
デンマークの自治領グリーンランドで11日に総選挙が行われ、中道右派の野党・民主党が予想外の勝利を収めた。選挙戦では、デンマークからの独立と、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランド購入発言が議論を独占した。
民主党は、段階的なアプローチによるデンマークからの独立を提唱している。ほぼ確定した開票結果によると、同党は約30%の票を獲得した。
イェンス=フレデリック・ニールセン党首は地元メディアに、「グリーンランドは、外部からの大きな関心が寄せられている今こそ団結する必要がある」と語った。「そのためにすべての人と交渉に入るつもりだ」。
民主党は今後、連立政権を形成するために他党と交渉を進める。
北極海と大西洋の間に位置する世界最大の島であるグリーンランドは、約3000キロメートル離れたデンマークによって約300年間支配されてきた。
グリーンランドは自治領として領内の問題を統治しているが、外交および防衛政策に関する決定はデンマーク政府が行っている。
今回の総選挙では、主要6党のうち5党が独立を支持していたが、達成への速度については意見が分かれていた。
2021年の前回選挙から20%以上の票を増やした民主党は、独立に関して穏健な党と見なされている。
もう一つの野党であるナレラク党は、独立プロセスを直ちに開始し、アメリカとの関係を強化することを目指しており、得票率約25%で第2党に浮上した。
ナレラク党の支持は、グリーンランドで最も人気のある若手政治家の一人、アキ=マティルダ・ホーグ=ダム氏が与党から移籍する決定をしたことで、選挙前に強化された。人気投票でホーグ=ダム氏は、民主党党首のニールセン氏に次ぎ2位となった。
ニールセン氏は連立交渉について、「ナレラク党は2番目に大きな党なので、避けることはできない」、「だが、他の党を事前に排除するつもりはない」と述べた。
現在の与党であるイヌイット・アタカチギット(IA)とシウムートは、それぞれ3位と4位となる見込みで、ムテ・エーエデ自治政府首相にとっては不利な結果となっている。
今回の総選挙では、人口5万7000人の4万人以上が、国会議員31人と地方政府を選出するための投票資格を持っていた。投票用紙には6政党が記載されていた。
投票は広大な島全体に点在する72カ所の投票所で行われた。
グリーンランド大学のマリア・アクレン教授は、「民主党は過半数を得るために支持するパートナーが必要だ」と指摘。「ナレラク党かIAのどちらかである可能性がある。民主党が何を望むかを見極める必要がある」と述べた。
2009年以降、グリーンランドは独立のための国民投票を呼びかける権利を持っている。
ナレラク党は数年以内の投票実施を目指している。一方、民主党はまず自治を成功させることに焦点を当て、独立に向けては段階的なアプローチを支持している。
アクレン教授は、民主党が勝利した理由の一部は、グリーンランド人が政権交代を望んでいたこと、そして新しい漁業法やその他の国内問題に不満を抱いていたことにあると考えている。
独立はほとんどのグリーンランド人にとっての最終目標と見なされているが、経済、医療、その他の分野で改革が行われる前には達成されないだろうと、アクレン教授は述べた。
グリーンランドの戦略的な位置と未開発の鉱物資源は、特にトランプ大統領の目を引いている。トランプ氏は大統領1期目の2019年に、グリーンランドを購入するというアイデアを初めて提案した。
今年1月に再び大統領に就任して以来、トランプ氏はグリーンランドを取得する意向を改めて示している。
先週、米連邦議会合同会議で行われた施政方針演説でも、トランプ氏は、「国家安全保障のためにグリーンランドが必要だ。何としても手に入れる」と述べた。
グリーンランドとデンマークの指導者らは、この要求を繰り返し拒否している。
民主党のニールセン党首は、アメリカに対して冷静な対応を取る必要があると述べた。公共放送局KNRに対し同党首は、世界的に大きな変化が起きている中で団結し、一つの声で話すべきだと語った。
(英語記事 Greenland's opposition wins election dominated by independence and Trump