2025年3月26日(水)

BBC News

2025年3月11日

食べ物を受け取ろうと器を差し出すパレスチナ人避難者(ガザ北部ベイトラヒア)

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は10日、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区への物資や電力の供給を遮断し、人道援助を武器にしていると非難した。

スイス・ジュネーヴの国連事務局で演説したラザリーニ氏は、ガザへの援助物資の供給が再開されなければ、飢餓の危機が再燃すると警告した。

イスラエルは2日、ガザ停戦合意の第1段階を延長するというアメリカ側の提案をイスラム組織ハマスが拒否したと非難し、ガザへの全ての人道支援物資の搬入を阻止した。

さらに9日には、ガザへの電力供給を全面停止した。イギリスとドイツはこの動きを非難しているが、イスラエルのエリ・コーヘン・エネルギー相はビデオ声明で、「人質を取り戻し、(戦争が終わった)翌日にガザからハマスが確実にいなくなるよう、あらゆる手段を使う」と述べた。

1月19日に停戦合意が発効した当初は、ガザに搬入される援助物資は10倍に増え、食料不足が緩和され、医療サービスも一部回復した。

しかし現在では、物資の供給は遮断され、主要な海水淡水化プラントへの電力供給も停止されている。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長の報道官は、これによってガザで利用できる飲料水が大幅に減少すると述べた。

「事務総長は、イスラエルがガザへの電力供給を制限する決定を下したことを非常に懸念している。最新の決定は、ガザにおける飲料水を入手できる可能性を大幅に低下させるだろう」

「今日(10日)から、施設は予備発電機で稼働することになり、水の生産能力は低下する。(電力の)回復は何万もの家庭や子供たちにとって不可欠だ」

イスラエル政府は、水の供給を遮断する可能性を排除していない。

ラザリーニ氏は、ガザへの援助と電力を遮断するイスラエルの動きを批判し、ガザ住民への影響がいっそう増すことになるだろうと指摘した。

「ガザ地区で飢餓が深刻化していた、数カ月前の状況に逆戻りする危険性があるのは言うまでもない」

「どのような意図があるにせよ、ガザへの人道援助を武器にしていることは明らかだ。状況は急速に非常に、非常に悪化している」

イスラエルはUNRWAの一部スタッフがハマスを支援していると主張しており、UNRWAの活動を禁止し、ほかの援助機関が介入すべきだとしている。しかし、イスラエルは他の援助機関についてもガザでの活動を禁止している。

ラザリーニ氏は、UNRWAの代わりになれる機関は、「パレスチナ国家にある(中略)有能なパレスチナ人機関」だけだと述べた。

UNRWAはパレスチナのガザとヨルダン川西岸地区で活動を続けているが、イスラエルの禁止措置によって、「活動上の深刻な問題」に直面していると、ラザリーニ氏は付け加えた。

こうした中、イスラエル側の交渉担当者は、ガザでの停戦延長について協議するため、カタールに入る予定だった。

イスラエルは、ハマスが停戦合意の第1段階の延長を受け入れることを望んでいる。

しかし、ハマスは、ガザに残された人質の解放とイスラエル軍のガザ撤退、そして戦争の恒久的な終結に向けた、第2段階の交渉を開始することを望んでいる。

ハマスは人質24人の拘束を続けているほか、35人の遺体を保持しているとみられている。

ハマスは2023年10月にイスラエルを襲撃し、民間人を中心に約1200人を殺害、251人を人質に取った。人質の大半はこれまでに、停戦合意などの取り決めで解放された。

ハマスが運営するガザ保健当局は、イスラエルの軍事攻撃により、ガザで4万8000人以上のパレスチナ人が殺害されたとしている。その多くは女性と子どもだという。

(英語記事 UN official accuses Israel of weaponising aid to Gaza

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c62zdxwxe15o


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