2025年3月26日(水)

BBC News

2025年3月6日

実弾演習中の戦車

アメリカのマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は5日、同国がウクライナとの情報共有を一時停止したと明らかにした。ロシアの侵攻を受けるウクライナに対するアメリカの支援について、疑念がさらに強まっている。

ウォルツ大統領補佐官は、ウクライナとの情報共有の一時停止について記者団から問われ、「我々は一歩後退した」と答えた。

さらに、トランプ政権は情報共有を一時停止し、「この関係のあらゆる側面」を見直していると付け加えた。

アメリカは2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻の初期段階から、ウクライナと情報を共有してきた。

アメリカの発表後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、来週パリに欧州各国の軍幹部を集めて会議を開く方針だと発表。フランスはアメリカの助けなしに前進する用意をしなければならないと、テレビ演説で述べた。

「アメリカが我々の側にいてくれると信じたいが、そうでない場合の備えをしなければならない」

マクロン氏は、欧州が「新時代」に突入しているとし、防衛費の増額を呼びかけた。

また、フランスはウクライナなどと共に、永続性のある和平計画を準備しているとも述べた。

進展次第で解除の可能性も

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先月28日、米ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領と激しい口論となり、退出を命じられた。その3日後、米政府はウクライナへの軍事援助を一時停止した

情報共有は一部が停止されたのか、全面的に停止されたのか、分かっていない。また、いつまで続くのかも不明だ。

米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官も5日、米FOXビジネスのインタビューで、情報共有の一時停止を認めるような発言をした。トランプ氏は「ゼレンスキー大統領が和平プロセスに取り組んでいるのか、本当に疑問に思っていて、『(情報共有を)一時停止しよう。考える時間を与えたい』と言った」のだと、長官は語った。

長官によると、ゼレンスキー氏から、和平のための用意があると、返事がすぐに来たのだという。

「軍事面でも情報面においても、この一時停止が解除され、我々はウクライナと肩を並べて仕事をすることになるだろう」とも、長官は付け加えた。

ウォルツ大統領補佐官も、アメリカとウクライナの間に、より宥和(ゆうわ)的な雰囲気が生まれつつあると示唆し、近い将来、軍事援助と情報共有の一時停止が解除される可能性があると付け加えた。

「これらの交渉を確実なものにし、交渉に向けて進むことができれば、そして実際に、信頼醸成の措置を交渉のテーブルに乗せることができれば、(トランプ)大統領はこの一時停止の解除をじっくり検討するだろう」と、ウォルツ氏はFOXニュースに語った。

また、今後起こりうる交渉の内容と、交渉を行う場所について、ウクライナ側と「いい話し合い」をしたとし、「非常に短期間で」動きがあるだろうと付け加えた。

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は5日の記者会見で、軍事援助に言及し、アメリカは単に一時停止しただけで、資金提供については「再検討中」だとした。

ウクライナはロシアによる全面侵攻が始まってからの3年間、軍事援助をめぐりアメリカに大きく依存してきた。そのため、軍事援助の一時停止という決定は、戦況に重大な影響を及ぼしかねない。

加えて、情報共有も一時停止されれば、戦場で深刻な結果を招く可能性が高くなる。

情報支援はウクライナにとって、ロシア政府が次に取る動きを理解するのに役立つだけでなく、戦術的にも有用だと考えられている。例えば、ロシア部隊の位置情報は、兵器の誘導や標的の設定に役立つ。

かつて国防次官補とCIAの準軍事担当官を務めていたミック・マルロイ氏はBBCに対し、ウクライナへの情報提供の停止は、ウクライナの防衛能力に「直ちに影響を与えるだろう」と語った。

「アメリカの情報機関の能力と、欧州の同盟国からの情報を置き替えることはできない」

「このことが、ロシアがウクライナからより多くの領土を奪い、交渉のテーブルから離れようとする動きをさらに強めることになるだろう」

(英語記事 US pauses intelligence sharing with Ukraine

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy7xyg76354o


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