
パキスタン軍によると、南西部バルチスタン州で11日、旅客列車が武装集団「バルチ解放軍(BLA)」に襲撃され、多数の乗客が人質に取られた。軍は12日までに、300人以上を解放したとしている。
軍報道官によると、列車には約440人が乗っていた。現地当局は、そのうち少なくとも100人は治安部隊の隊員だったとしている。
現地の報道によると、BLAは、48時間以内に自分たちの政治犯らが釈放されなければ人質を殺すと脅したという。
軍は人質の救出作戦を実施。軍報道官によると、BLAの33人を殺害した。作戦の開始前に、民間人の人質21人と軍人4人がBLAに殺害されていたという。
これらの人数についてBBCは検証できていない。
人質の救出には、ヘリコプターと兵士数百人が投入された。
列車の乗っ取りは30時間以上続いた。襲撃と、その後の救出作戦に関する情報は、終始厳しく管理された。
治安当局によると、BLAの一部は何人かの乗客を連れ、山岳地帯に逃げた可能性があるという。軍はさらなる脅威を排除するため、襲撃があった地域で捜索を続けている。
軍報道官によると、列車が襲撃された際に逃げ出した乗客もいるとみられ、軍はその捜索にも当たっているという。逃げた乗客の人数は明らかになっていない。
BLAは、パキスタン最大のバルチスタン州の自治権拡大や独立を求めている反政府集団の一つ。政府に対しては、同州の豊富な鉱物資源を利用するばかりで、同州について何もしていないと非難している。
これまで、軍のキャンプや鉄道駅、列車を攻撃したことがあるが、列車を乗っ取って人質を取ったのは今回が初めて。
パキスタンのほか、イギリスやアメリカなどの西側諸国からもテロ組織に指定されている。
乗客ら体験を語る
BLAは今回の襲撃で、線路の一部を爆破。山岳トンネルの近くで列車に向けて発砲した。
乗客らは恐ろしい体験をした。イシャク・ノールさんは、「発砲が続く間、息を潜めていた。次に何が起こるかわからなかった」とBBCに話した。
当局は当時、乗客らと連絡を取ろうとしたが、インターネットも携帯電話も通じない地域だったため、困難に見舞われた。
11日夜に列車から降りることができた何人かの乗客は、次の駅まで4時間近く歩いた。
その1人で、家族に会うためにクエッタからラホールに向かっていたムハンマド・アシュラフさんは、「みんなすごく苦労して駅にたどり着いた。疲れていたし、子どもや女性たちも一緒だった」とBBCに話した。