ロシアが侵攻を開始して以降で16回目。ロシアのアルミニウム輸出や、制裁回避のために使われているとされる「影の船団」を対象としている。
イギリスの制裁は、ロシア軍で使われている工作機械や電子機器、北朝鮮の国防相を対象にしている。この人物は、北朝鮮兵1万1000人超をロシアに戦争支援目的で派遣したとされている。
(英語記事 Peace must not mean surrendering Ukraine, Macron says alongside Trump)