
欧州の主要国は8日、アラブ連盟が先週採択した総額530億ドル(約7兆9500億円)を投じるパレスチナ・ガザ地区の再建計画を支持すると発表した。この計画では、ガザで暮らす230万人のパレスチナ人を同地区にとどめる。
フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの外相らは、この計画を「現実的」だと歓迎した。ガザを5年間で再建することを目指す内容となっている。
また、独立した専門家からなる委員会が一時的にガザを統治し、国際平和維持軍が派遣される。委員会は、パレスチナ自治政府の監督下で、人道支援の監督とガザ地区の業務の一時的な管理を担当する。
声明の中で外相らは、この計画がガザの人々の「悲惨な生活状況を迅速かつ持続的に改善する」ことを約束していると述べた。
また、「アラブのイニシアチブと協力する」と述べ、アラブ諸国がこの計画を通して「重要なシグナル」を送ったと評価した。
イスラム組織ハマスについては「ガザを統治することも、イスラエルに対する脅威となることもあってはならない」とした。そして、4カ国で「パレスチナ自治政府の中心的役割とその改革計画の実施を支持する」としている。
アメリカとイスラエルは反対
アラブ連盟の計画は、アメリカがガザを引き継ぎ、住民をガザから立ち退かせるという、ドナルド・トランプ米大統領の再建構想の対案として、エジプトが提案したもの。トランプ大統領は、ガザを「中東のリヴィエラ」に変えるという独自のビジョンを提示しており、イスラエルも同調している。
パレスチナ自治政府とハマスがアラブ連盟の計画を歓迎した一方、米ホワイトハウスとイスラエル外務省は、この計画はガザの現実に対処できていないとし、受け入れないと発表している。
米国家安全保障会議(NSC)のブライアン・ヒューズ報道官は4日、声明で「がれきや不発弾で覆われた地域では、住民が人道的に生活できない」と述べ、「トランプ大統領は、ハマスのいないガザを再建するというビジョンを支持している」と付け加えた。
イスラエルとイスラム組織ハマスの間の停戦合意は、3月1日に6週間の第1段階が終了しており、崩壊する可能性もある。
イスラエルは、ハマスに第1段階の一時的な延長を受け入れるよう圧力をかけるため、ガザへの援助を阻止している。アメリカが提案したこの延長では、期間中に、ガザで拘束されている人質がパレスチナ人の収容者と交換で解放される予定。
しかしハマスは、イスラエル軍の完全撤退を含む停戦の第2段階が、合意通りに開始されるべきだと主張している。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務所は、10日にカタールで停戦延長の交渉に交渉チームを派遣すると発表した。
停戦合意の第2段階が実施されるのか、実施される場合いつからなのかは不明だ。それでも、ハマスのアブデル・ラティフ・アル=カヌア報道官は、10日の交渉に向けた「前向きな兆候」があると述べた。
ガザ地区では人口230万人のほぼ全員が、イスラエルの敵対行為の開始以来、家を離れなければならなかった。イスラエルは、2023年10月のハマスの攻撃で約1200人が殺され、さらに251人が人質に取られた後、軍事作戦を開始した。
ガザは広範囲にわたって破壊され、人道的影響も甚大だ。ハマスが運営するガザの保健省によると、イスラエルの軍事行動により4万8000人以上のパレスチナ人が殺され、ガザ全域で多くのインフラが空爆によって破壊された。