
中国は5日、今年の経済成長率の目標を「5%前後」に設定した。この日開幕した全国人民代表大会(全人代)で明らかにした。低迷が続き、アメリカとの貿易戦争にも直面している経済に、巨額の資金を投入する方針も示した。
全人代は中国の国会にあたる。数千人の代表団が出席するが、すでに密室で決められたことに同意するだけの会議とされる。
それでも、1週間にわたるこの会議は、中国の政策変更の手がかりを得られるものとして注目されている。
習近平国家主席は、長引く消費の低迷、不動産危機、失業率などの問題に直面している。4日にはアメリカのドナルド・トランプ大統領が、中国からの輸入品に対して10%の追加関税を発動させた。
これは2月に課された10%の関税に上乗せされるもので、アメリカの関税は計20%に達する。輸出が数少ない明るい材料になっている中国経済にとっては打撃だ。
中国は4日、すぐに反撃に出た(先月もそうした)。アメリカからの特定の農業輸入品に10~15%の関税を課す報復措置を発表。米国産のトウモロコシ、小麦、大豆などにとって中国は最大の市場であるため、重要な意味をもつ。
ただ、今回の全人代における焦点は、これらの関税をふまえて、中国がどう経済を成長させるかだ。
中国は過去2年間、成長率5%の目標を達成してきた。成長を引っ張ったのは好調な輸出で、貿易黒字は1兆ドル近くに上った。
今年もそれを繰り返すのはかなり難しいとみられる。ムーディーズ・アナリティックスで中国経済部門を率いるハリー・マーフィー・クルーズ氏は、「関税が長引けば、中国の対米輸出は4分の1から3分の1減る可能性がある」と話す。
中国は5%の成長を達成するには、これまで以上に国内での経済活動に頼らざるを得なくなる。
内需拡大に力点
今年の全人代では、昨年3番目の目標とされた「内需拡大」が、最優先の目標に位置づけられる可能性があると、アナリストらはみている。
中国政府はすでに、国民の消費を促す策を展開しており、キッチン用品、自動車、携帯電話、電子機器などの買い替えを呼びかけている。
政府は、一般国民の懐具合をよくするとともに、輸出と投資に対する中国経済の依存度を下げたい考えだ。
政府の計画には、1兆3000億元(約26兆8000億円)の特別国債を発行し、景気刺激策に充てることなどが含まれている。地方政府は4兆4000億元まで借入額を増やすことができる。
政府はまた、都市部で1200万人以上の雇用を創出すると発表。都市部における今年の失業率の目標を5.5%程度に設定した。
これらの措置が消費を押し上げるのかは重要な問題だ。
長引く不動産危機や、ハイテク・金融企業に対する政府の取り締まりなどが、中国で悲観論を強めている。また、社会的セーフティーネットが頼りにならないため、予期せぬ出費に備える貯蓄が、人々にとって重要になっている。
それでも、中国の指導部は楽観的だ。共産党の報道官は全人代開幕を前に、中国では需要の低下などの課題がみられるものの、「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は安定しており、多くの利点があり、回復力は強く、潜在力は大きいと認識することが重要だ」と記者団に話した。
(英語記事 China targets 5% growth as it reels from Trump tariffs)