
ルーマニアの憲法裁判所は11日、5月に行われる大統領選挙のやり直しについて、カリン・ジョルジェスク氏の立候補を禁止する最終判断を下した。
昨年11月に行われた大統領選の第1回投票では、ほぼ無名だった極右ポピュリストのジョルジェスク氏が勝利した。しかし、ロシアがジョルジェスク氏を支援するためにTikTokで800件のアカウントを作っていたことが判明。憲法裁は12月にこの投票を無効としていた。
ルーマニアの中央選挙管理委員会は今月9日、やり直し選挙におけるジョルジェスク氏の立候補を拒否した。ジョルジェスク氏が「民主主義を守る義務そのものに違反」しており、立候補が「合法性の条件を満たしていない」としている。
これに対しジョルジェスク氏は10日、憲法裁に異議を申し立てたが、憲法裁は11日、2時間にわたる審理を経て最終判断を下した。判決は全会一致だったという。
ジョルジェスク氏は11日夜にフェイスブックに動画を投稿。支持者に対してあらためて抗議を呼びかけることはせず、代わりに5月のやり直し選挙で別の候補者を支持するよう提案した。
首都ブカレストではこの日、ジョルジェスク氏に投票する権利を求めて多くの人が往来で声を上げたが、その意向はかなわなかった。裁判所の外に集まった大勢はルーマニアの国旗を肩にかけており、キリスト教正教会のイコンを掲げる人や、大きな木製の十字架を握りしめる人もいた。
抗議参加者らは「カリン・ジョルジェスクは大統領だ」や「自由」と合唱し、裁判官を裏切り者と非難した。「独裁を止めろ」と書かれた看板を持つ女性もいた。
立候補禁止のニュースが群衆に届くと、裁判官に向けた大きなブーイングが響いた。
大統領選めぐる混乱高まる
親ロシア派のジョルジェスク氏は、極右の泡沫(ほうまつ)候補として出発し、次第に知名度を得た。現在は支持を集め、ルーマニアを再び偉大な国にすると約束している。
ジョルジェスク氏の人気がいきなり高まった要因のひとつに、「ルーマニアの尊厳を回復」し、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)を含む国際機関への従属を終わらせるという約束があった。
昨年の投票が無効とされる前にはBBCの取材に対し、大統領になった際にはウクライナへの支援をすべて終了すると述べていた。
しかし、ジョルジェスク氏を支援するTikTokでの大規模なキャンペーンにロシアが関わっていたことを示す情報が公開されたため、大統領選は無効となった。
欧州の指導者やルーマニアの大勢には、ロシアが欧州を弱体化させ、その自由主義的価値観を損なわせようとしていると見えた。ルーマニア人の多くは依然として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をあがめてNATOを毛嫌いする人物を、恐れている。
一方、クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアがジョルジェスク氏とつながりがあるという指摘は「まったくの根拠のないもの」だと述べた。
ジョルジェスク氏は先月26日、5月のやり直し選挙に候補者として届け出に向かう途中で拘束され、尋問を受けた。これを受け、数万人の市民が抗議のために首都ブカレストの街に繰り出した。
ジョルジェスク氏は、憲法秩序の転覆を図った罪や、ネオファシスト組織に所属した罪で起訴された。同氏はすべての不正行為を否定している。
極右政党「ルーマニア統一同盟(AUR)」の党首でジョルジェスク氏の盟友の、ジョルジェ・シミオン氏はソーシャルメディアに、「恥を知れ! 我々は敗北しない。ルーマニアの国民は目覚めた。彼らは勝利する」と書いた。
ジョルジェスク氏は、アメリカのトランプ政権からも一定の支持を得ている。J・D・ヴァンス副大統領は2月、ルーマニアが諜報機関の「根拠薄弱な疑惑」と隣国からの圧力に基づいて選挙を無効にしたと批判した。
一方、ルーマニアのエミル・フレゼアヌ外相は、米富豪イーロン・マスク氏がジョルジェスク氏を支持する複数のメッセージをソーシャルメディアに投稿したことを、「選挙干渉の一形態」だと非難した。
(英語記事 Final ruling bars far-right Georgescu from Romanian vote/ Romanian far-right presidential hopeful barred from poll rerun)