2025年3月23日(日)

BBC News

2025年3月12日

サウジアラビア・ジッダでのアメリカとウクライナの高官協議後、記者会見に臨むマルコ・ルビオ米国務長官(左)とマイク・ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

ウクライナは11日、アメリカが提案したロシアとの30日間の停戦案を受け入れる用意があると表明した。アメリカとウクライナはこの日、サウジアラビアで高官協議を行った。

マルコ・ルビオ米国務長官は、ロシアにこの停戦案を提示し、「ボールをコートのロシア側に」移すつもりだと述べた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「前向きな」提案に同意するようロシアを説得できるかはアメリカ次第だと述べた。

アメリカとウクライナは11日、米大統領執務室でドナルド・トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が異例の衝突を繰り広げて以来、初めてとなる公式協議をサウジアラビア・ジッダで行った。

アメリカは両首脳が激しく口論した首脳会談後、ウクライナとの情報共有軍事援助を一時停止していたが、これらを直ちに再開すると、11日の共同声明で発表した。

「両国の代表団は、交渉チームを編成し、ウクライナの長期的な安全保障を提供する恒久的な和平に向けた交渉を直ちに開始することで合意した」と、アメリカとウクライナは共同声明で明らかにした。

ルビオ国務長官は11日の記者会見で、アメリカが提案した30日間の停戦案をロシアが受け入れることを望んでいると語った。

ルビオ氏は、ウクライナは「銃撃をやめて、話し合いを始める用意ができている」とし、ロシアがこの提案を拒否すれば「残念ながら、ここで和平を妨げているのが何なのかがわかる」と述べた。

「私たちは今日、停戦を開始し直ちに交渉に入るという提案をし、ウクライナ側はそれを受け入れた」

「我々はこの提案をロシア側に伝える。彼らが和平にイエスと言ってくれることを望んでいる。ボールは今、コートの彼ら側にある」と、ルビオ氏は付け加えた。

ゼレンスキー氏は空と海での部分的な停戦を提案していたが、アメリカの30日間停戦案は空と海に限定されず、全ての前線を停戦対象とするもの。

ゼレンスキー氏はジッダでの「建設的」な協議について、トランプ氏に感謝を述べた。

動画メッセージの中で、ロシアは「戦争を止めるか、戦争を続けるかの意思を示さなければならない」とゼレンスキー氏は述べた。

「今こそ事実の全容を明らかにする時だ」

ロシア政府はこれまでのところ、反応していない。クレムリン(ロシア大統領府)は先に、協議結果について米政府から説明を受けてから声明を発表するつもりだとしていた。

ロシアと協議するとアメリカ、ゼレンスキー氏の再招待も検討と

ロシアは2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始。現在、ウクライナ領土の約20%を掌握している。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団に応じ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と協議するつもりで、「うまくいけば」プーチン氏が提案に同意するだろうと述べた。

また、「責任は両者にある」とし、数日中に合意に至ることを望んでいると付け加えた。

「我々は明日、ロシアとの大きな協議を予定している。いくつかの素晴らしい話し合いができることを期待している」

さらに、ゼレンスキー氏をワシントンに再び招くことに前向きだとも述べた。

ロシア国営タス通信によると、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、同国は数日中に米代表団と協議する可能性を排除していないと述べた。

トランプ氏とゼレンスキー氏の関係は「再び軌道に乗った」のかと記者から問われると、ルビオ国務長官は、再び軌道に乗ったのは「平和」であってほしいと答えた。

「これは(米映画)『ミーン・ガールズ』でもなければ、何かのテレビ番組の回でもない」、「この戦争で今日も人が死ぬ。昨日も人が死んだ。そして悲しいことに、停戦がない限り、明日も人は死ぬ」とルビオ長官は強調した。

アメリカとウクライナの高官協議に先立ち、ロシア・モスクワでは夜間にドローン攻撃があり、少なくとも3人が死亡した。ロシアは、ウクライナが戦争を終わらせるための外交を拒否していることを示すものだと主張した。

鉱物取引、「できるだけ早期に最終決定」すると

アメリカとウクライナの共同声明によると、トランプ氏とゼレンスキー氏は、ウクライナの重要鉱物をめぐる取引について、「できるだけ早期に」最終決定することで合意したという。

ウクライナは、アメリカからの安全の保証と引き換えに、自国のレアアース(希土類)をアメリカに提供する案を提示していた。しかし、ホワイトハウスで口論となったことから、合意文書への署名式は中止になった。

ルビオ氏によると、11日の議題には鉱物取引は含まれておらず、ウクライナと米財務省が交渉したのだという。

ジッダでの協議には、マイク・ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も参加した。

スティーヴ・ウィトコフ中東特使は数日中にロシアに向かう予定だと、この計画に詳しい情報筋はBBCに語った。ただ、予定はすぐに変更される可能性がある。

ウクライナの安全保障、対ロシア制裁は

アメリカとウクライナの共同声明によると、ウクライナ政府は、いかなる和平プロセスにも欧州が関与すべきだと「繰り返し述べた」という。

アメリカは、欧州を協議の場から締め出すなど、ウクライナでの戦争に対するアプローチを変化させている。そのため、欧州各国の指導者たちはここ数週間、複数の緊急会合を開く事態となった。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州連合(EU)は11日のアメリカとウクライナの「前向きな進展」を歓迎すると述べた。

ウクライナでの戦争の早期終結は、トランプ氏が大統領選の最中から掲げた主要公約のひとつ。

ゼレンスキー氏は安全の保証なしに停戦はできないと主張しているが、トランプ氏は安全の保証をすぐに提示しないまま、停戦を受け入れるようゼレンスキー氏への圧力を強めてきた。

トランプ氏は7日、ロシアとウクライナの間で停戦および和平合意が成立するまで、ロシアへの「大規模な制裁」と関税を「強く検討している」と、珍しくロシア政府を脅す発言をした。ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアはすでにアメリカから厳しい制裁を受けている。

トランプ氏はこの際、「ロシアはたった今、戦場でウクライナをひどく『たたいている』」ため、対ロ制裁を検討していると説明した。

アメリカとウクライナの高官協議が行われた11日も、戦争は続いた。

ロシア・モスクワではドローン(無人機)攻撃があり、男性3人が死亡した。ウクライナ全面侵攻開始以来最大規模のドローン攻撃とみられる。

ロシア・メディアは保健当局者の話として、子供3人を含む18人が負傷したと伝えた。

ロシア国防省は、ドローン337機がロシア上空で迎撃されたと発表した。うち91機はモスクワ上空で撃墜されたという。

ウクライナ当局は、首都キーウといくつかの地域が、ロシアのドローン攻撃を受けたと発表した。

ウクライナ空軍は、ロシアが発射したドローン126機のうち76機と、短距離弾道ミサイル「イスカンデルM」1発を撃墜したと発表した。

死傷者の有無はすぐには明らかになっていない。

(英語記事 Ukraine ready to accept 30-day ceasefire with Russia

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cn52lp1lrp0o


新着記事

»もっと見る