
アメリカのドナルド・トランプ大統領が2日、世界中からの輸入品に新たな関税を課すと発表したことを受け、各国からトランプ氏への批判が相次いだ。
欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は3日朝、トランプ氏の決定は「世界経済にとって大打撃」だと述べた。
フォン・デア・ライエン氏は声明で、新たな関税は「不確実性のスパイラル」を引き起こし、「世界中の何百万という人々に」「悲惨な」結果をもたらすことになると主張。
最も影響を受けやすい国々が高い税率をかけられていると強調した。今回の措置で税率が最も高いのは小国で、アフリカ南部のレソトが50%、ヴェトナムが46%、カンボジアが49%となっている。
フォン・デア・ライエン氏は、欧州は統一的なアプローチを取るつもりだとし、交渉が失敗した場合のために対抗措置を準備していると警告。
「欧州の誰かへの挑戦は、我々全員への挑戦だ」とした。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は2日、EUからの製品に対する20%の関税は「間違っている」と述べた。
トランプ米大統領が発表した相互関税には、5日から、アメリカへのすべての輸入品に少なくとも10%の基本関税をかけることが含まれる。EUや中国など約60カ国には、9日から税率を上乗せする。
トランプ氏は、この措置は「アメリカを再び豊かにする」ものだとし、自分は「非常に寛容に」決定を下したと付け加えた。
トランプ氏と親しいメローニ氏は、EUに対するアメリカの関税措置はいずれのためにもならないとしつつ、「貿易戦争を回避」するためにアメリカとの取引に向けて取り組んでいくとした。
スペインのペドロ・サンチェス首相は、スペインは自国の企業と労働者を保護し、「開かれた世界にコミットし続ける」と述べた。
アイルランドのミホル・マーティン首相も、トランプ氏の決定は「非常に遺憾」で「誰一人」得をしないものだとした。
フランス大統領府によると、エマニュエル・マクロン仏大統領は3日にエリゼ宮(大統領官邸)で、新たな関税の影響を受けるビジネス部門の代表者たちと面会する予定という。
日本や中国などにも高い税率
EUのほか、トランプ氏が「最悪の違反者」だとする国々にも、高い税率が適用される。例えば中国製品は、現在の20%に加え34%の関税が上乗せされて54%となり、最も大きな打撃を受ける。
中国商務部はアメリカに対し、相互関税を「直ちに取り消す」よう求め、「自国の権利と利益を守るために、断固として対抗措置を取る」と付け加えた。
中国国営の新華社通信は、米政府の「暴挙」は「自らを破滅させるようないじめ」であり、「単純化しすぎた報復合戦」だと論評した。
相互関税の発表に先立ち、アメリカからの輸入品に対する関税をすべて撤廃したイスラエルの経済当局は、17%の関税が課されることに「完全にショックを受けている」と述べたと、地元メディアは伝えている。
「アメリカからの輸入品に対する関税を完全撤廃するという決定があれば、こうした動き(相互関税)を回避できると確信していたのに」と、当局者は地元メディアに語った。
32%の関税を課される台湾は、「非常に不合理」だと非難。
卓栄泰・行政院院長(首相に相当)は、アメリカに対して「真剣に立場を表明」するつもりだとしている。
韓国では、大統領の職務を代行する韓悳洙(ハン・ドクス)首相が、世界的な貿易戦争が「現実のものとなった」と指摘。韓国政府は25%の関税が課されることを受け、「貿易危機を乗り越える」方法を検討する方針だとした。
日本には24%の関税が課される。林芳正官房長官は3日午前、「極めて遺憾」だと述べ、「WTO(世界貿易機関)協定および日米貿易協定との整合性に深刻な懸念を有している」とした。
タイは、36%の関税について交渉するつもりだとしている。
今回の措置の影響を最も受ける国々には、ヴェトナムやカンボジアなどほかのアジア諸国が含まれる。
ホワイトハウスは新たな関税を、米国製品に高率の関税や非関税障壁を設けたり、米経済目標を損なうと米政府がみなす行動をとったりしている中国などの国々に対する、相互関税だとしている。
10%の基本税率への反応
10%の基本関税だけが課される国々の首脳も反発している。
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、豪製品に10%の関税を課すのは「不当」だと主張。この「不当な関税」の最大の代償をアメリカが払うことになるだろうと述べた。
アルバニージー氏はまた、豪政府は相互的措置は取らないとし、「我々は物価上昇と成長鈍化につながる底辺への競争に加わるつもりはない」と付け加えた。
イギリスの首相官邸関係筋はBBCに対し、イギリスへの、他国よりも低い税率は、アメリカとの貿易協定に向けた英政府の最近の努力の「正当性を示すもの」だと語った。
キア・スターマー英首相は3日朝、世界が「新時代」に突入する中、関税による打撃を和らげるためのアメリカとの貿易協定を確保するため、「戦う」つもりだと繰り返した。
また、ビジネス界のリーダーらに対し、関税措置による「経済的影響」は「国内外に及ぶ」だろうと伝えつつ、政府は「冷静沈着」に対応していくと付け加えた。
ラテンアメリカ最大の経済大国ブラジルは2日、トランプ氏による10%の関税に対抗するため、経済的相互利益に関する法案を議会で可決した。
ブラジル外務省は、「世界貿易機関(WTO)に訴えることも含め、二国間貿易の相互主義を確保するための、あらゆる可能な行動」を評価していくとした。
アメリカは「報復しないよう」警告
トランプ氏の発表から間もなく、スコット・ベッセント米財務長官は各国に対し、「報復」をせず、「腰を据えて、受け止める」よう警告した。
「報復すれば、事態はエスカレートする」と、ベッセント氏は米FOXニュースに語った。
注目すべきなのは、今回の発表で、アメリカの2大貿易相手国のカナダとメキシコへの言及がなかったことだ。
トランプ政権はすでに、合成オピオイド(麻薬性鎮痛剤)の一種、フェンタニルのアメリカ流入や、国境をめぐる問題への取り組みの一環として、メキシコとカナダからの一部製品には25%の関税をかけている。ホワイトハウスは、すでに発令されたこの大統領令に従って対処するとしている。
それでも、カナダが関税の影響を受けることに変わりはないと、カーニー首相は指摘。3日午前0時に発動となった、外国製自動車の輸入に対する25%の課税などの措置は、「何百万人ものカナダ人に直接的な影響を及ぼす」だろうとした。
そして、「対抗措置を取って、これらの関税と闘う」と誓い、アメリカによる課税は「国際貿易システムを根本的に変える」だろうと付け加えた。
(英語記事 World leaders criticise Trump tariffs as 'major blow')