
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は12日、核開発計画についてアメリカと交渉する考えはないと述べた。アメリカのドナルド・トランプ大統領は先週、イランの核開発をめぐり、交渉を要求する書簡を送ったと述べていた。イランはこの日、書簡を受け取ったことを認めた。
トランプ氏は7日の米FOXビジネスのインタビューで、イランが核開発について協議に応じなければ軍事行動に出る可能性があると、書簡で警告したと述べていた。
トランプ氏の書簡はアラブ首長国連邦(UAE)経由でイランに届けられた。ハメネイ師は、書簡には目を通していないとしつつ、「世論をあざむくもの」だと一蹴した。
ハメネイ師は、「(アメリカが)守らないと分かっているのに、交渉する意味があるだろうか」と問いかけた。トランプ氏は大統領1期目に、イランと西側6カ国が2015年に結んだ核合意を破棄し、イランに制裁を科した。
イランの核施設が攻撃されれば、イランは報復するだろうと、ハメネイ師は警告した。
「イランは戦争を望んでいるわけではないが、アメリカやその代理勢力が誤った行動を取れば、我々は決定的かつ確実な対応を取ることになる」
また、イランは「核兵器に興味はない」とも繰り返した。最高指導者のハメネイ師は、イランのすべての国家的問題に関して最終決定権をもつ。
アメリカが核合意離脱、イランは核開発を加速
イランは10年前の2015年、中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリス、アメリカの6カ国と、対イラン制裁を緩和する見返りに核開発を制限し、国際原子力機関(IAEA)による監視を認めるという、歴史的な合意を結んだ。
しかし、トランプ氏は2018年、イラン核合意からのアメリカの一方的な離脱を発表。厳しい経済制裁を復活させた。トランプ氏は核合意を「史上最悪の取引」と呼び、イランが将来、核爆弾を製造する可能性を阻止するには不十分だと主張した。
するとイランは、核合意を逸脱する濃縮率のウランを製造するようになった。濃縮ウランは核燃料だけでなく核兵器の開発にも使用される。
IAEAは先月、イランが核兵器に必要なレベルに近い濃縮度60%のウランを275キロ近く貯蔵していると発表した。これは理論上、90%まで濃縮すれば、核爆弾6発に相当する量だ。
アメリカとイスラエルは、イランが核兵器を保有することは決して容認しないと警告している。イスラエルは必要であればイランの核施設を攻撃すると脅している。
イスラエルは昨年、イランのミサイル攻撃への報復として、イランの核開発関連施設の一部を攻撃したと発表した。
各国の対応は
トランプ氏は7日のFOXビジネスのインタビューで、「もし私たちが軍事行動に出れば、そちらにとって恐ろしいことになると、書簡で伝えた」と説明。
「イランには、軍事的か、それとも取引をするかの、二つの対処法がある」、「私は取引を望む。イランを傷つけたいわけではないからだ」と述べた。
UAEの大統領顧問アンワル・ガルガシュ氏からイランのアッバス・アラグチ外相に手渡されたとされる書簡の内容について、ホワイトハウスは詳細を明らかにしていない。
イラン最高指導者はアメリカとの交渉を拒否したが、イランの国連代表部は9日の声明で、「イランの核開発計画に対する軍事行動が起きる可能性への懸念に対処することが目的なら」協議を検討する可能性があるとした。
アラグチ外相も12日、イギリス、フランス、ドイツとの核協議が「継続中」だと述べた。
こうした中、中国外務省は、中国とロシア、イランが14日、北京で開かれる3カ国協議で「イランの核問題」について話し合う予定だとしている。
(英語記事 Iran rejects nuclear talks as UAE delivers Trump's letter)