2025年3月23日(日)

BBC News

2025年3月8日

トランプ米大統領(7日、ホワイトハウス)

フランク・ガードナーBBC安全保障担当編集委員、トム・ベネットBBC記者

ドナルド・トランプ米大統領は7日、ロシアとウクライナの間で停戦および和平合意が成立するまで、ロシアへの「大規模な制裁」と関税を「強く検討している」と発言した。

トランプ大統領は、「ロシアはたった今、戦場でウクライナをひどく『たたいている』」として、対ロ制裁を検討していると述べた。これまでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が和平を求めていないと強く批判し、逆にロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛してきた論調を、急に変化させた。

ただしトランプ氏は、この発言の数時間後には記者団に対し、「ウクライナとの交渉は前より難しくなっている」と述べ、自分はプーチン大統領を信頼していると繰り返した。

トランプ大統領は2月28日にホワイトハウスの大統領執務室でゼレンスキー大統領と対面し、激しく非難した。その数日前にはゼレンスキー氏を「独裁者」と呼び、2022年2月24日にプーチン大統領が隣国への全面侵攻を開始して始まった戦争について、ウクライナが始めたものだと非難していた。

トランプ大統領は3月に入り、公の場でゼレンスキー氏を叱責したのに続き、ウクライナへのアメリカの軍事援助軍事情報提供をすべて停止した。

ロシアは5日夜、ウクライナ中部にあるゼレンスキー氏の出身地クリヴィー・リフを攻撃。6日夜にはウクライナのエネルギーインフラを大々的に攻撃した。ロシアのこうした攻撃と、ミサイル監視を可能にする軍事情報の提供をアメリカが停止したこととの関係は不明。

トランプ大統領は7日、ロシアの一連の攻撃を受けて、対ロ制裁関税の可能性を警告した。

「(ロシアは)は今、(ウクライナを)猛烈に爆撃している。『そんなのはだめだ、そんなのはだめだ』と、私はとても強力な声明を出した」と、トランプ氏は大統領執務室で述べた。

ロシアの攻撃が、ウクライナとの軍事協力をアメリカが一時停止した結果かとの記者団の質問に対し、トランプ氏はプーチン大統領が「誰でもやるはずのこと」をやっているだけだと答えた。

さらに、「(ウクライナが)和解を望んでいるのか知りたい。向こうが和解を望んでいるのかどうかは分からない」と述べて、アメリカの動きを正当化した。

トランプ氏は7日にソーシャルメディアに、「停戦と平和に関する最終合意に達するまで、ロシアに対する大規模な金融制裁、制裁、関税を真剣に検討している。ロシアとウクライナは手遅れになる前に、今すぐ交渉のテーブルに着くべきだ」と書いた。

対ロ制裁や関税がどのように機能するかについては、詳細を明らかにしなかった。

ロシア政府はすでに西側諸国から史上最も厳しい制裁を受けており、その多くは石油輸出と外貨準備高が対象になっている。

ロシアはこれに対し、インドや中国に割引価格で石油を販売するとともに、これまで西側諸国から入手していた商品の多くをカザフスタンなど経由で輸入し、制裁による問題をかなり回避できている。

加えて中国は、大量の軍民両用技術の提供を通じてロシアの戦争遂行を支援していると報じられているが、中国はこれを否定している。

トランプ政権は、和平協定を求める圧力がウクライナにのみ一方的にかかり、ロシアへの圧力がないという批判を多方面から受けているし、それに気づいているはずだ。このためトランプ氏がロシアへの制裁を口にしたことは、公平な姿勢のアピールするための可能性がある。

しかし問題は、トランプ氏が2月にプーチン氏と行ったと突然発表した「長時間の、かつ非常に生産的な」90分間の電話会談で、両首脳が何を協議して合意したのか、まったく明らかになっていない点だ。

プーチン大統領はこれまでのところ巧妙に事態を傍観しているもようで、大西洋をはさんだ西側の同盟関係がばらばらにほどけていくのをおそらく楽しんで観戦しているのだろう。

西側諸国の結束崩壊がロシアにもたらす利益に比べれば、アメリカによる関税の脅威など、あまりプーチン氏を困らせることにはならないはずだ。

(英語記事 Trump 'strongly considering' large-scale sanctions and tariffs on Russia

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clyrdznz5g4o


新着記事

»もっと見る