
カナダのジャスティン・トルドー首相は4日、ドナルド・トランプ米大統領がカナダに対して広範な関税を課したことを「非常に愚かな行為」だと非難し、経済を守るために「容赦のない戦い」を行うと誓った。
トランプ大統領はこの日、カナダとメキシコからアメリカに入る製品に対して25%の関税を課し、中国からの製品に対する課税も引き上げた。
トルドー首相は、アメリカからの輸出品に対する報復関税を発表し、貿易戦争が両国にとって高くつくと警告した。
しかし、トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」でさらに、「カナダのトルドー知事に説明してあげてほしい。彼がアメリカに報復関税を課すと、我々の相互関税も同じだけ即座に引き上げられる!」と述べた。
トランプ氏は以前、カナダをアメリカの51番目の州にしたいと発言して以来、トルドー氏を「Governor(知事)」と呼んでいる。
トルドー氏は、トランプ氏が「カナダ経済を完全に崩壊させ、それによって我々を併合しやすくする計画を立てている」と非難した。
「そんなことは決して起こらない。我々は決して51番目の州にはならない」
「今こそ強く反撃し、カナダとの戦いには勝者がいないことを示す時だ」
また、カナダの主要な目標は関税を撤廃することであり、「必要以上に長く続かないようにすることだ」と語った。
カナダの報復措置には、アメリカ製品に対する1550億カナダドル(約16兆円)相当の25%の相互関税が含まれている。このうち、300億カナダドル相当の製品に対する関税は即時に発効される。残りの1250億カナダドル相当の製品に対する関税は、21日後に発効予定。
カナダのマーク・ミラー移民担当相は、関税が実施されれば、カナダで最大100万人の雇用が危機にさらされると警告した。両国間の貿易がいかに密接に結びついているかを考えると、その影響は甚大だ。
ミラー氏は、「我々の貿易の80%を占める経済を一夜にして代替することはできず、関税は痛みを伴うだろう」と述べた。
「誰もが敗者になる可能性」
トランプ氏は関税について、アメリカの雇用と製造業を守り、不法移民と麻薬密輸を防止するためだと説明している。特に、合成オピオイド(麻薬性鎮痛剤)の一種フェンタニルを取り締まることを目標としており、この薬物がアメリカに流入する原因が他国にあるとしている。
これに対しトルドー氏は4日、「新しい関税には何の正当性もない」と述べた。アメリカの国境で押収されるフェンタニルのうち、カナダから来るものは1%未満にすぎない。
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領も、トルドー氏の言葉に同調し、トランプ氏の行動には「動機も理由も正当性もない」と述べた。シェインバウム大統領は、メキシコも「関税および非関税措置」を講じると誓ったが、詳細は9日に発表するとした。
アメリカ国際大学のジョン・ロジャース教授(経済学)は、トランプ氏の関税はアメリカ国内外の消費者価格を押し上げる可能性が高いと述べた。
ロジャース教授によると、最も早く影響を受けるのは、メキシコからアメリカが輸入する果物や野菜などの食料品で、これにカナダから輸入される大量の石油やガスが続くという。
「価格はかなり早く上昇する可能性がある」とロジャース教授は警告したが、具体的にどれくらいの速さでどれくらい上昇するかについては説明を控えた。
「我々はかなり未知の領域にいる」
ロジャース教授は、アメリカの長年の貿易相手国に対する潜在的なダメージを懸念していると話す。
「これは隣人の目に指を突き刺すようなものだ」と教授は述べ、アメリカとカナダ・メキシコ間の貿易戦争では「誰もが敗者になる可能性がある」と付け加えた。
トランプ氏の関税の標的にされているのはアメリカの主要な貿易相手であるため、報復措置が貿易戦争につながる懸念があるという。
「貿易戦争に勝つ方法はない。誰もが苦しむことになる。全員が高い価格を支払い、品質を犠牲にすることになるからだ」
自動車産業に打撃、電力輸出への課税示唆する州も
北米の新しい関税制度の影響を大きく受けるとみられているのは自動車産業だ。自動車部品は製造過程でアメリカとカナダの国境を何度も越えることがあり、そのたびに課税される可能性がある。
カナダの自動車製造業の中心地であるオンタリオ州のダグ・フォード州知事は4日、関税の結果、「国境の両側で組み立て工場が閉鎖される」と予想していると述べた。
同州在住で自動車メーカーで働くジョール・ソレスキー氏は、解雇を「非常に恐れている」と語った。
「私は初めて家を買ったばかりだが、別の仕事を探さなければならないかもしれない」
カナダ商工会議所のキャンディス・レイング会長は、この関税を「無謀なもの」と呼び、この動きがカナダとアメリカの両国を「不況、雇用喪失、経済的災害」に追い込むと警告した。
レイング氏はまた、関税がアメリカでの価格を引き上げ、アメリカ企業が「カナダのものより信頼性の低い」代替供給者を見つけることを余儀なくされると指摘した。
オンタリオ州のフォード知事はまた、カナダの電力供給と高品位ニッケルの対米輸出を停止する可能性を示唆。ミシガン州、ニューヨーク州、ミネソタ州の家庭に送電される電力に25%の輸出税を課すことを提案した。
カナダはアメリカに対し、約600万世帯に供給するのに十分な電力を輸出している。
さらに、アメリカ企業がオンタリオ州との契約への入札を禁止する予定だと発表。ノヴァスコシア州のティム・ヒューストン知事も、同様の措置を取ると述べた。
さらにいくつかの州が、アメリカ製の酒類を排除する動きを見せている。
オンタリオ州はさらに、トランプ氏の側近イーロン・マスク氏が所有する人工衛星インターネット会社「スターリンク」との1億カナダドルの契約をキャンセルすると発表した。
(英語記事 Trudeau hits out at 'dumb' tariffs as Trump warns of further hikes against Canada)