
ハフサ・ハリル記者、ヴィタリー・シェフチェンコBBCモニタリング・ロシア編集長
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は24日、同国が権益をもっている希少鉱物をアメリカに供与することに前向きな姿勢を示した。ロシアが占領しているウクライナの希少鉱物も含まれるとした。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ウクライナに対して繰り返し、支援の引き換えとして鉱物の一部を供与するよう要求している。
プーチン氏は24日の国営テレビのインタビューで、ロシアの「新領土」での採掘などの共同プロジェクトにおいて、アメリカに鉱物資源を「供与」する用意があると述べた。「新領土」は、ロシアが3年前に本格侵攻を開始して以来、占領を続けているウクライナ東部の一部を指す。
この提案では、両国が価格を安定させるため、アルミニウムの採掘とアメリカへの供給で協力する可能性もあると、プーチン氏は付け加えた。
プーチン氏はインタビューで、ウクライナの鉱物資源を手に入れようとしているトランプ氏に反対する考えを表明。一方で、鉱物採掘企業などの「外国のパートナー」とは協力する用意があるとした。
プーチン氏は、希少鉱物に関するアメリカとウクライナの取引について懸念してはいないと主張。「強調したいのは、(ロシアには)間違いなく、この種の資源がウクライナよりもかなり多くある」と述べた。
また、「新領土に関しても同じだ。いわゆる新領土は、歴史的に私たちの領土で、ロシア連邦に返還されたが、ここにも外国のパートナーを誘致する用意がある」と付け加えた。
プーチン氏はさらに、シベリアのクラスノヤルスクで、ロシアとアメリカがアルミニウム生産で協力する可能性を示唆した。同地では、ロシアのアルミニウム・メーカーのルサールが、同社最大の製錬所を構えている。
プーチン氏のこうした発言は、ロシアの天然資源に関する閣議が開かれたあとで出た。
クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は25日、プーチン氏の提案について、「かなり広範な展望」を開いたと記者団に説明。アメリカはレアアース(希土類)を必要とし、ロシアは「それをたくさん」持っていると付け加えた。
ロシアが天然資源を自らが抱えていることに大きな誇りを持っていることを考えれば、プーチン氏がアメリカに鉱物を入手する機会を提供することは、目を引く動きだ。プーチン氏は2023年、西側諸国、特にアメリカが、ロシアの天然資源を入手するためにロシアを「解体」しようとしていると非難した。
トランプ政権は、ウクライナに鉱物資源を供与する取引に応じるよう圧力を強めている。
ウクライナは、世界の重要な原材料の約5%が同国にあると推定している。しかし、ロシアがウクライナに侵攻してからの3年間で、鉱床の一部はロシアに接収されている。
トランプ氏は今月、アメリカのウクライナへの軍事・経済援助は約5000億ドル(約74兆円)に達しており、アメリカが価値あるウクライナの鉱物を入手できるようにしたいと述べた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、この金額は正しくないとしている。また、いかなる和平合意にも、安全保障への保証を含めたい考えだとされる。
ウクライナのオルガ・ステファニシナ副首相(欧州・大西洋統合担当)は24日、こうした取引に関する交渉は「非常に建設的で、ほぼすべての重要な詳細が決定した」と述べた。
欧州連合(EU)も、アメリカとは異なるアプローチで、ウクライナとのパートナーシップを提案している。産業戦略担当のステファン・セジュルネ欧州委員は、ウクライナの鉱物にアクセスするこの取り組みを「ウィン・ウィン」だとしている。
(英語記事 Putin offers Russian and Ukrainian rare minerals to US)