
イギリスのキア・スターマー首相は2日、ロンドンで開かれた欧州首脳会合の終了後、イギリスとして16億ポンド(約3030億円)を拠出し、ウクライナにミサイルを供与すると発表した。
この措置により、ウクライナはイギリス・北アイルランドのベルファストで製造される防空ミサイル5000発以上を入手できるようになる。
スターマー氏は会合後の記者会見で、「現時点で重要インフラを守るために不可欠で、いずれ平和が実現した際に平和を守るよう、ウクライナを強化するためにも不可欠」なことだとして、「私たちは過去の過ちから学ばなければならない」と述べた。
スターマー氏が「過去の過ち」として触れたのは、ウクライナ東部での紛争をめぐって10年前にロシアのウラジーミル・プーチン大統領とウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(当時)との間で交わされた「ミンスク合意」。のちにプーチン氏が違反した。
スターマー氏は、ウクライナが強い立場から和平交渉に臨むことが必要で、先進的な防空ミサイルはそれを可能にするとした。
英国防省によると、この措置は北アイルランドで200人分の雇用を創出し、国内全体で700人分の雇用を直接支援することになる。軽量多目的ミサイル(LMM)を5000発以上製造し、ベルファストにあるタレス社の工場における製造量が3倍になる。
LMMは、ロシアによるドローン(無人機)やミサイルを使った攻撃からの防御を目的としている。ウクライナ軍はすでにLMMを使用しており、昨年後半に最初の発注分を受け取っている。
スターマー氏は記者会見で、「この支援はウクライナの防空能力を高めるだけでなく、ここイギリスで労働者の生活を向上させ、経済を活性化させ、北アイルランドとそれ以外の場所で雇用を支えるようになる」と主張。
「私たちの支援を倍増させ、主要パートナーたちと緊密に協力し、ウクライナが交渉の席で強い発言力を持つようにすることで、ウクライナの恒久平和を実現する、強固で永続的な合意が成立すると信じている」と述べた。
この日の首脳級会合には、ヨーロッパを中心とした18の国・機関のトップが集まり、ロシアの侵攻を受けるウクライナでの和平に向けた取り組みなどを協議した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も参加した。
「固い約束」
イギリスのジョン・ヒーリー国防相はこの日、ウクライナの将来と欧州全体の安全保障に関してイギリスが「重大な瞬間」を迎えているとし、次のように述べた。
「この新しい支援は、ウクライナをドローンやミサイル攻撃から守るのに役立つだけでなく、戦闘終結後にロシアがさらに侵略を続けることを、抑止するのにも役立つだろう」
「今回の新しい取引は、ウクライナへの軍事支援を強化するというイギリスの固い約束を実現するもので、イギリス国内で雇用と成長を促進するものでもある」
英国防省は、ウクライナの防衛産業基盤の回復と近代化のため、ウクライナを対象とした「メガ・プロジェクト」を実施しており、今回のミサイル供与もその一部。1月にキーウでスターマー氏とゼレンスキー氏が署名した「100年のパートナーシップ」に基づくもので、ウクライナが英企業から軍備を調達するために、イギリスは年30億ポンドを支援する。
イギリスのアンディ・スター国家軍備局長は、「イギリスの防衛産業は、ウクライナを戦争の開始当初から支援している。今回の重要な契約は、ウクライナが必要とする世界クラスの防衛装備を提供するために、業界がペースを上げて生産を拡大できる能力を持っていることを示している」と説明。
「LMMの生産能力の大幅な向上は、ウクライナの今夜の戦闘だけでなく、イギリスの長期的な安全保障にも利益をもたらすだろう」と述べた。