2025年3月23日(日)

BBC News

2025年3月2日

ゼレンスキー大統領

ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と2月28日に激しい口論を繰り広げた後、欧州各国の首脳らは次々とゼレンスキー大統領を支持した。

ドイツ、フランス、スペイン、ポーランド、オランダなど複数の国の首脳は、ソーシャルメディアにウクライナを支持するメッセージを次々と投稿した。ゼレンスキー大統領はその一つ一つに直接返信し、支持に感謝した。

ゼレンスキー大統領は、2日にキア・スターマー英首相が主催する首脳会談に出席するため、前日にロンドン入りした。

イギリス首相官邸は、スターマー首相が「ウクライナへの揺るぎない支持を維持している」とコメントした。

トランプ大統領は28日、報道陣の面前でゼレンスキー大統領と激しく口論した。その異例の事態の中でトランプ氏は、ウクライナがロシアと合意しないならば、アメリカは「手を引く」と告げた。

さらにトランプ氏は、ロシアによる侵攻と戦っているウクライナが、アメリカからの軍事的・政治的支援に十分感謝していないと非難。ゼレスキー大統領が「第3次世界大戦のギャンブルをしている」と繰り返した。

この衝突を受けて、欧州各国の首脳がウクライナへの支援メッセージを相次いでソーシャルメディアに投稿した。さらに、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの首相らも同様に、ウクライナ支持を表明した。

ゼレンスキー大統領は一つ一つのメッセージに、「支援してくださって感謝します」と返信した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「侵略者がいる。それはロシアだ。被害者がいる。それはウクライナだ。私たちが3年前にウクライナを助け、ロシアに制裁を課したのは正解だったし、それを継続することも正解だ」と投稿した。

オランダのディック・スホーフ首相は、オランダが「これまで以上に」ウクライナを支持していると書き、「我々は永続的な平和と、ロシアが始めた侵略戦争の終結を望んでいる。ウクライナとその国民のため、そしてヨーロッパのために」と付け加えた。

退任を控えているドイツのオラフ・ショルツ首相は「ウクライナ国民よりも平和を望んでいる人はいない」と書いた。ドイツのフリードリッヒ・メルツ次期首相は「親愛なるウォロディミル・ゼレンスキー、私たちは良い時も厳しい時も、ウクライナを支えている。この恐ろしい戦争において我々は決して、侵略者と被害者を混同してはならない」と書いた。

スペインのペドロ・サンチェス首相は「ウクライナよ、スペインはあなた方と共に立っている」と書いた。ポーランドのドナルド・トゥスク首相は「親愛なるゼレンスキー、親愛なるウクライナの友人たちよ、あなたたちは孤独ではない」と書いた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は英語ウクライナ語で、ゼレンスキー大統領に対し、「あなたの威厳はウクライナ国民の勇気を尊重するものだ。強く、勇敢に、恐れを知らずにいてください。親愛なるゼレンスキー大統領、あなたは決してひとりではありません。私たちは引き続きあなたと一緒に、公正で持続的な平和のために働き続けます」と書いた。

欧州以外ではカナダのジャスティン・トルドー首相が、「ロシアは違法かつ不当に、ウクライナを侵略した。もう3年間、ウクライナの人たちは勇敢に、そして忍耐強く、戦ってきた。民主主義と自由と主権のための彼らの戦いは、私たち全員にとって意味のある戦いだ。ウクライナとウクライナの人たちが公正で持続的な平和を実現できるよう、カナダは支え続ける」と書いた。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、「オーストラリアは3年間、ロシアの残酷な侵略から自国の主権を守ろうと苦闘するウクライナの勇敢な人たちを誇りをもって支え、そして国際法を支えてきた」と書いた。

このほかにもオーストリア、ベルギー、クロアチア、デンマーク、エストニア、フィンランド、アイルランド、ラトヴィア、リトアニア、ルクセンブルク、モルドヴァ、ルーマニア、スウェーデン、スロヴェニアなど、各国の政治指導者からもウクライナへの支援メッセージが寄せられた。

