
米電気自動車(EV)メーカーのテスラが3日、2025年1~3月期の納車台数と生産台数を発表した。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の政治活動への反発が相次ぐなか、納車台数は過去3年で最低水準に落ち込んだ。
当期の納車台数は33万6681台と、前年同月比で13%落ち込んだ。発表を受け、テスラの株価は2日の早い時間の取引で急落した。
テスラは中国比亜迪(BYD)との競争が激化している。だが専門家らは、マスク氏のトランプ米政権での物議を醸す役割も、販売に影響していると考えている。
テスラは販売減少の原因を、最も人気のある「Y」モデルが新型に移行したからだと説明している。
しかし、一部のアナリストはマスク氏自身に責任があると指摘している。
テスラに投資しているガーバー・カワサキ・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメントのロス・ガーバー氏は、「この数字はひどい」と、Xに投稿した。
かつてマスク氏を支持していたガーバー氏は、「このブランドは壊れており、修復不可能かもしれない」と述べた。同氏は最近、テスラの取締役会に対し、マスク氏のCEO解任を求めている。
株価に大きな影響、年金基金から懸念の声も
テスラの株価は一時、6%超下落した。2日午後1時51分(米東部時間)の時点では、年初比で25%以上、落ち込んでいた。
ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイヴス氏は2日の短信で、「この数字を楽観的に見ることはできない。(中略)すべての指標で惨事になっている」と報告。
「マスク氏がDOGE(政府効率化局)で政治的になるほど、テスラは苦しむ。これは議論の余地がない」とした。
テスラは、BBCのコメント要請に応じなかった。米証券取引委員会への提出書類では、2日に発表された数字は「会社の業績の指標として信頼すべきではない」と主張している。
1~3月期の結果は、22日に発表される正式な四半期決算報告書で明らかになる予定だ。テスラは、決算は「平均販売価格、売上原価、為替変動など、さまざまな要因に依存する」とした。
また、1月に「Y」のSUV(スポーツ多目的車)生産を一時停止したことも明らかにした。
2日の発表後、アメリカ最大の労働組合の一つであるアメリカ教員組合連盟(AFT)のランディ・ワインガーテン会長は、テスラの現状について、数十件の公的年金基金に書簡を送り、テスラの最新の販売台数が「非常に悪い状況にある」と指摘した。
書簡の中でワインガーテン会長は各基金に対し、保有するテスラ株と、資産運用マネージャーが「退職資産を守るために何をしているのか」を、注意深く見直すよう促した。
「株価の下落は、マスク氏が政治活動に時間を費やしていることに一因があり、その一部はテスラのブランドや事業利益と矛盾しているように見える」と、ワインガーテン会長は書いている。
ニューヨーク市の会計監査官はすでに、同市の巨大な年金制度を代表してテスラを訴える意向を示している。1日には、同社の株価急落によって過去3カ月で3億ドル以上の損失を被ったと述べた。
「イーロン・マスク氏はあまりにも気を散らされており、テスラを財政的な崖から転落させている」とブラッド・ランダー会計監査官は声明で述べた。
テスラへの抗議活動相次ぐ
マスク氏の率直で物議を醸す政治的関与を受け、世界中で抗議やボイコットが相次いでいる。
マスク氏は、ドナルド・トランプ大統領の「政府効率化局(DOGE)」イニシアチブを率い、連邦支出と政府職員の削減に取り組んでいる。
米ポリティコは2日、トランプ大統領が側近に対し、マスク氏が数週間以内に政権から退く予定だと伝えたと報じた。
この報道の直後、テスラの株価は上昇に転じた。
米ホワイトハウスは、この報道を「ごみ」だとして否定した。マスク氏は特別政府職員と見なされているため、法律により今年は130日しか政権に仕えることができず、退任は6月ごろになる見込みだ。
マスク氏は世界一の富豪であり、昨年11月の米大統領選ではトランプ氏の陣営に2億5千万ドル以上を寄付した。
最近では、ウィスコンシン州最高裁判所の選挙に数百万ドルを投入し、元共和党司法長官のブラッド・シミル氏を支援したが、同氏は2日に大敗を喫した。
マスク氏に対する反発には、米欧各地のテスラ販売店での「テスラ・テイクダウン(テスラを倒せ)」運動も含まれている。
テスラ車も破壊されており、トランプ大統領はテスラを損傷させた者を「国内テロ」として訴追すると述べている。
一方で、テスラなどの企業におけるマスク氏の運営ぶりが疑問視されている。
マスク氏は最近のインタビューで、「非常に困難な状況」で事業を運営していることを認め、「正直なところ、ここでこれをしていることが信じられない」と述べた。