2025年4月20日(日)

BBC News

2025年3月30日

発生から30時間以上経過した29日夜に助け出された女性(ミャンマー・マンダレー)

ミャンマー中部で28日午後に発生した強い地震による、ミャンマー国内の死者数は29日までに1644人に達した。行方不明者の捜索・救助活動が続けられる中、一部地域では人々が素手でがれきを掘り起こしている。

現地は深刻な機材不足に直面している。通信ネットワークが不安定で、道路や橋が壊れていることも、生存者の捜索を妨げている。

一部地域の人々は、近親者を探すために素手でがれきを掘り起こすしかない状況だと、BBCに話した。

ミャンマーでは民政移管(2011年)から10年後の2021年2月、国軍がクーデターを決行して権力を掌握した。以来、反体制派などとの内戦が続き、国軍は国の大部分を支配できずにいる。

米地質調査所(USGS)によると、マグニチュード7.7。震源地はミャンマー・ザガイン市の北西16キロメートルで、震源の深さは10キロメートル。その地震の12分後にも、2回目の地震が発生した。震源地はザガインの南18キロ、マグニチュード6.4だった。

強い揺れは、中国南西部やタイでも感じられた。

ミャンマーでは28日から救助活動が始まり、国際援助も入り始めている。しかし、被害が最も甚大な地域にはまだ支援が届いておらず、一般市民が素手で生存者を救い出そうとしている。

広く共有されている動画には、2枚のコンクリート板に挟まれた若い女性を助けようと、男性2人ががれきを動かす様子が映っている。

BBCが話を聞いた複数の地元住民によると、がれきの下に、助けを求めて叫んでいる人たちがいるという。

震源地に近いミャンマー第2の都市マンダレー(人口約150万人)は、大部分が壊滅状態となった。発生から約30時間後の29日夜、倒壊した12階建ての集合住宅のがれきの中から女性1人が救出され、喜びの声が上がった。しかし、赤十字によると、この現場ではまだ90人以上が閉じ込められている可能性があるという。

この近隣地域では、幼稚園が入る建物が倒壊し、園児12人と教員1人の遺体が見つかった。

国連の人道問題調整事務所(OCHA)によると、最大都市ヤンゴン、首都ネピドー、マンダレーを結ぶ主要幹線道路に亀裂や路面のゆがみが生じ、交通の深刻な混乱が起きている。

また、緊急医療キットや血液バッグ、麻酔薬、必須医薬品、医療従事者用テントといった医療品も不足しているという。

別の場所では、救助隊が生存者の声に耳を傾けていた。「(生存者の)声が聞こえた時にしか救出できない」と、隊員の1人は語った。

マンダレー市チャウセー地区のシントカイ郡区の救助隊は30日早朝、倒壊した私立学校のがれきの中から大勢を助け出した。しかし、そのうち女性5人と男性1人は、ほかの救助隊が到着する前に死亡した。犠牲者には生徒や教師、学校職員が含まれる。

機材不足が救助活動を大幅に遅らせている。作業員の1人はBBCビルマ語に対し、「今ある機材で何とかやっている。倒壊した学校に閉じ込められた少女を何時間も助け出そうとしている」と語った。

マンダレーで対応にあたる別の作業員は通信状況について、ほぼ機能していないと、ヤンゴンで取材するBBC記者に話した。

「そもそも、私たちはインターネット回線も電話回線も確保できていない。なので互いに連絡を取るのが非常に難しくなっている。救助隊が到着していても、電話回線がダウンしているのでどこに行けばいいのかわからない」

マンダレーの住民の1人は、混乱した状況の中で誰もが最善を尽くしていると語った。

「救助活動には連携がなく、指揮する者も、何をすべきかを指示する者もいない。地元住民は自力で生きていくしかない。がれきの中から遺体が見つかっても、どこに送ればいいのかさえわからない。病院はひっ迫し、対応しきれない状況だ」

軍事政権によると、マンダレーで被災した建物は1500棟を超える。停電の発生で状況はさらに悪化しているが、当局は電力復旧に数日かかるとしている。

マンダレー空港は、地震で滑走路が損傷したため機能していない。軍事評議会は、空港の再開に向けて取り組んでおり、仮設病院や医療救援キャンプ、シェルターを設置しているとしている。

マンダレーから25キロも離れていないザガインでは、両地域を結ぶ2本の橋のうち、古い方の橋が完全に崩壊した。もう一方には亀裂が入り、救助隊のアクセスが遮断されている。

「今まさに、緊急救助に必要な人員さえ足りていない。大勢が閉じ込められていて、遺体を収容することもできない。どちらの橋も通れないので、みんながれきの中に閉じ込められている。どうか緊急救助隊がここに来て私たちを救出できるよう、助けてください」と、地元住民はBBCビルマ語に語った。

軍事政権が首都機能を移転したネピドーは、余震や小規模な揺れに見舞われている。同市では多数が死傷し、複数の建物が倒壊し、道路が損傷するなど、甚大な被害が出ている。

今回の地震発生を受け、軍事政権は国際的支援を求める、異例の呼びかけを行った。しかし、その一方で、国内の武装勢力に対する空爆やドローン(無人機)攻撃を続けている。

BBCビルマ語は、シャン州北部ナウンチョ郡区での空爆で7人が死亡したことを確認した。この空爆は、地震発生から3時間も経っていない28日午後15時30分ごろに行われた。

国軍を権力の座から排除しようと戦う民主派反体制勢力は、ザガイン中部チャンウー郡区が空爆を受けたと報告している。タイ国境に近い地域で空爆があったとの報告もある。

国連のトム・アンドリュース・ミャンマー人権特別報告者は、軍事政権に空爆を中止するよう求めた。

「今現在も軍事行動が、(中略)軍事政権による軍事攻撃が続いていることが問題だ」と、アンドリュース氏はBBCに語った。

「私は軍事政権に、ただ軍事行動をやめるよう求めている。これは全く言語道断なことで、容認できない」

(英語記事 Myanmar quake toll passes 1,600 as people dig for survivors with bare hands

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx2we4qlj7ro


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