
アメリカのドナルド・トランプ大統領は2日、同国が輸入するすべての製品に対する新たな関税の計画を発表した。第2次世界大戦後に整備された国際貿易秩序を大転換するものとみられている。
計画では、すべての輸入品に少なくとも10%の基本関税をかける。トランプ氏はこの措置を、昨年の大統領選挙で提案していた。
米政府の資料によると、基本関税は100カ国以上に適用し、うち約60カ国には税率を上乗せする。トランプ氏は「相互」関税だとしている。
欧州連合(EU)や中国など、政府が「最悪の違反者」だとする国々からの製品には、より高い税率を適用する。
中国製品に対しては現在の20%に加え34%の関税を上乗せし、EUには20%、日本には24%の関税を課す。台湾には32%、インドには26%の関税をかける。
一方、イギリスには基本関税の10%だけを課す。
トランプ氏はこの日、ホワイトハウスの庭園のローズガーデンで、国旗を背に計画を発表。各国が高率の関税や他の貿易障壁で不公正な貿易政策を取り、アメリカを食い物にしてきたとし、それに仕返しするとして、今回の措置の必要性を主張した。
また、「これは経済的な独立の宣言だ」と表明。「今日、私たちはアメリカの労働者のために立ち上がり、ようやくアメリカを第一に考えるようになる」、「アメリカの歴史において最も重要な日の一つだろう」と述べた。
米政府によると、一律の10%の関税は5日に、特定の国に対する上乗せ関税は9日に、それぞれ発動する。
小国に高税率、豪州などは基本関税だけ
トランプ政権はすでに、中国からの輸入品や外国車、鉄鋼、アルミニウムに対する関税の引き上げを指示している。また、メキシコとカナダからの一部製品には25%の関税をかけている。
今回の関税措置では、最も関係の深い貿易相手国のメキシコとカナダに関しては、何も変わることはないと米政府は説明している。
税率が最も高いのは小国で、アフリカ南部のレソトが50%、ヴェトナムが46%、カンボジアが49%となっている。
ヴェトナムとカンボジアは、トランプ政権1期目以降、企業の投資が急増している。各社がサプライチェーンを中国から移したためだ。
他方、基本課税の10%だけが適用されるのは、イギリスのほか、シンガポール、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランド、トルコ、コロンビア、アルゼンチン、エルサルバドル、アラブ首長国連邦、サウジアラビア――などの国々。
世界経済への影響を懸念
アナリストらは、トランプ氏による貿易戦争の激化によって、アメリカで物価上昇と経済成長の鈍化が起こる可能性が高いと予測。一部の国については、景気後退に陥る可能性があるとしている。
国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストのケン・ロゴフ氏は、「彼はたった今、国際貿易システムに核爆弾を落とした」とBBCに話した。
格付け会社フィッチ・レーティングスの米国経済調査部門トップのオルー・ソノラ氏は、今回の措置によってアメリカの関税率は1910年当時の水準になると予測。「これはアメリカ経済だけでなく、世界経済の状況までも一変させるものだ」、「多くの国が不況に陥るだろう」と述べた。
米コーネル大学のグスタヴォ・フローレス=マシアス教授(政府・公共政策)は、「物価上昇がすぐに現実のものとなる可能性が高い」と指摘。トランプ氏のこの日の発表は、第2次世界大戦後にアメリカが創設に貢献した国際貿易システムが「崩壊しつつある」ことを意味すると述べた。
トランプ氏は2日、中国からの小包に対する免税措置を5月で終了する命令にも署名した。米アマゾンのライバル企業となっている中国の「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」にとっては、痛手になるとみられる。
また、先週発表した外国製自動車の輸入に対する25%の課税を3日に発動させるとした。
トランプ氏が「解放の日」と呼んだこの日の発表を受け、アメリカの株式市場では通常取引終了後の取引で株価が急落した。中国と台湾への依存度が高いアップルは7%以上下落。アマゾンも6%以上、ウォルマートは4%以上下がった。ナイキも6%以上下落した。
(英語記事 Trump to charge tariffs of up to 50% on 'worst offenders' globally/Trump's tariffs on China, EU and more, at a glance)