
アメリカのドナルド・トランプ大統領は7日、イランの核開発をめぐり、12日にイランとの「直接協議」を行うと明らかにした。一方でイランのアッバス・アラグチ外相は、アメリカと協議することを認めつつ、協議は「間接的」なものになると述べた。アメリカとイランの間では3月にも、トランプ氏がイランに交渉を求める書簡を送り、イランがこれを拒否し、トランプ氏が軍事行動をほのめかすというやり取りがあった。
トランプ氏は7日、イラン政府との協議は「とてもハイレベル」なものになるとし、合意に至らなければ「イランにとってとても悪い日」になるだろうと警告した。ホワイトハウスでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談後に、イランの核開発をめぐり協議することを明らかにした。
ホワイトハウスの大統領執務室でトランプ氏は、「12日に(イランとの)とても大きな協議がある。彼らと直接やり取りする。(中略)そしてもしかしたら、取引がまとまるかもしれない。そうなれば素晴らしいのだが」と述べた。
トランプ氏はその後、協議がうまくいかなければイランは「大きな危険に」直面するだろうとし、「イランは核兵器を持つことはできないし、もし協議が成功しなければ、イランにとってとても悪い日になると思う」と付け加えた。
協議について、どの程度進展しているのか、具体的に誰が協議に関与しているのかなど、詳細は明らかにしなかった。
イランのアラグチ外相は、アメリカとイランの代表者が12日にオマーンで、「間接的なハイレベル協議」を行うと、ソーシャルメディアに投稿「これはテストであると同時に好機にもなり得る。ボールはアメリカ側のコートにある」と書いた。
3月には書簡
トランプ氏は先月、アラブ首長国連邦の仲介者を通じてイランに書簡を送り、核開発をめぐる協議を開始する意思を示した。これについてイラン最高指導者アリ・ハメネイ師が、トランプ氏からの直接協議の申し出を公に拒否すると、トランプ氏は軍事行動に出る可能性をほのめかしていた。
他方でイラン指導部は当時、第三者を介してアメリカと取引する可能性について話し合う意欲があることをうかがわせていた。
イランの核兵器製造能力を抑制することは、アメリカとその同盟国にとって、数十年にわたる重要な外交政策目標となっている。
アメリカは、バラク・オバマ政権時代の2015年に、イランに対する経済制裁の解除の見返りに核開発を制限することで、イラン、中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリスと合意。核施設が兵器製造ではなく、民間利用の目的にのみ使用されていることを確認するため、国際原子力機関(IAEA)の核施設視察を認めることが盛り込まれた。
しかし、トランプ氏は1期目の2018年、核合意からの一方的な離脱を発表した。トランプ氏は2016年の大統領選で核合意を強く批判していた。
以来、イランは合意に反する活動を繰り返している。IAEAは、イランが核合意で定められた上限を超える大量の低濃縮ウランを貯蔵していると警告している。濃縮ウランは原子炉燃料だけでなく核兵器にも使われる。
トランプ氏はこの数カ月、イランとの新たな合意に向けた交渉の可能性を繰り返し示しつつ、合意に至らなければ軍事行動に出るかもしれないと警告してきた。
イスラエルはイランの核保有阻止を重視
イランと敵対するイスラエルは、イランの核兵器保有を阻止することが、長期的な安全保障の要だと考えている。イスラエルはここ数カ月、イランの核製造施設への攻撃を検討していると報じられている。
昨年には、イランがイスラエルにミサイル攻撃を仕掛けたことへの報復として、イランの核施設を攻撃したとイスラエルが発表した。
ネタニヤフ首相は7日、ホワイトハウスで、「我々とアメリカは、イランが決して核兵器を手にすることがないようにするという目標で一致している」と述べた。
「もしそれが、リビアで行われたような、完全な形で外交的に行われるのであれば、良いことだと思う」
リビアでは2003年、当時の指導者、ムアンマル・カダフィ大佐が大量破壊兵器計画の放棄と国際機関の査察受け入れに同意した。これを受けてアメリカは数カ月のうちに対リビア制裁のほぼ全てを解除。他の国々も外交関係を復活させ、リビアは孤立状態を脱した。
しかし2011年には、欧米が支援する反政府勢力によってリビア政権は崩壊。カダフィ大佐は反政府勢力に拘束され、殺害された。