2025年3月23日(日)

BBC News

2025年3月11日

車の間に立つ武器を持つ人物

シリア暫定政府の国防当局は10日、西部沿岸地域での軍事作戦を完了したと発表した。この軍事行動では、数日間で民間人ら数百人が殺害されたとされる。

国防当局のハッサン・アブドゥル・ガニ報道官は、治安部隊がラタキア県とタルトゥース県のいくつかの町で、バッシャール・アル=アサド前大統領の支持者らを「無力化」したとソーシャルメディア「X」で発表。「特定の目的をすべて達成」し、治安維持作戦を終了したとした。

また、一帯で公共機関が業務を再開できるようになったと説明。「私たちは通常の生活を取り戻す準備を進めており、治安と安定の強化に取り組んでいる」とした。

一方、イギリス拠点の監視団体「シリア人権監視団(SOHR)」は、6日以降で1500人以上が死亡し、うち1068人は民間人だと発表した。その大半はアラウィ派で、治安部隊員や暫定政府派の戦闘員らによる「殺害、その場での処刑、民族浄化作戦」によって死亡したという。

SOHRによると、治安部隊の死者は230人、アサド前大統領を支持する戦闘員の死者は250人に上るという。治安当局者らは、治安部隊の300人が死亡したとロイター通信に話した。

BBCはこの死者数について独自に検証できていない。

イスラム教スンニ派が主体の暫定政府を支持する武装勢力に対しては、報復殺人の非難が出ている。アサド政権を構成していた少数派のイスラム教アラウィ派を殺害しているとされる。

暫定政府のアフメド・アル・シャラア大統領は、殺害について調査するための独立委員会を設置し、加害者の責任を問うと表明している。10日のロイター通信のインタビューでは、暴力の発生によって「多くの違反」があったと認め、「シリアは法治国家だ。法はすべての者に適用される」と述べた。

今回の暴力は、昨年12月のアサド政権崩壊以降のシリアで起きた、最悪の事態とされる。政権崩壊まで13年間続いた壊滅的な内戦では、60万人以上が殺され、1200万人が避難を強いられた。

インターネットでは、今回の暴力に関係するとみられる動画が広く共有されている。その一つには、アル・ムクタレヤの民家の庭で、一般人の服装をした20人以上の男性の死体が積まれているのが映っている。別の場所では、暫定政府側の戦闘員がアラウィ派を探し出し、その場で家族全員を殺害したとの証言も出ている。

バニヤスに住むアラウィ派の女性は、暫定政府を支持するチェチェン人戦闘員らが自分の家の周りを攻撃したとBBCに話した。

「近所の人たちは、子どもも含めて殺された。(戦闘員らは)やって来て、金やすべてを取っていった(中略)。近所の車も全部盗んでいった。スーパーにも行って、棚から全部奪っていった」

「私たちは、自分の番が来るのを待っていた。いつ自分の番になるのかわからなかった。死を目の当たりにした。目の前で大勢が死んでいった。今はもう、友達も近所の人もみんな死んでしまった」

「何の罪もない、無関係の人たちが冷酷に殺された」

家族がバニヤスで暮らしているというアラウィ派の男性は、シャラア暫定大統領が率いるイスラム主義グループ「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)」の戦闘員らがアラウィ派を探して一軒一軒回り、親類を自宅から拉致したと話した。

この男性によると、殺された人々の遺体は町はずれの集団墓地に埋葬され、拉致された人々はまだ戻っていないという。

国営サナ通信は、アサド前大統領の故郷カルダハで9日、治安部隊員らの集団墓地が発見されたと伝えた。一方、トルコを拠点とするシリアTVは、住民の話として、最近の戦闘で殺害された警官らを前大統領の支持派が埋葬したと報じた。

国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は、「女性や子ども、戦闘能力を失った戦闘員らを含む家族全員が殺害されているという、極めて気がかりな報告」を受けていると述べた。

トゥルク氏は、「正体不明の加害者、暫定当局の治安部隊のメンバー、旧政府の関係者らが、宗派に基づいて即決処刑をしているとの報告もある」と付け加えた。

その上でトゥルク氏は、シリアの暫定当局に対し、民間人の保護と、殺人などの違法行為を犯した者たちの責任追及のため、迅速な行動を取るよう求めた。

(英語記事 Syria says operation against Assad loyalists over after deadly violence

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx2g5pjl2ggo


新着記事

»もっと見る