他方、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、トランプ大統領への支持を表明し、「強い者は平和を作り、弱い者は戦争を作る。トランプ大統領は今日、勇敢に平和のために立ち上がった。たとえそれが、多くの人にとって受け入れがたいことだったとしても。ありがとう、大統領!」と書いた。

ゼレンスキー氏、SNSに連投

ゼレンスキー大統領はトランプ大統領と衝突した後、予定より早くホワイトハウスを離れた。しかし、その後まもなくソーシャルメディアで、「アメリカありがとう。支援してくださってありがとう。今回こうして訪問させてもらってありがとう。大統領、連邦議会、アメリカ国民の皆さん、ありがとう」と書いた。

ゼレンスキー氏はさらに、「ウクライナには公正で持続的な平和が必要で、私たちはまさにそのために働いている」と書いた。

ゼレンスキー氏は3月1日にも続けて、「我々の生存を助けてくれたアメリカの支援は不可欠だった」など、アメリカへの謝意を連投。「タフな対話をよそに、私たちは引き続き戦略的パートナーだ。ただし、お互いの共通の目標を本当に理解するためにも、私たちは相手に対して正直で率直でなくてはならない」と書いた。さらに、「我々にとって、トランプ大統領の支援を得ることが不可欠だ。(トランプ氏は)この戦争を終わらせたいと思っている。しかし、誰より平和を求めているのは私たちだ。ウクライナでこの戦争を直接経験しているのは、私たちだ。これは私たちの自由のための戦い、私たちの存続そのもののための戦いだ」と書いた。

続けてゼレンスキー氏は、トランプ氏が提案している鉱物資源協定に「署名する用意がある」としたうえで、「安全の保証がない停戦はウクライナにとって危険」だとして、「ロシアに対するウクライナの姿勢を変えることはできない。ロシアは私たちを殺している。ロシアは我々の敵だ。それが、私たちの直面する現実だ」と指摘。「平和が実現するのは唯一、安全が保証されると我々が承知している時、この国の軍隊が協力で、パートナーたちが私たちを支援してくれている時だけだ」と書いた。

これに先立ちゼレンスキー氏は1日、メッセンジャーアプリ「テレグラム」にも、「ウクライナの声が聞かれ、戦中も戦後も誰もそれを忘れないことが、我々にとって非常に重要だ」と投稿した。 「ウクライナの人々にとって、自分たちは孤立していないと知ること、自分たちの利害が世界のあらゆる国、あらゆる場所で代表されているということを知るのは、大事なことだ」とも、大統領は付け加えた。

ゼレンスキー氏は28日にはホワイトハウス訪問後に米FOXニュースのインタビューで、トランプ大統領との対立は「お互いにとって良くない」が、関係を修復できると思うと話していた。 両首脳は、ウクライナの希少鉱物資源へのアクセスをアメリカに認める協定にまもなく調印するとされていたものの、その直前にマスコミを前にした場で激しい口論になり、協定調印も共同記者会見も中止になった。

28日の会談は、同席していたJ・D・ヴァンス米副大統領がゼレンスキー大統領に対し、戦争は外交によって終わらせなくてはならないと告げたことをきっかけに、険悪な雰囲気になった。

ゼレンスキー大統領は、ロシアが全面侵攻を始める3年前、ロシアがウクライナ東部で分離勢力に武器を提供していた当時の2019年の停戦合意に触れた上で、ヴァンス氏は「どういう外交」を意味しているのかと尋ねた。

これを機に副大統領は、ゼレンスキー氏が無礼で、自説をアメリカの報道陣の前で展開しているのだと非難した。

こうした事態を受けて、イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、ウクライナ問題についてアメリカ、欧州、同盟国の間で「速やかに」首脳会談を開くよう呼びかけた。

イギリスのスターマー首相が首相官邸で2日に主催する協議では、将来的なウクライナ和平協定の順守をどのように確保するか、欧州各国首脳が話し合いを進める見通し。

和平履行を確保するための取り決めには、アメリカ軍が監視や情報や戦闘機などを提供し、ロシアを抑止することが不可欠だと、スターマー首相は考えている。

(英語記事 European leaders back Zelensky after Trump clash

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4gm25m59l1o


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