
アメリカのドナルド・トランプ大統領は5日、イスラム組織ハマスに対し、パレスチナ・ガザ地区で拘束している人質の解放を求めた。「最後の警告」だとしている。一方、米政府は同日、ハマスと直接交渉をしていることを認めた。
トランプ氏はこの日、ホワイトハウスで、ガザでの停戦合意によって最近解放された人質の一団と面会。その後、自身のソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルに長文を投稿した。
その中でトランプ氏は、「イスラエルが仕事を終わらせるのに必要なものすべてを、私は送っている。私の言うとおりにしなければ、ハマスのメンバーは一人として安全ではない」と、具体的に何を送っているのかは明らかにせずに警告した。
そして、人質が解放されなければ「地獄の代償」を払うことになると強調。「人質全員を、あとではなく今すぐ解放せよ。殺害した人々の遺体すべてを直ちに返還せよ。さもないと、あなたたちはおしまいだ」、「指導者らは今こそガザを去るべきだ。チャンスがあるうちに」と書いた。
脅しとみられるメッセージは民間人にも向けた。「ガザの人々へ。美しい未来が待っている。だが、人質を取ったままではだめだ。人質を取るなら、あなたたちは死ぬ!」と告げた。
トランプ氏がハマスを脅したのは初めてではない。昨年12月には、自身が大統領に就任するまでに人質が解放されなければ「地獄の代償を払う」ことになると述べた。
イスラエルによると、ガザでは人質59人がなお拘束されており、うち24人が生存しているとみられている。米市民も含まれているという。
この投稿に先立ち、ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、人質の解放に向けて米政府がハマスと直接交渉していると明らかにした。
アメリカは長年の方針として、テロ組織に指定したグループとは直接接触しないとしている。そのため、ハマスと直接関わることはこれまで避けてきた。
レヴィット氏は記者団に、米国民のためになることをするのがトランプ氏の信条だと説明。人質担当のアダム・ボウラー特使が、「米国民にとって正しいことをするという誠意ある努力」を重ねているとした。
また、交渉に入る前にイスラエルに相談したと述べた。
パレスチナの関係者がBBCに話したところでは、ハマスと米当局者1人が、これまでに「2回の直接会談」をした。「事前にいくらかの連絡」を取っていたという。
直接会談については、米ニュースサイト・アクシオスが最初に報じた。それによると、両者はカタールで会い、米国人人質の解放と戦争終結の取り決めについて話し合っているという。
アメリカの中東担当の国防次官補を務めたミック・マルロイ氏は、自国民を取り戻すため、アメリカは「もっと積極的」になる必要があると述べた。
「緊密に連携しなければ、自国民を取り戻すイスラエルの能力に悪影響を及ぼしかねない」
イスラエル首相府は声明で、アメリカとハマスの直接協議について、「自らの立場を表明した」と発表。詳しい情報は提供しなかった。
報道によると、アメリカのボウラー特使はここ数週間、カタールの首都ドーハでハマスの代表らと会談した。
ハマスは2012年からドーハに拠点を置いている。アメリカのバラク・オバマ政権の求めを受けてのことだとされている。
カタールは小さいが影響力のある湾岸国で、アメリカにとっては中東地域での重要な友好国となっている。主要な米空軍基地があり、イラン、武装勢力タリバン、ロシアなどが絡んだ多くのデリケートな政治交渉を扱ってきた。
カタールは、ガザにおけるイスラエルとハマスの停戦を仲介する交渉でも、アメリカやエジプトと並んで重要な役割を果たしている。
(英語記事 Trump issues 'last warning' to Hamas as US confirms direct hostage talks)